寒季!
王領の冬!
やっほう、アンナちゃんよー。
あれから孤児院も軌道に乗って。沢山の職員と、沢山の孤児。十分問題なく動いてますわー。
その中から将来使えそうな子を数人見繕っておいた。
あのなんていったっけ、ロフェシーだっけ?もその中に。
ま、どちらにせよ成長してもらわないとねー。
それより、大事な⋯⋯というかある意味重大な案件が一つ。
「寒い!!!わかっちゃいたけど寒過ぎるわ!!!」
外、吹雪!
速く速くなんとやらーとは違う!
「こんな日は中でゆっくりするに限る⋯⋯。」
暖炉の前で、ゆったりと。
「グリディナ様。」
「ん?」
ツインテ。色々魔術試してる。結構成功してるみたい。
「寒いのは、お嫌いですか⋯⋯?」
あー。
「ツインテ、氷系だっけ?」
「雪女とイフリートのハーフですから、まあ⋯⋯半分は。」
「どんな組み合わせだそれ。溶けねぇのかよ。」
「⋯⋯ご想像にお任せします。」
目を逸らすんじゃない。
「⋯⋯自然の寒さや熱さなら、例え大雪原や砂漠でも充分耐えられますわ。」
「魔術は駄目なの?」
「ええ。あれはちょっと。」
へー。便利なんだか不便なんだか。
「それは置いておいて。⋯⋯この雪なんですけど。」
「雪がどうかしたの?」
「毎年、雪を連れてくる竜がおりまして。このような吹雪はこの季節多いのですが⋯⋯今日のは。いえ、ここ数日、少し様子がおかしいのです。」
うん?
「微妙に、ほんの少し、魔力が混ざっている様な⋯⋯。魔術にしては弱過ぎますし⋯⋯。」
「⋯⋯それまた、面倒な。」
何があるというのよ。
「採取して、確認はしているのですが。これがまたよくわからなくて。」
「ふぅん。見せて?」
「これです。」
小さな瓶、そこに雪。⋯⋯ううん?
「確かに魔力があるような、ないような。」
「なんとも微妙でして⋯⋯。気の所為と言われればそれ迄なのですが。」
「何か違和感がある、と。」
ふーむ。
魔術、探査。範囲縮小、精査。
魔力感知。
雪の中にある魔力、なんだか何処かで見たというか感じたというか。
類似する反応、何かあったっけ。
うーん。
「グリディナ様ー!」
おうどうした細マッチョ。
「先程魔獣を狩りまして!魔石が取れたので何かに使えませんかね!」
「粉にしてみたら?それを溶かして魔法陣書いてみるとか。」
「試してみます!」
にしても魔石ねぇ。魔力が沢山入っているけど、使い道、彫り入れて魔道具的なのにしか使えないのよねぇ。綺麗だから高値で売れるけど。
⋯⋯ん?魔石?
「細マッチョ!ちょい待ち!それ見せて!」
「え?もう粉に⋯⋯。」
「速いわね!?⋯⋯粉でいいから!」
どんな速さで削ったんだよ!!!しかも細かい!!筋肉か!マッスルか!!!!!
⋯⋯魔石粉。
「ねえツインテ。」
「⋯⋯はい。」
雪に魔石の魔力。これは。
「普通の雪、ある?」
「え、ええ。出せますが⋯⋯。」
「出しなさい。はやく。」
ツインテの魔術、粉雪。
見比べる。
「⋯⋯雪は毎日採ってる?」
「ええ。⋯⋯これが変化に気が付いて一日目。これが二日目。」
一週間分か。見比べる。⋯⋯気が付いたら、インテリもボサロリも来た、テルシエもいる。全員集まってるわ。
「ねえ、これを見てどう思う。」
「日毎に、色が濃く?」
⋯⋯。
「全員、各将に連絡。ツインテはメアに。細マッチョはギセンに。インテリはヒストに。ボサロリはグランダルに。テルシエは、侍女長に連絡を。連絡は一つ。今降っている雪を、大量に持ってきなさい。伝えたら、お前達も雪を掻き集めて。」
「わかりました。」
「私は準備をするわ。さあ、行きなさい!王領中の雪を掻き集めろ!」
「はい!」
さてさて、どうなるかしら。
城の前、広場。
使うモノをここに持ってきて、と。
「うー、さっむ⋯⋯。」
沢山の人が雪をここに集めている。⋯⋯アイツら領民も巻き込んだな。
「グリディナ。」
「ああ、ゼルノ。貴方も集めてるの?」
「ああ。何でも重要な実験に必要なんだってな。」
「⋯⋯ええ。実験というより、観測だけど。」
「観測、か。雪に何かあるのか。」
「ええ。」
それにしても、本当に王領中の雪をかき集めたのね。
「お前が必要だと言ったら、皆協力してくれた。流石だな。」
「⋯⋯ありがたいわ。」
本当に、ね。
「あら、あの子⋯⋯ロフェシーじゃない。」
「ああ。孤児院の子達も楽しんで手伝っている。」
「そっか。」
「皆、お前に恩を感じているようだ。」
「そう。気にしなくていいのにね。」
「俺からも感謝している。これで、ここの孤児問題はほぼ解決した様なものだ。⋯⋯この冬を越せるのだから。」
「そうね。⋯⋯外では、この寒さは厳しいものね。」
彼等の未来が繋がったと思えば、まあ。
「グリディナ様。この量で、いかがでしょうか。」
「充分。さ、やりましょうか。皆、雪の山から離れなさい。」
とんでもない量の雪。これを、溶かすよ!
魔術発動。結界。密閉!
「で、これを。」
禁術発動!ブラスティラヴァ!
「液体にするわ。」
どんどん溶ける!観衆は、禁術の方に目を奪われてるわね。まあ、そうよねぇ。
結界の中、全部溶けたら。
魔術発動、結界!細長いのを、横に幾つか接続!繋げた所に穴あけて。
「さ、回しましょ。そうらっ!」
高!速!回!転!
要はアレ、巨大な遠心分離器!
雪の中にあったモノ、それが分離されていく。
「なあ、なんだ、あれ。」
「⋯⋯やっぱり、ね。」
黒いモノ。
大体分離したら、上に穴開けて。
ブラスティラヴァ。水を蒸発させて。
残った、黒いモノ。それを大鍋に。
「ドロッとしとるのう。」
「そうね。」
グランダルが覗き込む。
「これを煮沸。」
ぐつぐつ。
さらにドロッと。
「⋯⋯これは、なんです。」
「それを、今から確かめるのよ。」
ヒストが聞く。
「触りたくはないモノだな⋯⋯。」
「触らない様にね。私の予想が確かなら⋯⋯。」
ギセンが忌避する。
火を止めて、冷ます。
冷めている。けれど、ボコボコと。
「これは⋯⋯っ!」
来る。
「全員退避!やっぱりかクソっ!」
黒いモノ、蠢き象り、飛び出る!
「KYGEEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAAGGGGG!!」
「っ!魔獣かっ!」
「雪に、だと!?」
「違う!これは集めて活性化させただけよ!」
魔術発動、結界!腕に貼り付けて。
「暴れるなよ⋯⋯っと!」
掴みますわ!
腕に絡み付いてくる。
「魔力はいかがかしらね!」
大量に流し込む。動く為のエネルギー。
「GRrrrr⋯⋯。」
ドロドロが、形を得る。元の個体の形を。
「⋯⋯これは。」
「氷雪竜⋯⋯。」
「⋯⋯馬鹿な。あれはどれだけのモノだと⋯⋯。」
成体だと、山の様な巨体になる、動く雪山。小さいながら、その形をとるモノ。
「⋯⋯グリディナ。」
「やめておきなさい。魔獣は元の生物、その行動をとるわ。刺激さえしなければ問題はない。」
「しかし、このような⋯⋯!」
「なら問うわ。倒すのに、どれだけの犠牲が必要かしら。」
「ぐ⋯⋯。」
それほどのモノなら。監視して、警戒するに止めるべき。
「王として、正しい判断を願うわ。」
さて、と。
「皆、協力ありがとう!助かったわ!」
「あ、あの!グリディナ様!」
「何かしらー!」
「腕!まとわりついてますよ!?」
「大丈夫よ!問題ないわ!」
私の魔力で動いているからね。親と勘違いする。
元の個体に会うまでは、ね。
さて、部屋に戻るわ。
さあ、物語を進めよう、アンナちゃん。