野暮用。
本当に野暮用。
ども、アンナちゃんでっすぅ。
朝。日が出る前。皆はまだ、寝てる。
「おや、魔術師さんじゃないか。早いね?」
⋯⋯おかみさん早いね。おはよう。
「仕込み中だけどね。簡単なのなら出せるけど。」
ならそれ貰ってもいい?
「あいよ、ちょっと待ってな。」
待つ。今日はどうしようかなー。
誰も居ない食堂でぼーっと。
「待たせたね。」
全然待ってねえわ⋯⋯。
トースト、目玉焼き、サラダ、コーヒー。はえーな。
頂きます。
うん、美味しい。
「魔術師さんは早いんだね、皆まだ寝てるよ?」
今日はちょっとね。何時もはもう少し遅いよ。
「そうなのかい。ま、詮索はしないけどね。」
ありがと。
さて、ごちそうさま。美味しかったよ。
「あいよ。いってらっしゃい。」
いってきまーす。
朝だねー。空が白み始めてるね。
誰も居ない。
門番さん、おはよう。
「ふぁ⋯⋯ああ、今から出るのか。」
お疲れ様ですー。
「魔獣に気を付けろよ。」
はーい。
街を出て、と。
魔術発動、転移。
座標指定、王都周辺、上空。
一瞬で移動して。おお。
真っ黒だわ。凄い。さっきまで居た街との間、その半分過ぎくらいから埋め尽くされてるわ。何でこんなに?
王都の外壁、その周辺だけは居ないね、結界か。
ふーむ。ま、自分の目で確かめられたし⋯⋯いっか。
どうやって突破するか、考えないとなぁ。
さて、それは後にして、と。
魔術発動、転移。
次の場所へ。
着いた。おー。
変わってない。所々に魔獣の爪痕はあるけど。
ローブ、フードを被って、と。
街に入って。街並みを歩く。人も変わりないね。
てくてくと。あら、あの人歳食ったわねぇ。ま、そうか。
そんなことを思いながら、歩く。
そして。この道を歩いていたら辿り着く。
領主の館。
門番、変わってないんだね。長いなぁ。
通りの向かい側、壁にもたれて。眺める。
門番が怪しんでるけど、気にしない。
魔術発動、探査、遠視。
⋯⋯見えた。領主の書斎。
妹は⋯⋯居ない。代わりに、父親が代行してるね。
不安を秘めた顔。ふーむ。
別の場所を視る。母親。へえ、祈ってる。祈る相手は⋯⋯え゛っ。
輪廻神⋯⋯マジっすか⋯⋯。私のせいかな?
というか、私が残していった物も祭壇に置いてある。⋯⋯遺品カヨ。
まあ、15の時から消息不明だしね⋯⋯仕方ないか。
他の所視よう。屋敷をぐるっと。んー。
変わってないねー。というか、私の部屋残ってるんだけど。しっかり掃除もしてあるし。すげー。
あら、小さい子がいる。女の娘。⋯⋯ああ、妹の娘か。婿入りらしいのよねー、妹の相手。ま、いいけど。
⋯⋯大体見たし、どうしようか。
⋯⋯会っていくか。
門番さん。
「⋯⋯何者だ。」
前領主に、御目通りを。⋯⋯あとこれ。
「⋯⋯これはこの家の通り紋⋯⋯しばし待たれよ。おい。」
「ああ。しばし待たれよ。」
連絡に走ったね。ちょっと待つ。
「お待たせした。こちらに。」
ああ、通ったのね。この紋、家系に入る人がこいつは大丈夫、っていう人に渡す印みたいなものだし。主に商人に渡す。
まあ、いいけど。
さ、懐かしの我が家に。
帰省。