学園たんさくちゅー。
アンナちゃん、学園一日目の後半!
やっほー、アンナちゃんよ!
私は今⋯⋯学園をぶらついてます!
ええ、暇なのです。学園に来たからと言って、何をする訳でもないのですわ。
ましてや召喚されてまだ一日目!どうしようもないね!
召喚といえば。なんだか私、万全の状態じゃないみたいなのよねー。
やっぱり使い魔として召喚されたからかしら、主がいないと制限されるのかも。
ま、いいけど。ここに私の眼に適う奴がいるとは思えないしー。
今はぶらぶらとしてましょ。
さて、どうしようかな。
基本的に門はお昼過ぎからしか開かないし⋯⋯模様替えは済んだし⋯⋯暇。
という訳で、ふわふわ学園をぶらついているのですわー。
⋯⋯隠密を使いながら。
どうも、召喚騒ぎが凄い勢いで広まったみたいでー。
私の人相描きすら出てるみたい。⋯⋯横から覗いた。めちゃくちゃ似てた。
なので、講義の邪魔しない様に隠密つけてる訳ですわ。
流石に集られて騒がれると面倒ですから。
とはいえ、ぶらついているだけだと暇でしかないので。
何かしようかしらー。
どーしようかしらー。
んー。
講義、適当な所覗いてみようかな。
適当な部屋に⋯⋯お、やってるやってる。
ここは⋯⋯えーと?
内容確認⋯⋯なるほど、近接戦闘での強化魔術やってるのね。バフー。
あー、身体強化が難しい云々からの別方向から強化するみたいなー。
身体強化って間違えると身体爆発するからねぇ、代わりを探すのは必然ですのよ。
色々な案を話し合ってー、みたいな。ふーん。
まあ、頑張ってねー。
次の部屋行こう。⋯⋯炎で身体を熱くして強化とか面白そうだけど燃えるわね、あれ。死ぬなよー。
次の部屋はーっと。
へぇ、魔術師の近接戦闘術ね。魔力が切れたら約立たずは勘弁、ってね。
ふむふむ。魔石の魔力を使って低出力の武器を作るかぁ。
アリかもね。どんな奴でも心臓貫かれたら死ぬし。例外は⋯⋯あ、結構いたわ。
ここはなかなかに煮詰まってるわねぇ。なにその手に魔石握って炎のパンチって。前の部屋と内容変わんないから。燃えるから。
⋯⋯軽く参加してみようかしらー。
隠密を少し弱めて⋯⋯一番後ろの空いてる席に。にこにこしながら足をぶらぶら。
⋯⋯足届かないわ。くそぅ。
ぼーっと案を聞いてみる。んー。
変な案しか出てこねぇわ。教師が一度頭をリセットしろとか言う始末。
⋯⋯そういや、私が力の無かった頃はどうしてたかしら⋯⋯。
一番最初、ウィグロスに拾われた時⋯⋯。
「⋯⋯力無き者よ。貴様が強敵と相対したその時、貴様は死を待つだけだろう。その刃は皮膚すら切り裂けん。その術は毛すら焼けん。⋯⋯されど、術を知れば留める事は出来る。⋯⋯だったかしら。」
もはや朧気な記憶。
「⋯⋯貴女は。」
お、教師が気付いた。
「どうも、勝手に見させて貰ってますわぁ。」
どもー。⋯⋯生徒が騒ぐけど無視。
「静粛に!⋯⋯シレーティナ女史、であったかな。」
「ええ。」
「シレーティナ女史。⋯⋯先程の言葉、なのだが。もう一度聞かせて貰えないだろうか。」
「⋯⋯長いから要約してもいいかしら。」
「頼みます。」
「えーと。お前弱いから強いのと会っても皮膚すら切れないし毛すら焼けないけどなんとか止める事は出来るんじゃない?みたいな。」
「うぐぐ⋯⋯要約し過ぎだ⋯⋯。」
「でもそうじゃない?弱いのに強いのと会ってまともに戦うのとか死ぬだけよ。それなら生き残る為に止めて逃げる方が正しいもの。」
逃げるが勝ち、だよ。
「どんなに弱い魔術だろうと、上手く使えば生き残る術になる。そういう事を言ってるのよねー。」
「そういう事が聞きたかった。⋯⋯一応聞くが、例えばどのように使う?一例を彼等に示してやってくれ。」
「わかったわ。⋯⋯そう、ねぇ。小さな魔石投げて、指向性とか無しにただ爆発させる。⋯⋯なんてのはどうかしら。一緒に煙とか光とか出せたらいいわねぇ。」
「それでは威力が出ないのでは⋯⋯?」
「びっくりした隙に逃げればいいのよ。生きて帰れば次があるってね。」
死ぬな、逃げろ隠れろ、運が良ければぶっ殺せ、なんてね。
と、ここで鐘が。あーらら。
「邪魔したわねー、それじゃ。」
後は頑張ってねー。
「⋯⋯講義を終了する。次回までに案を考えておく様に。⋯⋯嵐の様だったな。」
ごぉー。
隠密!
廊下!
おぉ、沢山学生が居るわねぇ。
えーと、これは皆帰り支度してるのかしら⋯⋯。
まあ、そうなるよねぇ、って。今夕方だし。流石に講義もほぼ終わるか。
何人かはまだ講義あるみたいだけれど。頑張ってねー。
それにしても、沢山居るわねぇ。貴族の子、平民の子、商人の子かしら、あれは。
色々な家の子が沢山。これはなかなか、将来への顔つなぎに役立ちそうな所ね。
学生が歩く中を、ふわふわと。んー、私を認識できる子は今の所無し。いても困るけど。
学生程度に私の隠密が見抜かれちゃあ敵わないわ。
⋯⋯おや、賑やかな集団を発見。何かしらあれ。
「いい加減この子に関わるのをやめるんだクラウディア!」
「いいえやめません。その子には、しかと自覚を持って頂かないと。」
「自覚だと!」
「その子が、何を欲しているのか。何を奪うのか。その先にあるものが何なのか。国の為、それを自覚せねばいけないのです。」
「国の為⋯⋯?それはこの子には」
「関係が無い、と仰るおつもりですか、殿下。それは殿下が最も言ってはならない言葉にございます。⋯⋯殿下、殿下には自覚がお有りなのでしょうか。」
「貴様、この子憎さに私すら愚弄するか!」
⋯⋯⋯⋯これは、これは。
平民の女を庇う、殿下と呼ばれた男。相対するのは取り巻きを背負う貴族の令嬢。⋯⋯あの令嬢、いい目をしている。
近くの生徒に聞いてみようかな。
「ねえ、あれはなに?」
「いつもの殿下と婚約者様の争いだよ。酷いねえ、婚約者様は国の事を考えたお話をしているというのに。殿下はこれっぽっちも聞きやしない。しかもあの平民、身分違いの恋に恋してるし。恋は盲目とはよく言ったものだよ。アンタもそう思わないか⋯⋯あれ?居ない?」
なるほど、なるほど。
よく、わかったよ。
ちょいと、イラつくよね⋯⋯!
軽くお仕置きでも⋯⋯。
「ク、クラウディア様!お離れを!」
ん?
「キラクテ?どうされたの⋯⋯?まさか、また何か視たの?」
⋯⋯視た、と。キラクテとか言った⋯⋯貴族の娘か。眼鏡っ子。
「殿下も、早くお離れを!近くに、近くに!血が!死が!廻が!」
「キラクテ!ここに死、ですって?ここは学園よ!?」
⋯⋯へぇ。巫女の類かな?
「ああ、あぁ!私を、私を見ている!狂が!嗤が!化物が、化物が見ている!すぐ、すぐそこに!」
⋯⋯完全に私の方向見てるし。指差したし。私の隠密でも視えるのかー。んー。
神のイメージは感じないしなぁ。魔眼、ってやつかしら。ほら、あれよ。なんか特殊な能力みたいな。
「落ち着きなさい!何が、視えるの。」
「そこに!そこに死が!血が!廻が!狂が!嗤が!文字が完全な人の形をして、死の化物が!」
文字。へぇ、それはなかなか面白い。
ニタリ、と。
少しだけ、動いてみよう。円を描く様に、横にふわふわと、ゆっくり移動。
うわ、指が思いっきり私を指してる。すげー。
⋯⋯⋯⋯それで、どうしようか。
なんか皆軽く戦闘態勢みたいになってるし。
流れぶった切ったおかげで、喧嘩はうやむやだし。
うーん。
よし。
楽しもうじゃあないか。このくらい楽しませてもらっても、構わないよねぇ。
「⋯⋯クヒヒヒヒッ。化物とは、言ってくれるねェ⋯⋯。」
「何も無い所から声!?」
説明ご苦労。
「化物と呼ばれちゃったしぃ、化物役でもしましょうかね!」
幻影!
黒く!赤く!
化物ときたら⋯⋯。
ヤッパリ、コレダヨネ!
闇の爪!いつも通り全指!
隠密解除ー!
「ぎyAハHAハhaハハは!!!!!」
じゃーんぷ突撃ー!
「なっ、何よあれは!?」
「あぁ、ああ!死!闇!魔!喰!獣!死!死!死!」
するっと婚約者様の横を抜けてー。
「なっ⋯⋯!?」
魔眼ちゃんの目の前ェ。
「化、物⋯⋯。」
振りかぶってー。
振り下ろす感じでー。
「や、やめなさいっ!」
なんちゃって、あっはははは!爪解除!
「⋯⋯笑?」
「初めましてぇ、魔眼ちゃん!貴女なかなか面白いモノを持っているね!」
幻影解除ー。
ちーっす。
「初めまして、ヴィリアちゃんよー!アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
頬を掴んで、むにむにむにむにむにむに。おお柔らかい。
「むぐぇ⋯⋯???」
「今朝の⋯⋯召喚の!」
「どうも、お邪魔してますわぁ。えーと、愛国者のお嬢様?見てたら呼ばれちゃったし?呼ばれてとび出てヴィリアちゃん、みたいな?」
「クラウディア、よ。キラクテから、離れなさい!」
「やーだ、その言葉には従えないわぁ。だって、気に入ってしまったもの。柔らかいし。それとも、貴女がこの子の飼い主?」
むにむに継続中。
「飼い⋯⋯まるで獣かなにかの様に⋯⋯!」
「⋯⋯わん?」
わ、わん?
「き、キラクテ?」
「⋯⋯ああ、うん。飼い主の元にお帰り。」
あー、お嬢様の後ろに隠れて。
「⋯⋯こういう時、どう反応すればいいのかわからないのだけれど。」
「笑えばいいとおもうの。」
「⋯⋯萎?疲?」
「貴女はそれでいいのかしら本当に⋯⋯。」
一気に雰囲気がふんわりうやむやに⋯⋯。なんなの⋯⋯。
「ええと、シレーティナ=ヴィリアです。今朝召喚された、アレです。」
「クラウディア、よ。この子は、魔眼持ちのキラクテ。⋯⋯貴女は、化物⋯⋯なのかしら。」
おおう、度胸あるね。
「狂の化物として召喚されたから、まあ⋯⋯化物なのかもね。最も、私は人間だけれど。」
「何故キラクテを襲ったの。」
「嫌ァなお話してるなぁ、ちょいと、混ざろうかなぁ、からのこの子の魔眼よ。面白いモノを持ってるよねぇ、隠密してたのに視られちゃったよ。それに化物と呼ばれちゃったし、コールには出ないと失礼じゃない?危害を加えるつもりは無かったけれどね。学園長にも危害を加えてくれるな、って言われてるし。ああ久々に長く話した。」
「キラクテは。対象の感情と、存在に纏うものを認識する⋯⋯らしいわ。なら、死だと言ったのは⋯⋯。」
「そりゃあ、アレよ。私が死を沢山与え与えられて来たからじゃないかしらね。」
「⋯⋯キラクテ。」
「正。⋯⋯死がとても大きくて多くて強いけど、害の字は見えない⋯⋯ごめんなさい⋯⋯。」
なるほど、強烈だったと。
「⋯⋯そう。なら、いいのだけれど。」
まあそんなに緊張すんなって。
「ま、いいのよ。それより、喧嘩相手は何処へ行ったのかしら?」
「え?⋯⋯あっ、逃げられたじゃない!」
ドンマイ!
「あなたが乱入さえしなければね⋯⋯!」
「そう言ってもね、あれじゃあ全く聞く耳ないわ、あれじゃあ。⋯⋯どうせ、あの男が居ない所で言ったら苛められただの、いる所で言ったら喚かれるだので、話が進まないのでしょうけど。」
「あなた、まるで見ていたかのように⋯⋯。」
記憶、覗かせてもらったわ!案の定だったよ!
「私もやった事あるもの、こういう流れ。」
「やった事が、ある?」
「王族と侯爵令嬢の婚約者、平民の娘。王族は平民を選び、令嬢は国の為忠言し続ける。けれどその結末は⋯⋯。」
「結末、は。」
「私が、化物と呼ばれる一番最初のカタチ。国外追放された娘は、力を求めてさ迷う亡霊に。クヒヒッ。⋯⋯そうは、なりたくないでしょう?ウフ、あははははっ!」
顔を青ざめさせて、私を見ているクラウディア嬢。私の姿に未来の自分でも見ているのかしら。
⋯⋯うん、いい目をしている。魂の炎は、依然強く燃え盛っている。
⋯⋯いいねぇ。
「ふふっ⋯⋯ねえ、クラウディア。貴女、力は欲しくないかしら?」
「力⋯⋯?」
「有象無象をなぎ倒し、己が望む結末へと導く力が。その為の魔を、剣を、術を。」
「⋯⋯クラウディア様。この問は、危険です。」
「キラクテちゃん、これは私とこの娘の問答よ。忠言結構、されど答えはこの娘の意志。」
「⋯⋯なにが、いいたいの。シレーティナ。」
「今はヴィリアだけど、まあいいかな⋯⋯くひひっ、未来が、欲しくないかしらぁ?」
「⋯⋯どういう事よ。」
「キラクテちゃん、説明。」
「⋯⋯契約を、持ちかけられているのです。主従、騎士、⋯⋯否、使い魔。」
「使い魔⋯⋯。」
「そうだとも。貴女が望む世界を見せてあげよう⋯⋯クヒヒヒヒヒッ。」
「っ⋯⋯世界は、手に入れる様なものじゃないわ。」
「ほう?」
「世界は自分で創りあげるものよ。未来は、自分で切り開くものよ⋯⋯!」
⋯⋯っは、あっははは!
そういうの、好きよ!
「なら、契約は無し?こんなチャンス、滅多にないからねぇ?」
「⋯⋯遠慮しておくわ。」
ですかー。
「残念ー。くひひひっ。ではでは失礼、またお会い致しましょう。⋯⋯⋯⋯アキラメナイヨ?」
それでは失礼!隠密発動!転移発動!超近距離で!ついでに転送!クリエイト!
「消えた⋯⋯。」
「⋯⋯外に移動したみたい。」
「嵐の様な方ね⋯⋯。」
嵐、かぁ。
私アンナちゃん。今キラクテの目の前にいるの。
私を文字で認識するのなら、それすらも隠してしまえばいいのよね?
そして私を模したモノ⋯⋯偽物なのはうまく隠して。外に出たように見せればこの通り。⋯⋯あ、追跡されてる。撒くようにしとこう。
さてさて、この魔眼⋯⋯。少し、魔術とは違う臭いがするのよね。
ちょっと、解き明かしてみようかな。
魔術発動。探査、精査、微細まで。
まずは綺麗な眼。眼鏡の先、水色の透き通った眼。その奥に潜むもの。
魔術の構築式に似ているけど、なんだろう。こう⋯⋯。
ボヤけてるというか⋯⋯曖昧な状態で確定されてるというか⋯⋯。
不安定で安定してるというか⋯⋯。
けれど強固に確定されているというか⋯⋯。
うーん。
ふわふわしてるけれど硬い感じ⋯⋯。雪というか氷みたいな。冷たくは無いのだけれど。なにかしらね。
あ、ちなみに私も今ふわふわしてます。キラクテの後ろをふわふわとついていってる。背後霊みたいな。
⋯⋯あら、美味しそうな匂い。
ああ、寮の食堂ね。私も食べようかな。
偽物は消して、と。
「私は大盛りでお願いするわ。」
「あいよ!」
「し、し、シレーティナさん!?ここで何を!?」
「い、いつのまに。」
「お腹がすいたらご飯を食べるのよ。後ろに来たのは偶然偶然。」
「き、キラクテ。さっきの追跡魔術は。」
「⋯⋯⋯⋯追跡不可になってる。」
「バレバレ、ばれすぎ。隠密くらいつけなさいな。」
「⋯⋯隠密、つけたのだけれど⋯⋯⋯⋯。」
「下手くそ。」
「⋯⋯⋯⋯闇魔術なんて、なくてもいいのよ。」
「ハッ、負け犬め。魔術を舐めるんじゃないよ。」
「ま、負け犬⋯⋯。」
魔術に関しては一過言あるからね。
⋯⋯そうこうしている間に料理出現。あら美味しそう。
三人で適当な席に座って、と。
「頂きます。」
うん、なかなか美味しい。
「食堂といっても、侮っちゃあいけないわね。美味しいわ。」
「随分、美味しそうに食べるのですね。」
「美味しいものは美味しく食べる。それが人生の秘訣よ!」
幸せになるとは言っていない。
「いまなら聞けるかな⋯⋯一つ聞きたいのですが。」
なにかな。
「貴女は⋯⋯先程の顛末、その先を知っていると。回避するための力は欲しくないか、と。」
「言ったわ。心変わりでもした?契約する?」
「クラウディア様⋯⋯!」
「いいえ、契約はしないわ。けれど、それ以外にも私の力になる方法はある。そうではなくて?」
「んふ、あるね。けれど、それじゃあ私に利点は無いわ?」
もぐもぐ。こーいうのはシレーティナが得意かなー。
「⋯⋯あ、変わった。」
「ふふ、いくら貴女に利があったとしても。私に無ければ成立しないわ。取引ってそういうものでしょう?」
そう、君は今私に取引を持ちかけているのよ。
「利点⋯⋯。」
「ないのかしら?ま、私が満足できる事なんて出せないと思うけれど。」
「あ、あるわ。お父様に掛け合って、この国の住民として」
「興味なし。私は亡霊、彷徨うもの。一所には留まらないのよ。」
思いっきり留まってたりするけれどね!
「うぐ⋯⋯。おか」
「金なんて有り余ってるわ。」
「めい」
「名誉があってもご飯は食べられません。」
「お」
「男なんて言ったらぶち殺します。舐めるなよ。」
いつもの三段反射。全く、どいつもこいつも。
「⋯⋯なら、女の子?」
「阿呆か!」
アホか。
「⋯⋯何か思いつくものはあるかしら。」
「ない⋯⋯。」
「⋯⋯ちなみに聞くけれど。もし取引成立したとして。何を求めるつもりだったのよ。」
「高位の魔術師だと聞きましたので⋯⋯私に魔術の指南を。」
「⋯⋯理知的に見えて案外アホだったのね、貴女。」
ここはどこだったかしらー。あははっ。
「ここは学園ですよー。その事は貴女達の方が知っているのに。」
「⋯⋯ですが、貴女は教師ではないわ。」
「そのくらい許さずに何が学舎よ。ああ、それと私教師の肩書きになりましたので。ヨロシク。授業とか面倒くさいのだけれど。」
「⋯⋯!志願しますわ!」
「私も⋯⋯。」
まだ内容すら決まってないというのに。まあいいけれど。
⋯⋯少人数でちょっと考えてみようかしら、後でオーグ園長に相談してみましょう。学園長ね。
「さて、ごちそうさま。美味しかったわ。」
「食べるの速い⋯⋯。」
「手を動かしなさい、手を。口しか動いてないから貴女達。」
それじゃ、またね。
「おやすみなさい、良い夜を。」
「あ、はい。おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
食器をさげてと。美味しかったわ!
さあ、学園長の所にでも行きましょうか。
⋯⋯どうせまだ居るでしょうし。
さ、転移!学園長の部屋の前!
とーう!
さー、何をしようかな?