まさかの。
戦おうねー。
こんにちは、アンナちゃんよ。
幌のかかった大きな檻。その中に研究用の捕獲した魔獣がいるって話。私は、それと戦闘をしろ、と。
まあ、とても面倒くさい話で。
「さあ、幌を外せ。」
研究者がわらわらと、幌を外す。檻は⋯⋯鉄板で覆われてるのね。
「それ、幌の意味ないでしょう⋯⋯。」
「⋯⋯同感だ。」
「いえ、完全に暗闇にしないと暴れるので⋯⋯。」
確かに、中でバタバタしてる。元気がいい事で。
「結界よし、避難よし。さあ、始めるぞ。」
「いつでもどうぞ。」
流石に剣は抜いておくか。片方だけ。
「かなり危険な魔獣なので、ダメだと思ったら直ぐに離脱してください。いいですね?」
「わかったわよ。」
かなり危険、ね。何が出るのかしらー。
「では。⋯⋯解錠!」
ガチャリと。魔術で鍵が開けられて。黒い靄が溢れ出てきて。
飛び出して来たのは⋯⋯。
「⋯⋯⋯⋯なにこれ。」
草、蔦、女の身体⋯⋯。
「ドライアード⋯⋯?」
「似ていますが、アルラウネかと。」
うわぁ。面倒くさいの来ちゃったわぁ。
「KYYYYYYAAAAAA!!!」
「こんなものどこで捕まえてきたのよ⋯⋯。」
「北の、大森林近くで。⋯⋯罠にかかっていたのです。」
「なるほどドジっ子⋯⋯。」
それにしても、このアルラウネ。身体が黒くなってきてる。魔獣になって、長いのかしら。
「HYAAAAAAA!!」
こっちを見た。うぞうぞと進んできた、蔦伸ばしてきた!
「ハァ。⋯⋯魔石は、あるかしらね⋯⋯!」
さー、殺るかー。
「一先ず、燃えなさい。」
魔術発動、ブラストフレイマ!炎をぶちまける!
「さらに燃えなさい。」
魔術発動、炎の弾!沢山出すわよ!
「もっと、もっとよ。」
魔術発動、ラヴァフレイ!地面が焼ける!
「炎よ、もっともっと燃え上がれ!」
魔術発動、風の刃!渦を巻くように!
「そして全てを焼きつくせ!」
魔術発動!ドラグヴォルケーノ!竜すら焼く紅蓮の炎!
「さあさあ燃えろ!炎は竜巻の様に吹き上がるっ!」
周りの空気すら焼き尽くす!
「ぐ、グリムディア嬢⋯⋯やりすぎでは⋯⋯。」
「そうかしら?」
大変派手な事をしましたが。
「⋯⋯やっぱりねっ!」
炎の中から、鋭い枝が飛んでくる。はあ、やっばり。
「魔獣って、魔術あまり効かないのよね⋯⋯。」
それに伴う現象にはダメージを受けるけど。風だと、鎌鼬みたいな切断力。水だと、圧力や窒息。炎だと、熱と窒息。
「なんと⋯⋯その様な能力が!」
「初めての発見だ!」
「いやいや、実際に戦ってる人ならわかるわよ、これ。」
それにしても。
「とはいえ、ここまで熱せられたら大体の魔獣は死ぬのだけどね⋯⋯。」
どうやら強いらしい。ふむ。
炎を消す。ふーむ、表面だけ焼けてる。しかも、再生し始めてる。
「なーんか嫌な予感するのよね。」
とりあえず、剣で刻むかしらー。
片剣持って、突撃。
「邪魔な蔦ね!」
落としていくよ!
「AAAAAAAAAAAA!」
痛いかしら!ほらもっと落としていくわよ!
蔦を落として落として、近付いていく。
かなり近付いたね!
「ほら、もっと行⋯⋯ッ!」
⋯⋯嫌な予感ッ!咄嗟、横に飛び退く!
「⋯⋯!」
後ろから蔦と⋯⋯腕!?
「おいおい、マジかよ⋯⋯、面倒くさいわねぇ。」
全く同じ個体。前と後に。⋯⋯増えた、かしらね。
「ふーむ⋯⋯。」
どっちが本体。セオリー通りなら、後ろ。けれど⋯⋯。
ちらりと周りを見る。研究者も教師も慌ててる。そりゃあそうでしょうね。
「さてさて、どうすべきかな。こういう時は一体一に持ち込めばいいのよねぇ。」
やるとしよう。
「先ずは⋯⋯お前からっ!」
前!いくよー!
高速突撃!不意を突く!
「KYAH!」
魔術発動、風の刃!剣の周りを高速回転させて!
身体も、蔦も、反応できない速さで、その胸に!
「そうら、貫けぇ!」
ド真ん中、魔石がありそうな所をブチ抜く!
貫く肉、剣先に固いモノ、そのまま押し出す!
「魔石いただきましたわァ!」
これで⋯⋯!
「KHHHHH!」
違う、まだ、動くっ!?
「ッちィッ!」
横に転がる、地面から根が突き出してくる!あぶなっ!
「オイオイオイオイマジかよ!こりゃあヤバい奴じゃあねえかよ!ヒャハハハ!」
魔石、二つ以上持ち。
「いいねェ⋯⋯!」
蠱毒の王、モンスター!前にやられた奴とは違うけれど⋯⋯!
「楽しい、楽シイ、楽しいわぁ!もっと楽しませて!」
もう一本、剣を!双剣、構えて!
「いい練習になりそうね⋯⋯!」
アレを殺す為の、試金石になって貰おう。
「AHHHHHHH!」
左右から飛んでくる蔦、下から貫く根!
避けて、避けて、斬って、避けて!
「邪魔ッ!」
片方、蹴り飛ばす!⋯⋯下から、避ける!
「そうらッ!」
もう片方、もう一回貫こうかァ!
「HHHHHHAAAAAA!!!」
根、ふっといの!壁になるのねこれ!
「チッ、面倒ね!」
斬り倒す。向こう側には、いない!
魔術、探査!
「下ァ、見えてんだよ!」
魔術発動、アースピラー!地面ごと上に出してやりますわァ!
「ブレイク!」
ボロリと、崩れる!空中に投げ出される、化物!
「っふふ、フフフフフ!!」
後ろから迫る腕、それを取って。
「見えてんのよねっ!」
前に押し出す。目の前に、背中!
「さーァて!」
二閃!背骨に沿ってー!
「そろそろー!」
蹴って、回して、首をぐるりと!
「コツがわかってきましたわァ!」
首を掴んで横に引っ張って!
魔術発動、もっかいアースピラー!身体を上に打ち上げようかァ!
ずるり、と。
「上手に抜けましたァーーー!!!あっはははははは!!!!」
あ、でもコアがない。身体の方かな!
落ちてくる身体、伸びる蔦!もう片方が空中で掴んで引き寄せやがりましたわ!
あ、混ざった。一つになったわ。
「やっぱりコアがまだ二つはあるのね、ふふふふふ。」
まだ楽しめそうね。
「とはいえ、アレよりかは確実に弱い。」
モンスターにも差があるみたいね。
「となると、コアの数かしら。」
ありえそうね。
「なら、コアを減らしたら弱くなるのかしら!」
試して見る価値アリですわね!
「けど、そろそろ飽きてきたのよね。」
どーしよかな。
「⋯⋯よし。殺しましょ。」
さっさと殺すに越した事はない。
「さあさあ削りますわよ!」
魔術発動、風の刃!沢山出して!
「その肉、削ぎ落としてあげますわ。」
さあ行け!一斉発射!
「IAAAAAAA!!!」
蔦で防ぐか、けれど!
「それでは前がみえないわねぇ。」
防ぎきったら、私が居ない。
風で自分を上に、化物の真上、直上!
ニタリと嗤って。
風を私に、真下へ!高速で落下!
風の刃を纏ってー!
「HY⋯⋯!」
「サヨウナラ。」
頭から、削り舞い上げ粉微塵!
そのまま地面も少し削って、着地!
落ちてきた魔石⋯⋯二つか。それを回収して、と。
「貴様の命、私が頂きましたわ。」
終了ー!
あー疲れた。
「ふぅ。」
一息入れて。
周りを見渡す。唖然とする、クラスメイト。口が開いたままの、教師。ペンを落としてる、研究者。
⋯⋯あー、ヤバい。途中からここが学園だって事忘れてたわ⋯⋯⋯⋯。
観戦してるのが沢山居ることすっかり抜けてましたわ。
てへぺろ。
「⋯⋯どうしよ。」
つーか屋根の上にサボり魔先輩もいるし。
もっと言うと、窓という窓から沢山の生徒と教師が⋯⋯。
「⋯⋯よし。」
逃げるか!右腕をんっ!と上げてンッ!と下げる感じの!
「たすけてラディーちゃん!」
転移!バイバイ!
一日立たずとして黒の森に出戻りするわよっ!
あはははははは!
( ゜∀゜)o彡゜
( ゜∀゜)o彡゜