決戦の、朝。
決戦は、もうすぐ。
おはようございます。アンナちゃんです。
⋯⋯。
朝から空気が固いです。
今日は決戦の日だからね、仕方がない。
私も準備して、何時でも行ける状態。
待ってる間、暇ね。
⋯⋯そうだ。
ちょっと魔力消費がでかいけど⋯⋯禁術発動。グローバ・ポインティー・サーチャ。
ざっくりどんな状況か見ましょ。
王都周辺⋯⋯は、同胞が。また増えてるわ。
その外側は⋯⋯軍が。へぇ、かなり出て来てるね。
旗を数え⋯⋯わぁ。生き残ってると思しき貴族の、ほとんどか。家のもあるね。
⋯⋯皆、愛国心の高い事で⋯⋯。
進軍速度からすると、休息入れて二時間ちょいで同胞とぶつかる。
まあまあゆっくりした速度ね。⋯⋯まあ、何も対策しなけりゃ死にに行く様なものだしねぇ。
王サマは合図から一時間後に攻撃するって言ってたし⋯⋯まあ、一時間後で。
それまでゆっくりしてましょ。
⋯⋯と思ったら、ノック。誰かしら。
「アンナ様。陛下がお呼びです。」
城の侍女。陛下が呼んでるってさ。
しょうがない、王の執務室へ。
着いた。
「お呼ビDEATHカ、陛下。」
「うむ。⋯⋯奴等は進軍しているのか、気になってな。」
はぁ。
「そんNAコト、普通ここに居てWAカる訳無いデショ。」
「⋯⋯まあ、そうだな。だが、貴様なら知るアテはあるのだろう?」
ええ。
「大体二時間後ニ衝突スル。合図HA一時間後ニ。二時間後ト少SIニ突撃ヲお願いするWA。」
「二時間後だな。⋯⋯騎士団長。」
「こちらに。」
居たのかよ。
「聞いたな。二時間後だ。それまでに準備を済ませておけ。」
「畏まりました。民へも周知しておきます。」
「頼む。」
騎士団長が出て行った。
陛下が、人払いをかける。⋯⋯この部屋には、陛下と私のみ。
「どうSIタの。」
暗い顔。
「既に民へは攻勢をかける事を周知してある。共に来るか、王都で勝利を祝うか、選ぶがよいと。」
へぇ。
「⋯⋯城に仕える者達にはこう伝えてある。脱出するも良し、戦うも良し。各々がしたい事で、この時を迎えよと。」
⋯⋯まるで、最期みたいな事を言うのね。
「⋯⋯非公式の場だからこそ言うが。悪いが、あの魔獣を見るとな。成功するとは思えんのだよ。」
⋯⋯。
「ましてや、我が妻⋯⋯。国の守護神もが、魔獣に成り変わろうとしている。この状況で、勝利できるとは到底⋯⋯。」
⋯⋯。
「サースリィルには、ここに残って貰った。プリメフィーラは、王都の外に逃がした。我が娘は、プリメフィーラの所に。これでどう転ぼうが、王の血は⋯⋯グラスゴーラは保たれる。」
⋯⋯第三王子と、第一王女。地雷女とくっついたアレと、この国で嫁いだ姫。そして娘。⋯⋯娘いたのかよ。
「後は、進退を見守るのみ。⋯⋯私は、もう疲れた。」
「⋯⋯エルヴィアディン。」
「無力な私を笑うがいい、輪廻神の巫女よ。これが、私の運命だったという事だ。」
⋯⋯おい。
「お前は色々な世界を渡り歩くのだろう。⋯⋯次の世界では、私とも話してくれ。お前の様な奴が居たら、楽しいだろうな⋯⋯。」
「言イテェ事ハソレダケカ、ド阿呆ガ。」
その諦めは⋯⋯頗る、癪に障るわね⋯⋯!
「運命だと?そんなものHA捨ててしまエ。オ前ノ人生、ソレデイイノカ。オ前ノ心ハ、ソレデイイノカ!オ前ノ魂ハ、ソレデイイノカ⋯⋯!」
「⋯⋯お前の様に、切り開く力があればそうするだろう。だが、圧倒的な数。圧倒的な力。圧倒的なまでの暴食に対すれば⋯⋯私は無力だ。」
「ダトシテモ!諦メテハ何モ出来ナイノヨ!」
「諦めたくなどないわ!だが、そうするしか⋯⋯ないのだよ!後悔などとうにし尽くした!せめて、ここまでの状況に陥る前に、など考え尽くした!もはや⋯⋯もはや、遅いのだ!」
涙、か。⋯⋯そう、か。
「⋯⋯ワカッタ。ナラ、モウ何MO言わないワ。」
背を向け、扉へと。執務室から出る。
「⋯⋯私の、弟と妹を。そして娘を⋯⋯宜しく頼む。」
閉める直前、聞こえた言葉は⋯⋯王としての、言葉だった。
⋯⋯。
私も生き残れるか、わからないのにね。
ソウダネ⋯⋯アンナチャン。
懐かしい声が聞こえた気がした。
さあ、行こうかアンナちゃん。