そろそろ。
歩む道程は。
⋯⋯アンナよ。
また、時が進んで。
4年。
私、アンナさんじゅうさんさい。
あれから直ぐ、私はあの浜辺を引き払った。
町の人には、大事な用事ができた、と。
あの子達には、書置きをひとつ、遺して。
私は、旅に出る事にした。
何処に行く、当てもなく。
街を避けるように。
荒野。草原。森。山脈。砂漠。大雪原。
歩いて進む。
この世界を。
私の足跡を付ける様に。
⋯⋯。
あれから、あの夢をよく見るようになった。
夜。昼。朝の微睡み。
全て、あの夢。
どんなに浅く眠ろうとも。
とんなに深く眠ろうとも。
喰ラエ。
喰ラエと。
私に囁く。
正直、煩くて適わないわ。
しかも。
あの夢を見る度、身体の黒が進んでいる気がする。
いや、気の所為なんかじゃないわね。
ゆっくり、確実に。今迄よりも速く。
⋯⋯そろそろ、潮時なのかもしれないわね。
そう思いながら、今日も歩き続ける。
歩けど、歩けど。
魔獣。
どんな所にも、魔獣。
街の近くにも、魔獣。
人の入らない場所にも、魔獣。
獣は、たまに見かける。
私は、見かけた魔獣を片っ端から殺していく。
例え、相手に戦意がなくても。
例え、擦り寄る様に近付いてきたとしても。
例え、服従の意思を見せたとしても。
私は、コイツらを殺していく。
⋯⋯。
否。
喰らっていく。
剣を振れば。
肉は切り裂かれる。
右腕で魔石に触れれば。
それは取り込まれていく。
満腹感。
けれど、お腹は空く。
魔獣の肉を焼いて、食べる。
靄が残っていても、それは美味しい。
最近、鏡は見ていない。
否、幻影は見ている。
けれど、幻影の下は見ていない。
きっと、もう真っ黒でしょう。
最近、幻影も⋯⋯効かなくなってきているけれど。
右腕の結界は、既に壊れた。
もう一度、張り直す。
靄は閉じ込めた。
けれど、色はもう隠せない。
真っ黒。
真っ赤。
影のように、真っ黒。
けれど。
私は私。
例え身体が魔獣になろうとも。
私の心が。
否。
私の魂が在るのなら⋯⋯!
「私HA、人GEンだ⋯⋯!」
私が私で在る限り。
私は、進ム。
進み続ける。
「あらあらぁ。これはまた、珍しいものを見たわねェ⋯⋯。」
⋯⋯?
「まるでレピィだこと。⋯⋯っふふ。これはまた⋯⋯愉快愉快。」
誰⋯⋯っ!?
「ああ、振り向かないで。囚われてしまうから。」
とても、危険な。
「ふぅん⋯⋯いい魂をしているわね。よきかな、よきかな。」
とても、懐かしい。
「内なる姿を曝け出しなさいな。」
初対面の。
「狂気を。」
狂った様な。
「冷徹を。」
凍え冷えた。
「恐怖を。」
恐ろしい。
「さあ、貴女。」
囚われてしまうほどの。
「しばらくゆっくり、眠りなさい。そしてその後は⋯⋯。」
黒く禍々しい。
「いつも通りに⋯⋯遊びましょう?」
聲。
「いつまでも美しい、貴女を魅せて⋯⋯?」
WATASHIHA。
ワタシは。
私は。
⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯。
安らぎ、そして睡りへと。
狂聲。
狂騒。
震エヤ。
震エ。