いいわ、進めましょうとも。
一つの山場。
はろ、アンナちゃんよ。
部屋に戻って、弟子達にやりたい事やってなさい、と伝えて。
プライベートな部屋に。
ここは私の部屋にしている所。
今のところ、誰にも入らせてないわね。
色々とごちゃごちゃしてるけど、まあいいでしょ。
必要な物を集めて、倉庫に入れる。
防寒着。
食料。
野宿用の物一式。
剣はある。
水、まだあるけど入れておこうかしら。あって損は無い。
大きめの瓶。何か取れたらここに。
フライパン。⋯⋯は沢山あるわね。
あ、一応ランタンと火石も入れておこう。魔術以外の火付けも念の為にね。
「⋯⋯あと何が必要かしらねぇ。」
なにをしているか、まあわかるでしょ。
「っふふふ⋯⋯。アレと殺り合うのは二回目、かしら⋯⋯。」
王が動けないのなら、臣下が動く。臣下が動けないなら、別の立場の奴が。
「私は将である以前に、傭兵なのよね⋯⋯っふふふふふ。」
ゼルノを助けるみたいでアレだけど。
「私が殺り合いたいから殺る。それで充分。」
何にも囚われない様な力、それを私は持っているのだから。
「私が囚われるのは時と輪廻のみ⋯⋯。」
そして、我が神。
「亡霊は彷徨い続けましょうか⋯⋯。っふふ、あはハ、ハハハハハハハハハッ!!!」
準備完了。
小さな黒いモノを肩に乗せて。
「さ、あなたの親に会いに行くわよ。」
「Pgyaa!」
弟子達には悪いけど、死なない程度には頑張るわねー。
私の部屋に手紙。そして応接間に書置き。もしもの時に、ね。
魔術発動。隠密。
私の隠密は誰にも見えないわよ。
これでよし。
⋯⋯行くとしようか。
「さみー⋯⋯。やっぱり吹雪の中は寒いわ。」
一人と一匹?吹雪の中!王領から出て、草原⋯⋯もとい雪原へ!
風上に向かって。ふわふわ、かなりの速さで。
「いつもなら風は北から吹いてくる。けれど、氷雪竜が来た時は、そこから吹いてくる。なら、風上へ向かえば辿りつける。」
それにしても。
「刺激するな、って言ったのは間違いだったかしら。これ、かなり強いし。吹いてくる方向がいつもの周回ルートと違う。」
進む方向は、王領か。ふーむ。
「⋯⋯最悪、氷雪竜ではなくなっている事も考えないとね。」
数多の魔獣を喰らって、多くの魔石を持つモノ。
「全く⋯⋯あれがモンスターだったら、危険ね。」
尤も、そうであろうという予測はしている。この小さな黒いモノでね。
「はぁ、損な役回りねぇ⋯⋯。楽しめそうだからいいけど!」
吹雪、かなり強くなってきた。視界はゼロ。ここまできたら、もう少しで見えてくるか。
「氷雪竜の周りは晴れているというのが通例だけど。魔獣になったらどうなのかしらね⋯⋯。」
はてさて。
「とりあえず相対しないとわからない、か。」
吹雪の中を、進みましょう。
氷雪竜はどうなっているのかねぇ。