この先の事。
アンナちゃんの起床。
っは!気絶してた!
やっほー⋯⋯アンナちゃんよー⋯⋯。
身体がとても冷たいですわ。結界がギリギリ動いてたのが生存ポイント。
自壊しながら動いてたみたいで。あー、ははは。
「⋯⋯死に損ねた、か。」
この世界、楽しいけど⋯⋯。どう考えても、先が見えないもの。
もしかしたら凄い人が現れるかもしれないけどね。
まあいいや、その前に大抵、私は死んでいるでしょ。
「さて、と。魔力は⋯⋯少し回復してるわね。」
魔術発動、リフレッシュ!
ついでに火をおこして。うー、寒い。
周りは砂になってるし。というか朝日が。うわ、よく死ななかったな私。結界すげー。
雪もちらつき始めてるわね。早いところ移動した方がいいかも。
「その前にご飯⋯⋯。」
携帯食料と、お湯にぶち込んだだけのココア。
右手にココア、左手に携帯食料。
携帯食料をココアに浸して柔らかくして、もぐもぐ。
不味い。ゲロマズ。なんで私は塩気の強い携帯食料をココアに浸した。
「⋯⋯判断能力の低下を確認、かしら⋯⋯。」
うーん、体温低下の影響かしら⋯⋯。
魔術⋯⋯あー、なんかなかったかしらー⋯⋯。
んー⋯⋯。
あー⋯⋯。
あれよー⋯⋯。
「面倒くさい⋯⋯炎の珠⋯⋯。」
弱めの炎を近くに浮かせて。
魔術、結界。少しの耐熱。
炎の珠に張り付かせて。
「あったかー⋯⋯。」
抱き込んで、暖まる。
もそもそと携帯食料食べて、たらたらとココア飲んで。
まあまあ暖まってきた。
「⋯⋯⋯⋯、あれ?」
頭が働いてきたけど、なんかとても大事な事をスルーしている気がする⋯⋯。
⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯?
あれ?
記憶を手繰り寄せる。氷雪竜倒して。私も落ちて。あれ?
「⋯⋯なんで右腕あるの。」
思いっきり凍って砕け散ったよね⋯⋯。
右腕を見る。袖も戻ってる。何故?
「いやまて、私の服は黒くない。来る時は赤いのを着ていた筈。」
記憶を辿る。
⋯⋯あの、小さな黒いモノ。あれか?
袖を捲る。黒い。肩もか?
上半身、はだける。寒い。肩口まで黒い。
鏡を取り出す。
「⋯⋯そっか。そういう状況に⋯⋯。」
黒く、肩まで染まった右腕。
肩から左胸の方に、伝う黒い線。
そこから伝う線、身体中。今は色は付いてない。けど、少しずつ黒いのが伸びている気がする。
「⋯⋯これが全部伝ったら、私は。」
魔獣。
「どうしましょうか。」
今はまだ、私だ。けれどこの先は。
「いっそ、ここで⋯⋯。」
死ぬか。
剣を抜く。
首、そして心臓に。
「ここで死ねば、次の世界に。この世界に、残すモノはないし。」
よし。
剣を引き、自分に突き刺⋯⋯
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯、⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯?」
まて、思い出せ。
最初、そう一番最初。
アレは何を言っていた?
ましてや、あの時。
アレに何を言われた?
シャムシャラは、なんと言っていた?
思い出せ、アレの言葉を。
そう、確か。
「スーサイド・ペナルティ⋯⋯。」
魂に、直に与えられるペナルティ。
何をされた?
「私が、壊れた、その致命傷は?」
廻り続けた疲弊。
何度も繰り返される、裏切り。
その先に自殺を選んだ時、その後どうなった?
「100回ほど、記憶に無い部分。」
自分を取り戻した時、どうなっていた?
「嘗ての私とは、乖離した私。」
あの貴族として誇りを持っていた、あの頃とは。
「そして、私は?」
魂が警告する、ペナルティ。
「⋯⋯⋯⋯ッチ、クソッ!駄目ね、何が起こるか思い出せない。」
「スーサイド・ペナルティ。クヒハハッ。どうにもこうにも、アレはダメか。」
自分で死ねない、か。
「ああ、本当に。大変な事になったわねぇ⋯⋯。」
今は、まだ、死ねないか。
「⋯⋯はぁ。」
剣をしまう。仰向けになる。
「この先私が魔獣となった時、どうなるのかしら。」
それはペナルティをくらうよりマシなのか?
「⋯⋯進んでみないと分からないわねぇ。」
はーー。
「いいわ、いい。いいだろう。いいでしょう。」
これもまた、一興。
魔術発動、幻影。この変化を隠す。
隠蔽は、しっかりと。
「さてさて、この黒いの。時とともに進むのか、それとも何かを切っ掛けに進むのか。」
戻ったらそれを調べないと。
「やる事は山積み⋯⋯。っふふ。」
今はこの状況を、楽しもうじゃあないの。
「よっし!戻るわ!」
片付けて。王領、凱旋よ!
っとと、魔石回収しとかないとね。
今度こそ、凱旋!
「スーサイドには、ペナルティがあるよ?」
「そう、自分で死ぬなんて許さないよ。どこまでも足掻け。どこまでも進め。這いずり泥を啜ろうとも。そして私を楽しませてくれよ?ッヒャヒャ、ヒャハハハハハハハ!!!」
「もし、それでも自ら死ぬのなら。」
「きっと、アンナちゃん。どうしようもなく。」
「大変な事になるのを、覚悟してね。」