王領に向かって。
旅路の中。
はよーっす、アンナちゃんよー。
変態と、娘ちゃん。そして私の三人で、王領に向かってますわー。
「ねえ、思ったのだけど。」
「なんだ。」
「なんでしょう。」
「旅慣れてないのに、歩くのこれ?」
二人とも無言。
「歩くには遠すぎない?馬車とかないの?」
「そう言われましても⋯⋯。」
「ない、な。」
だろうと思ったよ。
「でしょうねー。⋯⋯ところでここに馬車があります。」
「持ってるのか!?」
「どこから出したのですか!?」
過去のループで倉庫に家の馬車入れておいて良かったわ。
ただし、馬はない。
「どうやって引く気だ?」
そこは、これ。
「そこは魔術マジ便利、って事で。」
魔術発動、クリエイト!
ゴーレムさんゴーレムさん、二頭、馬型で!
「なるほど、そういう、使い方もアリだな⋯⋯。」
「魔術、勉強しようかなぁ⋯⋯。」
しなさい。
これを馬車に繋いで。よし。
鈍いけど、歩くよりかは二倍以上速い。疲れ知らずだし、壊れたらまた作ればいいし。
「知ってて良かったゴーレムの作り方。いやあ、快適快適!」
「城の御者に⋯⋯。」
「魔の将じゃねーのかよ。」
おい。
「え、魔の将なのですか!?傭兵かと⋯⋯。」
「いや、まだ傭兵よ。コイツに誘われてね。着くまでに決めとけ、だってさ。」
「そうなのですか⋯⋯流石、竜を消し去るだけはありますね⋯⋯。」
「なんだ、お前そんな事をしていたのか。」
「ちょっとね。」
あれは少しはっちゃけ過ぎたかしら?
「それはそうと、お前は王領で何を学ぶつもりなんだ。」
「え、えっと⋯⋯。」
「色々あり過ぎて決めきれてないんじゃない?」
頷く娘ちゃん。まあ、そうでしょうねぇ。
「学園とか、ないの?」
「む、あるぞ。試験が必要だが⋯⋯。」
貴族とか平民とか関係なしに、入れる所らしい。ある程度の教養があれば、とか。さらに学びたい者は、その上に飛び飛びで進むんだってさ。
「なら、そこに入りなさいな。まずは基本、そこから学びたいものを考えればいいのよ。」
「そうだな。ふむ、頭は悪く無さそうだしな。」
「割と肝も座ってるわよ。」
攻撃された、さらに目の前で顔なじみを殺した私と、今普通に話してるのだし。
「試験、難しいのですか⋯⋯?」
「金の勘定は出来るか?」
「はい。」
「文字は?」
「読み書き、一応出来ます。」
「なら入れるだろう。」
「簡単だなオイ。」
「平民には少し難しいらしいがな。特に読み書きが。」
「ああ、なるほど⋯⋯。」
何処の国も話すだけなら出来る、ってのが多いからねぇ。何か商売をしている所の子なら、簡単なのは出来るみたいだけど。
「うーむ。」
「どうしました?」
「いやな、どうするかと。」
「何がよ。」
「時期だ。もうすぐ寒くなり始める時期だからな。この寒さを超えた時期なら、中途で入る事にはならないのだが⋯⋯。」
「ああ、中途入学になるのね。うーん、それなら待った方が賢いかも⋯⋯。」
「だが、それまでどうするか。なまじ預かった身、それまで適当に放り出す訳にはいかないからな。」
「とはいえ、城勤めにするととても中途半端になる、と。」
「わかっているじゃないか。⋯⋯グリディナ、一つ。」
「私が魔の将になれば、そこで預かれると。うーん。」
そういう手で来るか⋯⋯。
会話を聞いて、不安そうにする娘ちゃん。うぐぐ。
「はぁ、わかったわよ。私としても、メリットは大きいしね。」
しゃーない、やるか。ま、そうしようかな、とも思ってたけど。
「感謝する。」
「あ、ありがとうございますっ!」
「よかったな、これで問題は解決した。」
「はい!」
「とはいえ、私が受け入れられるかは知らないわよ。」
「大丈夫だ。その力を示せば間違いない。俺が保証する。」
「アッハ、魔王のお墨付き!そりゃあ頼もしいわね。」
なら、問題ないか。
「私の所に来るのなら、厳しくやるからね、覚悟しなさい。」
「は、はい!お願いします!」
とりあえず入学して困らない様にはしましょ。
「ところで、ですけど。⋯⋯王領までどれくらいあるのですか?」
「このペースだと、一週間かしら?」
「もう少しかかるな。多めにみて、二週間か。」
「⋯⋯馬車があってよかったです⋯⋯⋯⋯。」
「ね?」
「だな。」
二週間、ぼちぼちと行きますかー。
アンナちゃんの倉庫、既に何でも入ってる状態⋯⋯。あんなえもーん?