ひまひまーな日常。
ほんの少し変化した日常ー。
よーっす、アンナちゃんだよー。騎士団長との稽古から色んな人に稽古つけてって頼まれるアンナちゃんだよー。面倒くさい。
「グリムディア侯爵様、最近大変ですわね……。」
「そうだね……。騎士団長め……。」
ほんと面倒くさい。
「正直何故それほどまでの強さを誇るのか教えて欲しいくらいだ。」
げ、クソ王子……。こいつもあれからたまに話しかけてくる。なんだよお前地雷の所行ってろよ。
「何故と言われてもな。」
「私も気になりますわ。」
うーん。
「……経験、かな?」
「経験ですか。」
「……お前、そんなに戦いに行ってたのか?」
「んな訳ないだろう。年考えろ年。」
まだピッチピチ(死語)の15じゃ。ほっほっほ。
「……それはそうと、お前あの娘の所行かなくていーのかよ。」
「ああ……。」
なんかあったか。
「風邪らしい。」
「へー。」
「へぇー。」
「……なんだその全く興味の欠片もありませんって相槌は。」
「興味ねー。」
動向はチェックしてるけどな。……風邪ってことは、ふーむ。
「付き纏ってるぐらい気になる女なんだろ、見舞いくらい行ったらどうだ。」
「無論、そのつもりだ。」
そーかい。
「……あの子を狙う者は多いと聞きますが、勝つ自信はお有りなので?」
「ああ……。今私を含めて四人。話し合って同じ頻度になるようにして、そこから射止めた者が勝ち、という様な形にしている。自信ならあるさ。」
「うわぁ。」
うわぁ。逆ハー狙いかよ。尻軽め。
「お前な、そんな顔しなくてもいいだろう……。」
「うーむ。」
しかし光神の巫女としてはパーティ組むのにいい、か?
「それはそうと、だが。あの娘を射止めるとしてだ。」
問題のあれ。
「紙面上、形式上、親が決めた、全く興味もないお前との婚約は解消してくれるんだろうな。」
「…………そう、だな。」
ああん?
「つーかしろ。決まったら大々的にやってくれ。私はお前を愛する事など出来んしする気もないしつーか正直生理的に無理。私の居ない所で相手見つけろ。」
「お、お前、な。」
「なんだったら婚約破棄する理由でもつくってやろうか?」
「いや、いい……。」
チッ。
「そろそろ席に戻る。……婚約破棄について、考えておく。」
そうしてくれ。
「あー、なんか初めて長い事喋った気がする。うがいしないとー。」
「……そこまでお嫌いですのね。」
「うん、無理。」
席でクソ王子が項垂れてらぁ。聞こえてたか。フン。
「グリムディア侯爵様、私に稽古を」
「そこの武人君に勝てたらしてやる。」
「また俺っ!」
後はスルー。
「もはや慣れたものですわね。」
「慣れたくないな……。」
授業ー。
「侯爵様、お昼を共に……。」
「私達も。」
「今日も賑やかそうだ。いいよ。」
お昼は常にお嬢さん方に囲まれて。……これも慣れてきた。
「今日も御飯が美味しいねぇ。」
「ええ。」
「目の保養も出来て、最高だ。」
「あらあら、お上手で。」
おねーさんキャラですか。でも顔赤いよ。私の美貌のせいだね!
「ぐ、グリムディア侯爵様……。」
「な……んだい?」
エンカウント。え、マジか、おま。
「あ、あの……午後の実技で、私に戦い方を教えて頂けませんか……。」
尻 軽 ク ソ ビ ッ チ 地 雷 女 !が 話しかけて きた!こいつ風邪じゃなかったか?
アンナちゃんはどうする?
殺す
殺害する
教えると見せかけて殺す
>あしらう
選択肢が殺す以外ねえ!あしらう方向で。
「……君には教える者が沢山いるだろうに。」
軽く皮肉でディスる。
「そ、それが。」
「と、いうより風邪だと聞いたが。」
顔色も悪い。
「体調も宜しくなさそうだ。まずは休んでその風邪に勝つところから始めよう、ね?」
暗になんでテメーここにいやがんだ発言。
「……巫女、になったんです。」
おや。
「午前中は神殿に行っていたのです……。そこで、光神の巫女、だと。」
「それで。」
「で、ですので巫女である侯爵様に、教えて貰おうかと……。」
ふーん。
「……そうかい。とはいえ、神が違いすぎるからね、教えられる事など……。」
「そこを、なんとか。」
光神、たしか祈ればいいんだっけ。祝詞もあったはず。祈りを現象に変える。だったか。
「……まずは神の事を調べなさい。何が良くて、何が駄目なのか。禁忌は。祝福は。力は。名前は。そこからだ。」
光神はたしか性交でも力が増す神だったな、そういや。バッチリじゃねーの。
「あ、ありがとうございます……。」
「最も、今日は休みなさい。顔色が悪過ぎる。」
「はい……失礼します……。」
去っていった。……終始ビクビクしてたな。私に対して。なんだ?
「……様子がおかしいですわね。」
「そうだね。」
それよりも。
「……お茶。会話したお陰で喉が腐る。」
「ほ、本当にお嫌いですのね……。」
「誰が好くか。」
「そ、そうですか……。」
さて、そろそろ時間か。
お昼終わり。……侍女ちゃんのお茶飲めてねえ!
午後の実技のお時間です。
「グリムディア侯爵様、私に稽古を!」
「私も!」
「俺の相手が……。」
うぜーーーー。こんなんでモテたくねぇーーーしかも野郎が多い。暑苦しいーーーーーーーーー。
「……面倒くさい、まとめて来い。」
という訳で最近こんな感じ。ごめんね武人君!でも一対多の練習になるからいいよね!
とはいえ、基本的に協力なんてない状態で突っ込んできてもねえ。特に貴族の野郎共。好き勝手動いたら、ほら。
「っあぶねえだろ!」
「お前がこっちに来るからだ!」
「なんだと!」
言わんこっちゃない。
「ハァ……。馬鹿共め。」
貴様らは勝手に遊んでろ、私抜きでな。
その点、お嬢さん方はいいね、なんだかんだで協力しあってる。あと武人君も。……これによって武人君が少しずつモテ始めてる。いやあ青春だねー。
はあ、私は当て馬ですかね。あ、そういや悪役令嬢だし当て馬か。ハハ。
「つまらん。」
とりあえずさ。
「稽古をするんじゃなかったのかねぇ。時間潰しにはなるけど、全く私の得にならないね。」
あー、もういいか。教えたいのは武人君だけなんだが、邪魔が多い事。もういい。
「ハァーーーーー…………。」
剣を収める。終わりだ終わり。適当にやってろ。
木陰に行って、座る。
「いい加減にしてくれって感じ。」
「お、お疲れ様です……。」
うぉわ。
地雷女とまたエンカウント。
「見学していたのです……木の反対側で。」
チッ。……手には本。光神についての神話か。ふぅん。
「……勉強の邪魔したね。」
「い、いえ、そんな事は……。」
……やはり私に怯えている。なんだ。
「……静かにしているから続けてくれ。」
まあいい。軽く寝る。
すやぁ。
寝てた。って、なんで膝枕?????おい地雷女。なにしてる。つーか胸以外とあるのな。
「お、おはようございます。もうすぐ実技が終わりますよ。」
「そうか。……この体勢はなんだ。」
「あ、いえ、その、すみません……。」
まーいーけどさーーーー。
「寝顔が素敵でしたので、その……つい……。」
「そうかい。」
……まて、膝枕だと?木陰で、実技中に?
…………チャラ男とのイベント……もうイベントでいいや。であったぞ。
そのイベントがこっちに向いている?早々にチャラ男が死んだからか?なら悪役は?
初めての事だ。つーことはふむ。ふーむ?
私が、えーっと、取り巻きに入れと?落とされる?
却下。
逃げるか。……そこで終了の鐘。
「さて、では失礼する。」
「は、はい。」
寮行こ。
とうとう台詞の出てきた地雷女。




