孤児院にて。
最近アンナちゃんいい子すぎない?
どうもー、アンナちゃんですわ。
孤児院で、魔獣の本を読んでた子。あの子とご対面。
あの子、なんだか違うニオイがするのよね。
「⋯⋯し、失礼します⋯⋯。」
「はい、ようこそ。さ、座りなさい。」
私の対面に座らせる。メアは少し離れてる。
「さて、貴女のお名前は?」
どう出るかしらー。
「⋯⋯人に名前を尋ねる時は、自分から名乗るものだと思います。」
「こ、こら!この方になんて口を⋯⋯!」
警戒心高いね、まあ、そりゃそうか。子供達の前に出てないし。
「っふふ。いいのよー。うん、ごめんなさいね。」
さて、なんて名乗ろうかしら。
「そうね⋯⋯私の名は⋯⋯、リディナ。」
グを抜いただけ!!!!!簡単!!!考えるのが面倒だっただけ!
「⋯⋯偽名ですね。」
「わかる?っふふ。」
「はい。完全に考えてましたから。」
「ま、わかるわよねー。とはいえ、名前の一部ではあるけど。さてさて本名はなんでしょうねー。教えないけど。それで、名前は?」
「⋯⋯ロフェシー。偽名じゃ、ないです。」
「ロフェシーちゃんね。うん、よろしく。」
誠実。
「それで、私に何か用ですか⋯⋯。」
「いえね。ここから広間が見えるでしょう?なんとなく目に止まって、お話したいなぁー、なんて。」
「お話、ですか。⋯⋯一人でいる事ですか。」
「どちらかというと、何の本読んでいるのかなー、って。」
「本ですか。」
「ええ、本。なんでも、本が買いたいとかいう話じゃない。何の本が好きなのかなって。」
「⋯⋯色々と。」
「色々、ねぇ。」
「⋯⋯よく読むのは、その、神話とか⋯⋯。」
神話。確かに魔獣は神話の存在でもある。
「神話かぁ、どこら辺?」
「えっと⋯⋯精霊王の所をよく⋯⋯。」
「いいわねぇ。あの破茶滅茶ラブロマンス。」
「そ、そうです⋯⋯。」
「精霊王だと、どれが好き?」
「え、と⋯⋯青、を。」
「何かと冷徹を司る青のシエルかぁ。どんな所が好きなの?」
「⋯⋯知識。冷静さ。それでもって、力を持ってる。」
知識ね。
「色々な事が知りたいの?」
「はい⋯⋯。知識があれば、見えない事もなんとなくわかります⋯⋯。」
「知識と経験、大事よね。」
「はい。」
「じゃあ、何で同じ様な本ばかり読んでいるの?」
「え、と、それは⋯⋯。」
「なんて、ね。読み返したくなる本ってあるからね。」
「そ、そうです⋯⋯。」
ふぅん。なんだか、隠したい感じよねぇ。
面倒になってきた、ぶっこもう。
「延々と魔獣に関してばかり読んで、楽しいのかは私にはわからないけれど。」
「っ⋯⋯。い、いいじゃないですか!私の勝手です!」
「ええ、そうね。⋯⋯ねえ、一つ。貴女に問うわ。」
「⋯⋯何でしょう。」
「今の知識で、先を読むとしたら。どういう形になると思う?」
「っ⋯⋯!」
驚きと、強張る顔。へぇ。そういう反応。
「それとも。」
顔をぐっと近付けて。
「貴女、違うものが見えているわね?それも、先に関するモノが。」
「ひっ。」
席に戻る。
「やっぱりね。私との会話の中で、何度視た?3回くらいかしら?」
「な、何の事で⋯⋯。」
「貴女、右眼だけ焦点が合わなくなる特技でも持ってるのかしら?しかもいきなり会話の途中で。トカゲ系の種族でもないのに。」
「⋯⋯。」
「何、取って食おうって訳じゃないのよ。⋯⋯貴女のね、その力。それを与えたモノに興味があるだけよ。」
「与えた、モノ⋯⋯?」
「ええ。⋯⋯その反応だと、まだ邂逅してはいないみたいね。」
「あ、あの、何の事ですか⋯⋯。」
「貴女、夢はみる?」
「え?⋯⋯みます。」
「何故だか知らないけど、よく覚えている夢とかある?」
「それに何の意味が⋯⋯。」
「いいから。」
「⋯⋯水晶を覗いている夢です。」
「水晶?⋯⋯詳しく。」
「森の中に、木の洞に埋め込まれた水晶の鏡があって。それを覗くと、中で映像が。振り返ったら、荒野で。眺めていると、さっき水晶で見た光景が⋯⋯という夢です。毎回、違う映像で⋯⋯。」
木の洞に水晶の鏡、ねぇ。
「⋯⋯ロフェシー。」
「な、何でしょう。」
「なんというか、その、妙なのに目をつけられたわね⋯⋯。」
「妙なの、とは。」
木の洞、水晶の鏡、先を視る力。まだ覚醒してないけど、過去も視れるかしら。
「そうねぇ。色々な人を視てみるといいわ。沢山、ね。」
そうすれば。
「貴女にその力を与えたモノの名前が知れるわ。ついでに、多分水晶もね。」
「えっと、どういう事でしょうか。」
「ふふ。⋯⋯ある日突然、見たこともないモノが手元にあったら。連絡しなさい。いいわね。」
「えっと、あの⋯⋯?」
「自分の事はみえないだろうけど。じきにわかるわ。なにせ⋯⋯。」
「話がみえないのですが、あの。」
「ふふふ。⋯⋯おめでとう、そしてご愁傷様。貴女がこちら側に来る事を、楽しみにしているわ⋯⋯。話は以上よ。」
意味深に終わらせようじゃあないか。なあに、直ぐにでもわかるでしょう。
「あ、あの、よくわからないですけど、私に、何かがあるのですよね。」
「ええ。」
「⋯⋯危険な事ですか。」
「はい、であっていいえ、よ。」
「⋯⋯そうですか。ありがとうございます。」
「頑張ってね。っふふふ。」
ロフェシーを帰す。
「グリディナ。」
「何かしら?メア。」
「私にもわからないのですが。あの子、何があるのですか。」
「さあ?でもきっと、良い事よ。あの子次第ではあるけどね。」
成長に期待すべき子。ああ、どうか。
ヴェルスナーヴィの加護を。
知予神。