雪の進軍(一人)。
ゆーぅきーのーなーんちゃーらはー!
やあ、アンナちゃんよ。
雪の中を進み続けてさらに二日。もはや前すら見えない吹雪の中。
「寒いわねえ。ふぅ。」
広く広く探査を広げて、大きな反応を既に感知。風上と、他の場所に。
目的はこの風上。もう、一日もかからないくらいの所。
向こうも、こっちに来ている。鉢合わせるのは、もうすぐかしらね。
「いよいよ、って訳ねぇ。」
この戦いに、意味などない。けれど、私が殺り合いたいから殺る。それが意味となる。ついでに、王領がどうのこうの。
肩に乗る小さな黒いモノは、静か。前をずっと見つめてる。
その視線の先に、本当の親かしらね。
途中で休憩。雪を掘って、穴にして。そこで仮眠と補給。
夜が明けたら出る。そして進む。
反応、随分近くなってきたわね。
そのまま進む。
進み続けて。
一時間もしないうちに。
突然吹雪が晴れて。
「⋯⋯何度見ても、この光景は凄いわね⋯⋯。」
澄み渡る青空、ダイアモンドダストが煌めいて。
「⋯⋯そしてこの中心にでかでかと聳える山脈のような巨体、と。」
白き巨体、青く、貴き光で煌めく氷柱が生える山。それが、氷雪竜⋯⋯。
けれど、目の前にいるモノは。
黒き巨体、青く、禍つ光で煌めく氷柱が生える山。これが、氷雪竜⋯⋯!
「って、まって。ちょーっとまって。」
あれ、氷雪竜ってでかくても1kmくらいのハズ⋯⋯。
「⋯⋯どうみても5kmはあります、本当にありがとうございました。」
⋯⋯デカすぎない?
「GGGGGGGGRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHOOOOOOOORRRRRRRRRRRRRRRRR!!!!!!!!!!」
咆哮!思わず耳を抑える!地面も揺れてる!積もった雪が舞い散る!
「GAW!」
あ、肩の小さいヤツがいっちゃった。残念。
あー、耳いたい。
魔術発動、拡声を弄って⋯⋯耳栓!
「これでまあ、いいかしら。」
氷雪竜がこちらを見ている。
「っふ、敵対者だってことは解っているのね。」
さてさて。
「ドラゴンスレイと洒落こもうじゃあないの!」
いざ、仁上に。
「狩りの時間だ!」
「GRRRRRRRRRRRRHHHHHHHHHHH!!!」
魔術発動!コンセントレート!
「想定外のデカさだけれど!問題ないわ!」
魔術発動!コンセントレート!
吹雪が来る。ブレスね!
魔術、制御、圧縮!
「喰らいなさいな!」
禁術発動!ブラスティラヴァ・マグナ!
ブレスを溶かし、突き抜けろ!
吹雪が散る、炎が進む!
「着弾!どうかしら⋯⋯!」
着弾、爆発。煙が晴れる、無傷!
「ま、そうなるわよね⋯⋯。」
どうやら、魔術耐性は凄まじいようで。よく見たら、見えてる表面、その外側に分厚い透明な氷があるみたいね。
「氷雪竜にそんなもの、あったかしら⋯⋯まあ、いいわ。」
剣を抜く。
禁術発動、ブラスティラヴァ!
魔術発動、結界!耐炎!
魔術発動、風の刃!
結界、風の刃、ブラスティラヴァの順、剣に纏わせて!
魔術発動、結界!耐氷!
魔術発動、ウィンディブラスト!
魔術発動、フレイムブラスト!
結界を自分に、ウィンディブラスト、フレイムブラストを自分に接続!
「高速機動、しましょうか。」
ブースター点火ァ!ぶっ飛びますわぁーー!!!
ブレスを空中で回避、飛んでくる氷塊も回避!
「先ずは脚を狙うのがセオリー!」
溶岩の剣で溶かし尽くしてやるわ!
周りを飛び回り、四つある脚を少しずつ削っていく。表面の氷は再生しないのね、よし。
魔術発動、結界!耐熱、耐氷、表面を粘着質に、一方向のみ結界を弱く!
小さくして、中に魔術を詰める!
禁術発動、ブラスティラヴァ!
これを脚に貼り付けまくる!
「よし、発破ー!」
指向性を持たせた溶岩の奔流!たらふく喰らいなさい!
脚から大量の水蒸気。ついでに肉が焼ける臭い。
「GOOOOOOOOOHHHHHHHHHHH!!!!!!」
痛いか、痛いだろう!
「焼けりゃ再生しにくくなる。ましてや氷を纏う巨体、解けるか焼けるか、かなりのダメージでしょう?」
動きが止まる。後は焼き殺すのみ。ブレスと氷塊に気を付けて。
「GGGGGGGGRRRRRRRRRRRR!!!!!!」
⋯⋯っ、嫌な予感!
「GHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!」
「なっ!?」
吹雪が止む。
風が止む。
吹雪く雪、積もる雪。それら全てが黒く染まって⋯⋯!
直後、氷雪竜に向けて、暴風が吹き荒ぶ。
「わ、わ、わ、何よ!」
黒い雪、その全てが氷雪竜に纏わり付く。
「ッチ、少し離れ⋯⋯うわぁぁっ!?」
何この強烈な下降気流!良く見たら氷雪竜周辺が凄まじい勢いの冷たい上昇気流!
氷雪竜、黒い雪を纏い、空を覆う様に天幕を広げ。
「ま、マジ?そんなのアリなの⋯⋯。」
氷雪竜が、山脈の様な巨体のアイツが。
「と、飛んだ⋯⋯。」
氷の骨格、氷の翼膜。周囲を全て下降気流に、逃げ場を無くした風を上昇気流に変えて。
土の見える地面。澄んだ青空。煌めくは黒氷、禍つ大翼。
冬の王、悪夢の巌冬。
「名付けるなら⋯⋯大氷雪天竜⋯⋯かしらね⋯⋯。」
「GRRRHHHHHHHAAAA■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!!」
世界に轟く、揺るがす咆哮。
⋯⋯ヤバイ、かしらね。
「違ぇだろゥ?」
そうね。
「愉しい、よねこれはァ!!!」
これだから!
「この旅路は辞められないッ!!」
凄絶に、愉しもうじゃあないの!
「アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」
狂う獣相手、されど値する相手!
「ならば!」
名乗ろう。
「認めよう、到達せしモノよ!されどここまで、何故なら!」
その魂を奪うモノの名を!
「シャムシャラの亡霊が!お前を狩りに来たのだから!!!」
魂の奪い愛と逝こうじゃあないか!!!
「あっはははははははは!!!!!」
いーきってかーえっすつーもりーもなんちゃら!