王都にて。
ぶらり、ぶらりと。
⋯⋯アンナちゃんよ。
おまんじゅうのせいで、あの場から逃げ出すハメに。
『私のセイにされてもー。秘密が多いのは事実ヨネー?』
お前が出て来なければ問題無かったのだけど!
ああ、なんだかむしゃくしゃするわ。
王都の大通りを歩く。⋯⋯人が少ない。
皆、家に閉じ篭ってる。
露店も無し。
露店で出せる様な食料は無い。
広場に来た。
民に見せ物を披露する、娯楽も無い。
それをする力も出ない程、切迫してる。
食堂に来た。
閉まっている。提供するものもない。
酒場に来た。⋯⋯開いてる。
中は呑んだくれて潰れた、商人くらい。
売るにも、人が居ないし物がないか。
一杯貰う。⋯⋯美味しい酒の筈なのに、不味い。
⋯⋯飲み干して、広場へ。適当に座って眺める。
やっぱり、人が少ない。まばらにしかいない。
末期、ね。
『これはこれはマタ⋯⋯なんともマア、懐かしい感ジ。』
おまんじゅうから、懐古の念が。
⋯⋯何時の時代を、思い返してるのかしら。
『主ガ私を作り出した⋯⋯あの時代ノ最後。』
縁起でもない事を言うな。
『人ガ最期の砦ニシタ、アノ街。』
神話で見た様な。
『我等ガ主ノ、最初ニ堕チタ街。』
⋯⋯その記述は無かった。
『センティリアの王都ガ、こんな感じだったカナァ⋯⋯。』
⋯⋯マジ?今、そんな面影は。
『それはそうダヨ。⋯⋯世界ハ、何回も壊れているカラネ。』
世界は移り変わる⋯⋯。
『青ト会ったんだから、知ってるデショ。』
⋯⋯。
『貴女ノ世界モ、移り変わる。記憶の無い、世界ハアッタカナ?』
え?
『記憶ハ無いノニ、知っている事はあるカナ?』
まって。
『待たない、待テナイ。もう、時ハ直グソコニ。』
どういう。
『合図、出した方がイイヨ。夜ハ寝ル時間ダカラネ⋯⋯。』
⋯⋯⋯⋯そこは、同意すべきかしら。
空に向かって、魔術。
閃光を上げて、進む光。
届け、お父サマの元へ。
『サァ、コレデ。終ワリ、始マル。』
⋯⋯どういう事かしら。
『忠告ハしたモノ。クヒヒ、サア。アンナちゃんはどんな選択ヲするのカナ。』
何を言っているの!
『さあ、サァ。世界ハ此処デ、転機とナル。我等ガ同胞ハ目覚メノ時ヘ。コノ世界ハ次ナル主人公ニ引キ渡ソウ。』
主人公⋯⋯?
『ソノ為ニハ、世界ニ風穴ヲ。我等ハ喰ライ、ソシテ主ノ元ヘト。』
おまんじゅう、貴女もしかして。
『大人しく欲望に素直になっちゃえよユー!アッハ、アハハハハハハハハハハッ!』
やっぱり、最初からそれしか考えてないのね。
『アンナちゃん、貴女ハ⋯⋯我等ガ主が目を付けてるカラネ。ちょっとダケ、手助ケ。⋯⋯仲間ハ、早めにここから脱出させなさいナ。後は、貴女の選択次第⋯⋯クヒヒヒヒッ。』
⋯⋯。
『サァ、何も無い街から戻ろウ?もう夕方。早く寝て、早く起きて、朝になったら全てヲ始メヨウ?そして、終ワラセテシマオウ。』
そこには同意するわ。
⋯⋯もやもやしながら、城に戻る。
慌しい騎士は⋯⋯見えない。もう用意できたのかしらね。
緊張感が包んでる。決戦前夜、って所かしら。
部屋。流石に皆、各々の部屋に帰ったみたいね。
軽く夕食を食べて、今日は早めに。
おやすみなさい。
さあ、明日へと。
アンナちゃんが座った広場、そこはアンナちゃんが何回も最期を遂げた場所だったり。故に、変化が良くわかるんだろうね。