黒き災厄、喰らいしモノ。
世界に産まれ堕ちるは、蠱毒の果て。
やっほう、アンナちゃんよ。
もりのなかにいる!
でかい反応に向かって、森を進んでいる訳なんだけど。
「……おかしい。おかしいわ。何故虫の声すら聴こえない……?」
虫が鳴く音、地を這う音、木々を飛び抜ける音、地中を進む音。
その全てが聞こえない。
魔術、探査。…………おかしい。何も反応しない。あるのは、奥のデカい反応のみ。
……とても、嫌な予感がする。今までこんな事は無かった。この世界が特殊だから?
それにしては、異常すぎるわ。
「……ここで進むか、引き返すか。」
ここで決めないと。
「……引き返すゥ?私が?突き進むしか能のねェ私がかァ?」
そんな選択はありえねー。
「ふふ、そうね。私には進む事しか無い。」
「そうだとも、進もうじゃあないか。輪廻の果てまでなァ!」
「ッフフ。よし、行くわよ。」
目標、奥のデカい反応。
森を掻き分け奥へ、奥へ!
「……ここがあのナントカのハウスね。」
森の奥、小さな広場。獣の死体が散乱して、ひどい臭い。なのに、死体に虫が湧いてない。
その真ん中に、何かの……繭?
「デカい、わね。」
大体、5mは優にある繭。
「コイツから逃げて来てたのね。」
辺りに動くモノの反応無し。
「よし。壊すかな。」
孵化する前に、ね。
剣を握って、いつでも斬れる様に。
魔力を待機状態に。
「さあ、行くわよ。」
禁術発動。ブラスティラヴァ!
噴き上がる炎に呑み込まれる繭!
「……。」
まだ、形は残っている。
「……。」
まだ、溶けはしていない。
「……!」
まだ、壊れ……っ!
咄嗟に飛び退く!一瞬前にいた所に、巨大な……顎!?
「……おいおい、マジかよ……。」
繭が壊れて、黒い靄が噴き出す。中から出てくる、人など優に握りつぶせるほどの右腕。その先に付いた狼の顎。
太く、しなやかに、異形の姿をとるワームの左腕。その先に付いた、巨大な鋏のようになった鳥の嘴。
強固、頑強、筋肉の塊が下半身を形成し、その先に付くのは巨木かと見間違えるほどの猪の四本脚。
上半身は筋骨隆々、爛れた皮膚が禍々しいオークの身体。
そして頭は鳥の羽が埋め尽くし、その中から巨大なうさぎの一本角。狼の口に、禍々しく乱杭歯が生える。
羽の合間から見えるは、歪に肥大化した片目、もう片方の眼窩は角が飛び出す。
立ち上がった姿は木々を突き抜け、動けば木々をなぎ倒す。
「なに、これ。」
キマイラ?いや、違う。キマイラならもう少し整っている。
探査に反応。
「コイツ、魔石を六つ持っている……?」
神話に出てくる、魔獣。その中でも、暴走、暴食、災厄となるモノ。
「おいおい、まさか……!」
魔獣同士が喰らい合い、蠱毒のように力をつけたモノ。
「蠱毒ノ王……。モンスター……!」
青が危険視したシロモノ。
「ッフフフフフ!」
こちらを認識する、化物。
「相手にとって、不足ナシ!」
これ、これだ、これこそが!
「私の求めていた戦い!」
「GGGGGGGGGGGGGGGHHHHHHHHHHHRRRRRRRRRRRRAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!」
世界に響く、絶望の声!
「いいねぇいいねぇいいわねぇ!さあ、殺ろうか!」
私の方向に踏み出すモンスター!
「そうらァ!先ずはこれよ!」
禁術発動!神鳴!
禁術発動!ダイダルウェーブ!
禁術発動!ブラスティラヴァ!
「ッハ!効いてねえわ!」
駄目か!表面焼け焦げたけど、効いてる感じしないわ!
「んなら、これはどうかしらァ!」
剣を!そして、魔術発動!風の刃!
脚を狙って斬り、抉る!
「ほぅら!一本貰いっ!」
斬り飛ばす!
「どうか……なぁっ!?」
斬った所!肉が蠢いて!再生してるっ!?
「……けど、飛ばした方は崩れ落ちると。」
ボロボロの肉塊に。ふむ。
「…………アッハァ♪勝機、見えたりィ♪」
要は……あれね。
「ミンチにしてあげる。」
さあ、やるよ!
モンスター、それは世界の怒り。