銀の扉。
扉に入ろう!
はろはろ、アンナちゃんよぉ。
扉、くっっそ重い!なんなのよこれ!
「うぐぐぎぎぎぎ⋯⋯!」
ちょっとは動くけど、ぜんっぜん開かない!
「⋯⋯押してダメなら引いてみる、かしら!」
引く取っ手がない!
「こんの、なんなのよこれっ!」
蹴っ飛ばす。揺れるけど開かない!
「あー、もー。吹き飛ばすか。」
爆破するか!
魔術発⋯⋯!
「それは引き戸ですよ。」
⋯⋯?
「誰?」
とりあえず、引き戸ってことで⋯⋯。
あ、開いた⋯⋯。
がっくし⋯⋯。
「完全にアホやったわね⋯⋯。」
こういう扉って普通押し扉なのに⋯⋯。
お恥ずかしい限りで⋯⋯。
「ま、まあいいや、開いたし入りましょ、うん。」
さっきの声も気になるしね。
さ、さあ、さっさと入ろう!
銀の扉、その内部に侵入!
銀色の通路だ。けど、眩しくはない。
後ろ、扉が閉まる。⋯⋯戸袋の所、なにか模様があるわね。
なにこれ。これも銀色で書かれた⋯⋯眼?
怪しいわね⋯⋯進めばわかるかしら。
てくてくと進む。
なんか、空気が変。澄んでいるというか⋯⋯清浄というか⋯⋯。
ここ、地下深くよ?
警戒しつつ、進む。
壁、銀色だけど、何か書かれてる。模様?絵?
見にくい⋯⋯。銀に銀で書くんじゃないよ!
うーん、よく見えない、これ、竜?
わからん。
あ、奥に開けた場所があるね。
そこまで歩く。
「到着、かしら。」
開けた場所。銀色の広間。止まった歯車、止まった色々なよくわからない機構が壁を覆い尽くしてる。
天井には、扉みたいなのがついてる。開くのかしら。
そして目の前、あれは⋯⋯祭壇?
そして、祭壇の前で何かをしている女。
青い髪の、女。
「扉は開けられた様ですね。」
振り返り、こちらを向く。
「ええ。⋯⋯先程の声は、貴女?」
「そうですよ。神に見出されし者。」
ぞわり。
「貴女は、何者かしら。」
「私は⋯⋯そうですね。レイラ、とでも。」
偽名か。
「私は、グリディナよ。」
偽名で返す。
「存じております。シャムシャラの巫女。」
ぞわぞわ。
「何者よ。」
近づいてくる。青い髪、青い眼、眼鏡。
「そうですね。知の探求者とでも。」
白いブラウスに黒のネクタイ、青い斜めに切れたドレスのスカート、細身の黒いパンツスーツ。
「ああ、それほど警戒はしなくても宜しいかと。今はまだ、相対する時ではないので。」
「今はまだ⋯⋯?」
パンツスーツが見える左脚の根本。斜めにベルト、そこに剣が挿してある。
反りのある、剣。
「ええ。それについては、教えられません。今はまだ。」
何者よこいつ⋯⋯。
「それよりも、ここが何なのか知りたくありませんか。」
「⋯⋯そう、ね。それは知りたいわ。」
ここで何かをしていたのだから、わかるのでしょうね。
「ええ、では教えて差し上げます。」
はい。
「ここは、とある神の封印場所。」
「え、えぇー⋯⋯。」
神域じゃないのよ⋯⋯。
「精霊神が出現する、その前。最高神すら、居ない時。」
うん?
「全てが滅した、時の前。」
「どういう事⋯⋯?」
「世界は、数度滅んでいのです。遺跡は、その名残。」
「世界は移り変わる⋯⋯?」
さっき見た、家の中に残ってた本にも書かれてたわね⋯⋯。
「ええ。⋯⋯この遺跡に眠るのは、数度前の世界に居た神。⋯⋯いえ、神となったのはその後の世界ですので⋯⋯住民、と。」
「過去に活躍した者が神話に出てくる、っていう説もあったわね。」
「ええ、ええ。まさしく、です。」
「何故、それがわかるのよ。」
判明しているのなら、何故発表しない?
「私は、ただ集めるだけ、です。発表するのは、人が行わなければ。」
「⋯⋯つまり、貴女は人ではない訳ね。」
「さあ、それはどうでしょうか。⋯⋯少なくとも、ここに眠る神ではありません。」
そうかい。
「他に、質疑はありますか?」
「ここに眠るのは何。」
「機構神。です。」
聞いたことのない神。
「今の世界では、目覚める事は無いでしょう。」
そう。
「目覚めの時は、連鎖して他の神も目覚めるでしょう。そして、世界は赤く染まる。」
「赤く⋯⋯。」
「これ以上は、教えられません。」
「⋯⋯そう。ありがとう。」
「いえ。これもまた、私の務めですから。」
務め、ね。
「さあ、お帰りなさい。貴女はまだ、ここに来るべき時ではない。」
「来るべき時、というのは。」
「ふふ。その時は、いずれ。⋯⋯これを、お持ちなさい。」
渡されたのは、銀色の小さな歯車。
「それでは、ごきげんよう。出口まで、送ります。」
魔術!?違う、魔術じゃない!なにこれ!
「ああ、一つ教えます。着いたら、戦闘の準備を。お仲間が、危険ですよ。」
「何⋯⋯っ⋯⋯⋯⋯!!!」
転移する、瞬間。振り返り、見て。
青い髪、赤い眼。冷徹な瞳で、観る女。
レイラ、ね。
きっと、あれは天上の⋯⋯。
もしかしたら、どこかで逢っているかもしれないね?って、誰かが言ってた気がするね。