街にて!
強すぎると遠巻きになるよね。
どうもー、アンナちゃんですわぁー。
やっぱりね、ハラカラは美味しい。わざわざ誘導する価値あったわ。美味しいもの。
あ、今は街の中。閉門してたけど、あの後開けてくれたのよ。
で、兵士達に盛大な歓迎と強烈な警戒を向けられて。
固まる皆を見て一人嗤ってましたわ。ええ。
ええ、ええ。しがない魔術師ですよー。
適当にあしらって、宿ー。冷えた身体を温めて。
で、今。ご飯食べてます。まあまあかなー。
尚、一人。皆、声をかけてこない。まさかここまでのモノだとは思ってなかったみたいな?こええ、みたいな?寂しいヤツらねぇ。
尤も、街の人に絡まれまくってるのもあるけどね!大量の魔獣を蹴散らしたのだから。
ま、私がやったって言ってるみたいだけど。別に構うことないのに。
因みに、街の人も私には話しかけない。ヤツらが私やべえ的なこと言ってるし、あの爆炎、街の中でも見えたらしいし。
尤も、私が喋らないのもあるけど。
ケッ、寂しい奴等ばっかり。
ごちそうさま、まあまあだったわ。
適当に散策するかなー。夜だけど。
1人呑みも悪くないしね。
適当な⋯⋯そうね、傭兵酒場に入って、麦酒あたりを。
うん、この国の酒だ。懐かしいやら飲み慣れたやら。
「⋯⋯おい、嬢ちゃん。ここは傭兵の溜まり場だ。探索者の場所じゃねえぞ。」
あら、私は傭兵よ?ほら、カード見せてあげよう。
「⋯⋯王都の傭兵⋯⋯そうか、悪かったな。」
いいのよー。
「探索者と一緒に居るのは⋯⋯何故だ?」
隣の街行ったら滅んでた。で、生き残ってたアレらと一緒に出た。
「そうか⋯⋯まだ生き残りが居たのか⋯⋯。」
もう居ないけどね。完全なもぬけの殻。
「⋯⋯貴重な情報、感謝する。」
貴重だと思うなら、もう一杯頂戴な。
「わーったよ。ほらよ、奢りだ。」
当たり前。頂くわ。
「それで、これからどうすんだ。ここに留まるのか?」
いや、王都に。アイツらも目指してるし、ついでに帰郷しようかなと。
「そうか。⋯⋯話に聞くままの嬢ちゃんなら、大丈夫だと思うが⋯⋯。」
へぇ、出るのね?
「⋯⋯ああ。」
はいはい、金貨だ。好きなだけ垂れ流して。
「⋯⋯マジかよ、本物じゃねえか。気前がいいねぇ。」
情報は宝。
「間違いねぇ。⋯⋯王都周辺なんだがな、魔獣が凄まじい数押し寄せてんだ。」
さっきよりも?
「比じゃねえ。一面真っ黒、空も黒だ。お陰で王都は孤立状態。なんでも、王族の隠れ道すら使えねえって話だ。」
いつからよ?
「そうだな⋯⋯大体二週間くらいか。大抵、食料も底をつき始めてんじゃねえかな。」
ありえる。
「ましてや、竜を複数見たという話もある。何度もな。」
竜、ねぇ。
「飛竜、地竜⋯⋯分類不能。ごった煮だ。大陸中のが集まってんじゃねえかってくらいだ。」
それはそれは。
「⋯⋯このままじゃ、この国が落ちるのも時間の問題だ。」
そうね。
「ましてや王都⋯⋯頭がやられるとな。」
連携なんて無理ね。
「今、内側がやられるのは困る。⋯⋯なあ。」
はてさて、なんの事かな?
「王都がやられたら困るのは同じだろう。ましてや故郷なんだろ。」
はて、さて?
「お前⋯⋯!」
嫌ね、私達は傭兵よ?まさか、兵士だとでも?
「⋯⋯傭兵は、有事の際には徴兵される。」
それを決定するのは王都の奴等。連絡、取れないんでしょう?ましてや任意。強制じゃあないわ。
「だが、強制みたいなもんだろうが!⋯⋯お前、傭兵のカード剥奪されるぞ。」
はい、どうぞ。持ってっていいわ。
「んなっ、正気か!?」
別にいいわ。もう要らないし。
「探索者になる気か!?」
いいえ?あっちもあっちで面倒そうだし。
「身分証明が無くなるんだぞ!?」
まだあるし。まさかこれだけ持ってるはずないじゃないの。
さて、ごちそうさま。それじゃ、バイバイ。
「ま、待て!」
じゃあねぇ。
フッ、と。消える。んふふ、隠密です。
さ、適当な話も聞いたし、飲みにいこ。
適当な酒場、そこのカウンター。一番奥が空いてるね、そこにしよ。
店主、ウィスキー頂戴な。
舐めて、転がして、楽しんで。
一人も悪くない。けれどまあ。
あの子達、元気してるかなー。
アレは誰とくっついたのかしら。
くっつかなかったのは、どう落ち着いたかな。
あの性悪妹は、どんな感じになったのかしら。いい領主だとは、昔聞いたけど。
屋上の住人は、まだ見た目だけ怠惰なのかしら。
武人君は、元気かしら。
確認してみるのも、アリか。
どうせ行く事に、なりそうだし。
アイツら、どうせこの街で足踏みだしねー。
ああそうだ、実家を見てくるのもいいかもねぇ⋯⋯。
「⋯⋯あれ、シレーティナさん⋯⋯?」
ん?
⋯⋯おや、ニーナと領主の娘⋯⋯っていうのもアレね。
ルナーラ・ラウディ。子爵の娘。
で、どうしたのさ。こんな所に。
「いや⋯⋯飲みに来ただけ⋯⋯。」
それもそうか。酒場だし。
「ご一緒しても宜しいですか?」
⋯⋯ま、いいか。どうぞ。
「ウィスキーを。」
「⋯⋯麦酒。」
乾杯。
「⋯⋯シレーティナさんって、やっぱり大魔術師だったんですね。」
大、は付けなくていいわ。
「付けなきゃ駄目だと思う⋯⋯。あの術、まるで禁術。」
禁術ね。まあ、威力はそうよね。
でもあれは魔術。威力マシマシだけどね。
「あれが、魔術なのですか⋯⋯。」
「もう⋯⋯意味わかんないや⋯⋯。」
尤も、魔術と禁術の違いなんて無いけどね。作った人が指定するか、偉い人が認定するかすれば禁術。
「なるほど、ねー⋯⋯。」
「そうなんですね⋯⋯。」
店主、おかわり。
「⋯⋯それはそうと、聞きましたか?王都周辺の事⋯⋯。」
「魔獣で、埋め尽くされてる⋯⋯。」
あら、そっちも聞いたのね。
「凄く止められて、情報料もかなり取られましたが⋯⋯。」
「⋯⋯聞く限り、王都に行くのは無理。」
そうね。
「シレーティナさんでも、無理ですか?」
無理ね。一人ならなんとかなるけど。
「そうですか⋯⋯。」
ま、連れて行く人が物凄く頑張ればいけるかもね。
「⋯⋯無理っぽいね。」
そういう事だから。
「⋯⋯シレーティナさんは、向かうのですか?」
んー。直ぐには行かないわ。
「⋯⋯用事?」
野暮用。
「また、戻って来ますよね?」
約束しましょう。⋯⋯戻ってきたら、貴女を王都に。
「⋯⋯私だけじゃなくて。」
わかってるわ。
「⋯⋯死にそうな言い方。」
ジンクス?
「ジンクス。戻ってきたら、なんてやめて。」
わかった。
そろそろいい時間ね。宿に戻る?
「そうですね。戻りましょう。」
三人で戻る。
宿に着いたら、別れて。
「おやすみなさい。」
「おやすみ⋯⋯。」
はい、おやすみ。
汗を流して。
寝ましょうか。
王都周辺やば過ぎない?