村を出よう!
さて、動こう?
おはよう、アンナちゃんよ!
まったく、昨日は散々ね!
あの変態め⋯⋯。
「おはよう、変態。」
「⋯⋯おはよう、グリディナ。」
とりあえず朝食。適当に目玉焼きとトースト。あとサラダ。
「いただきます。」
「頂こう。⋯⋯やはり美味いな、城の」
「変態に仕える趣味は無いわ。」
「そうか⋯⋯。」
こいつもう堪えてねえ。
「ところで。」
「なんだ。」
「ヌいた?」
「ブフォッフ!」
うわ、吹くなよ汚いわね。
「ゲフォッ、ゲッホ!な、何を言ってる!」
「あれだけ散々揉みしだいておいて、抜かないとかそれもそれで失礼ね。」
「そういうものなのか!?」
違います。
「この⋯⋯!」
「変態が何か言っても変態としか思えませんわぁ?」
変態!変態!変態!
「ぐぐぐ⋯⋯!」
フン。
「さっさと食べないと冷めるわよ。」
「お前なぁ⋯⋯。」
完食。紅茶でも飲もう。
「ご馳走様。⋯⋯なんだかんだで、俺の分も淹れるんだな。」
「あら、要らなかったかしら?」
「いや、貰おう。」
はい。
「⋯⋯美味い。」
「それはどうも。」
しばらくティーブレイク。
「ところで、だ。」
「何。」
真剣な顔で、何かしら。
「これからの事なのだが⋯⋯報酬の支払いの為にも、王領まで来てもらいたい。」
「そうね。こちらで入手した遺物の精算もあるし、それは考えていたわ。」
この変態と共にってのが不安だけどね!!
「それと、もう一つ。」
「なに?」
「実質的な問題として、だ。魔の将が居なくなった。これの後継になる者がだな、未だ育っていないのだ。」
「ほうほう。」
「お前の魔術の知識、力。他の世界で魔の将をしていたと言うのも頷ける物だ。⋯⋯故に。」
「魔の将をやれと?」
えー。考えてはいたけどこの変態だしなぁ⋯⋯。
「なに、次代の者が育つまででいい。何なら、お前が育ててもいい。」
「私としては、色々と調べたい事もあるのだけれど。」
「魔の将になれば、人を使ってもいい。魔獣に関して、アイツも調べていたから資料もある程度揃っているだろう。」
「報酬は。」
「月毎に支払われる、将としての給料だ。そして禁書庫への立ち入り許可。」
まあ、それなら。
「いい条件ね。⋯⋯但し、問題が一つ。」
「なんだ。」
「この変態が問題だ!」
「気にするな!」
「するわ!」
このやろー。
「コホン。⋯⋯まあ、なんだ、到着するまで考えておいてくれ。」
「お前のそれを治してからな!」
本気で切り落としてやろうか。
「魔王として子孫を残すのは重要な事だ!」
「私をその範囲に入れるな!」
こいつもう開き直ってやがるわ!
「まあ、いいだろう、そろそろ出発するぞ。」
「ッチ、わかったわよ。」
しゃーない、出るか。
「世話になった、村長。」
「いえいえ、こちらこそあまり饗せず申し訳ごさいません。」
「いや、いい。調査隊の件については、また連絡する。」
「ええ。お待ちしております。⋯それでですな、一つ、お頼み申したい事が。」
「なんだ。」
「この娘に、学びの機会を与えてやって欲しいのです。」
あ、娘ちゃん。
「学びの機会?」
「今回の竜の騒ぎ、また魔獣、と呼ばれるモノについても、我等は全く関知しておりませんでした。⋯⋯やはり、この村の中だけでは得られる物も少ないのでは、という話が出ましてな。」
「なるほど、試しにこの娘を外に出してみる、という訳かしら。」
「ええ、左用にございます。」
いいんじゃない?外を知る事はいい事よ。
「ふむ⋯⋯。わかった。」
「ありがとうございます。何卒、この娘を宜しくお願い致します。」
「⋯⋯お願い致します。テルシエ、と申します。」
「よろしく。」
「よろしくねー、娘ちゃん。」
よっしゃ、変態の犠牲ゲット!
「⋯⋯それでは、出発しようか。ではな。」
「良い旅路を、お祈り致しております。⋯⋯皆の者。」
村から出るよ!
おや、歌で見送りかしら。
いいわね。
「出立の歌、ですね。」
「そうなのか。⋯⋯いい歌だ。」
歌に見送られて、いざ、王領へ!
変態の矛先をそっちに向けるのだ!