うわぁ、魔王。
魔王があらわれた!
こんばんばばーん、アンナちゃんでーすわー。
長が来たと思ったら、魔王を連れてきた。
「なんでここにいるのよ。」
「用事でな。」
「あ、そう。」
なんの用事かは知らないけどどうでもいい。
「⋯⋯貴様こそ何故ここに居る。」
「お前に話す義理もないわ?」
「⋯⋯そうか。」
ええ。
「貴様の事だ、大凡適当に来たら着いたのだろうよ。」
「知った様な口で言うじゃないの。」
あってるけど。
「で、さぁ。私はそこの長に用事があるのだけど。」
「そういえば、呼んでいたのだったな。」
「⋯⋯用事とは一体何用でしょうかの。」
「コレ。土産よ。」
はい、お仲間の首。
「⋯⋯っ!なん、とっ!」
「言っておくけど、狙ってきたから殺し返しただけですから。恨むのは筋違いだからね。ま、恨まれて狙われたらまた殺すだけですけど。」
死ぬ覚悟ぐらいしてかかってきなさいな。
「あと、あの泉にいたヤツの残骸もやるわ。ほら。」
灰になったアレ。ほんの少し鱗とか牙とか形残ってるからいいんじゃね。
「⋯⋯これは、ドラゴンか。」
「正解。しかも魔獣。」
魔石を見せる。
「ふむ⋯⋯。」
魔王が何か考え始めた。
「それでー、村に来たら報酬くれるって言うから来たんだけど。」
「そ、それは誰が⋯⋯?」
「コレ。」
首を指す。
「⋯⋯そうですかい。わかりました、竜の討伐報酬を⋯⋯。」
「聖地を護ったっつー報酬もあるらしいねぇ?」
「ぐぅ⋯⋯この馬鹿息子め⋯⋯。」
死人に鞭打つねぇ?
「で、なにをくれるのかしら。」
「ううむ⋯⋯。」
正直、この村に欲しいものなんてないんだけどね。ほら、貰えるものは貰っておかないとね?
「食料は。」
「報酬分も出せるかしらぁ?」
「⋯⋯男。」
「ナメてんの?」
「宝石⋯⋯。」
「いくつ持ってると思ってんの?」
「水⋯⋯。」
「は???」
「薬草⋯⋯。」
「摘めるからね???」
「うぐぐ⋯⋯。」
「ないわよねぇー。」
こんな辺鄙な村なんて風景くらいしかないのよね。
「す、少し相談をさせてくれるかの⋯⋯。」
「いいわよー、老体がポックリ逝く前に決めてねぇ?」
決まらねぇだろーなァ!
「待て、亡霊。」
なにかしら、魔王。
「貴様は傭兵なのだな?」
「まあ、ねぇ。登録してるし。」
「なら、依頼だ。成功したらこの村からの報酬も併せて私が払おう。」
「ま、魔王様⋯⋯!」
「へぇ、太っ腹ね。で、依頼内容は?」
内容聞いてから決めましょうね。
「この付近に、古い遺跡があるらしい。それの搜索と探索だ。」
「遺跡探索、ね。どんな遺跡をお探し?」
私の記憶にあるかもしれないかもしれない。
「精霊王時代の遺跡だ。地下洞窟を利用した街のな。」
「へぇ⋯⋯ロマンあるじゃん。」
面白そうだ。
「目的は魔獣関連?」
「ああ。大本命は、シェイドクインに関するモノ。」
「サブで、魔獣に関する記述、かしら。」
「ああ。これらの発見度合いによって成功報酬が変わる。」
「一つごとに、って所かしら。」
「そうだ。また、見つけた魔獣は極力殺す。どこまでのものが出現しているか確認したい。」
「それも報酬に入る?」
「そうだとも。討伐したモノに応じてな。どうだ、受けるか。」
ふむ。
「いいねぇ、乗った。」
暴れて、ロマンを追い求める。しかも実用的っていうね。アリじゃあないの。
「よし。宜しく頼むぞ。」
「りょーかい、依頼主さん。」
「一先ずはここで一泊しようと思う。明日から始めるぞ。」
「りょーかい。」
「よいかな、長よ。」
「え、ええ、こちらとしても、とてもありがたい申し出ですので⋯⋯。」
「ならば、適当な空き家はあるか。」
「ありますが⋯⋯。」
「では、案内しろ。今日はそこに泊まる。」
「あれ、お供は居ないのかしら?」
「居るぞ。今は外で探索して貰っている。」
「なるほどね。」
おーけー。
何か言いたげな長を説得して、空き家に。
「⋯⋯まって、私も一緒に泊まるの?」
「部屋は別になるだろう。」
「⋯⋯いやまあ、うん、そうだけど。」
魔王と宿泊かぁ。⋯⋯ま、いいか。
「襲いはせん。」
「斬るからね。」
「わかっている。」
まあ、うん、信用しとこう。
部屋もらって、軽く掃除して。
水場があるのね、ならそこで身体拭こう。
周囲を確認して、服脱いで。
入り口から見えない所に行って。
お湯にして、濡らしたタオルで身体を拭く。
まあまあ、すっきり。
「て、オイ。」
「む⋯⋯?」
私に気付かずに身体拭いてやがるよこの魔王。いや気づかねぇはずはない。だって魔王だし。
「お前わざとだろう。」
「いや、気づかなかった。すまない。」
「何ジロジロ見てんのよ。斬るぞ。」
「すまない。⋯⋯良い身体をしている。」
「テメェのその棒ぶった斬ってやらァ!!!」
剣を出して斬りかかる。チッ、避けたか。
「そこで振り回すな、危険だっ。」
「テメェが見てるからだろうが!」
「おい、やめうぉっ!?」
「のわぁっ!?」
こけて私も巻き添えにしやがった!つーか重いわ!
「⋯⋯ったぁ。っ、おい、どけ。」
「く⋯⋯。⋯⋯⋯⋯すまない。」
オイ。でけえなオイ。
「さっさと、退け!変態が!」
股を蹴り飛ばす。うわぁぐにってした、固かった。
「そこで悶絶してろダボが!」
部屋に帰る!
⋯⋯はぁ。あーもう、恥ずかし⋯⋯。
もういい、寝る⋯⋯。
昔を、少し思い出しちゃったじゃないのよ⋯⋯。
死ねっ!
変態魔王は悶絶している!
つーかアンナちゃんの胸揉みやがったな貴様。モノを腹にあてやがったな貴様。つーか押し倒したな貴様!
思い出してもう一撃入れに行くアンナちゃんであった。