懐かしいね。
久しぶりの実家ってなんだかもやもやするよね。
や、アンナちゃんよ。
私は今、実家の応接間に居ます。父親待ち。
相手は誰か分かってないけどね。ついでに部屋の角には、騎士団長。ま、怪しい格好してるからしょうがない。つーか老けたなオイ。
「待たせたな。⋯⋯家の紋を持っている者だと聞いたが。」
どうも、前領主殿。ふと近くを通りましてな。挨拶次第に参りました。今領主殿は元気かな?
「⋯⋯今は王都に居る。して、お前は何者だ。」
んふふ、当ててみなさいな。何せ十年と少しぶり。いやあ、老けましたなぁ。
「⋯⋯⋯そのフードを取れ。顔を見せろ。」
騎士団長に合図なんて、物騒だこと。ま、私が怪しい格好してるからよねぇ。アッハハ!
いいわ、顔を見せましょうとも。
フードを取る。
「⋯⋯⋯⋯な、っ。」
おーおー、目ぇ真ん丸になってますわ。
ねぇ、お父サマ?
「アンナ、なのか⋯⋯?」
どーもー、何年ぶりのアンナちゃんですわよー。お久しぶりですわー。元気そうでよかったわー。
「こ、の⋯⋯馬鹿娘が!今まで何処をほっつき歩いてた!」
北とか、南とか?王領⋯⋯ハーヴェスタの城とか?色々やってましたわー。
「そういう事を言っているんじゃない!」
あっはは、ごめんなさいね?⋯⋯覚悟はしてたんでしょ、ある日突然居なくなるのは。
「そうだ、そうだが⋯⋯それでもだ!」
⋯⋯申し訳ないね。
「あなた!アンナが帰ってきているって⋯⋯!」
あ、ども、お母サマ。お久しぶりですわー。
「っ⋯⋯⋯⋯!」
いてぇ。何もぶつことは無むぎゃ。
「心配、したのよ⋯⋯!」
あー、うん。抱きしめきましたわ。暑ぃですわー。
「アンナ、身体が冷たいわ⋯⋯?」
今はこれが普通ですわ。
「⋯⋯アンナ。」
なんですかお父サマ。
「⋯⋯15の時と、姿が全くと言っていいほど変わらないな、と。」
うげ。
「しかも。何故先程から声を発しない。」
⋯⋯なんて言おうね?
「アンナ⋯⋯?」
んーと。
よし。
魔獣と殺りあってたらヘマした?だけよー。
「大丈夫なの!?」
いやどう見ても大丈夫よ、ダイジョーブー。
「⋯⋯アンナは魔獣と戦っているのか。」
そうそう。⋯⋯ここに立ち寄ったのも、魔獣を追ってきた様なものよー。
特に、王都周辺⋯⋯よねぇ?
「⋯⋯ああ。だが、あれはあまりにも多過ぎる。」
「一人では無理よ。」
まあねぇ、確かに凄まじい数だったわ。でもね。
勝てる見込みは、あるのよ。
「なんだと?」
んふふふふ。私、ただ世界をほっつき歩いてた訳じゃないわ。
色々やってきたのよー。ンフフ。
「⋯⋯それは、本当に勝てるのか?私達に出来る事はあるか?」
ええ、勝てるわ。出来る事?んー。
何も直接叩くことが戦いじゃないよ、ってね。
「なるほど⋯⋯後方支援か。」
そそ。後は後ろから魔獣が出てこない様にして欲しいかも。
「ふむ、分かった。⋯⋯いつ、やる。」
色々準備あるし⋯⋯それはまた連絡する、って形で。一ヶ月以内にはやりたいねー。
「一ヶ月、か⋯⋯。」
ふむ?⋯⋯ちなみに、王都の食料が尽きるのは何時ぐらいかしら。
「⋯⋯⋯⋯そうだな。普通の暮らしをするなら、一ヶ月もつ程度の備蓄はある。」
⋯⋯もうすぐじゃないのよ。うへぇ、急がないと。
「ああ。⋯⋯中にいるエリーナが心配だ。」
エリーナ?⋯⋯⋯⋯あー、妹ちゃんそんな名前だったわ。
んー、そうね。中は大変な事になってそうだしねぇ⋯⋯。
ちょっと急いで準備しないとね。
それはそうと、お腹空いた。なんか食べたいかもー。
「む。もう昼か。早いな⋯⋯。」
「魔獣の事もいいけど、まずはご飯にしましょ?」
そだねー。
お昼、久しぶりの実家で!んふふっ。
ごーはん!ごーはん!
面倒な話から話題をすり替えてやったのさ!