お話したー。
色々なお話。
どうも、アンナちゃんですわ。
「……アンナ。」
「おねーさま、凄いね……。」
「大変だったでしょう……。」
昔話が終わったんだけど……何故泣く。
「大変というより……楽しかったですけどね?」
「しかし……。」
「しかしも何も無いですわ。これは私が楽しかった思い出ですの。悲劇ではなく、喜劇ですわ。」
だから、憐れむんじゃない。
「憐れまないでくださいな。悲しまないでくださいな。私の旅路を愚弄しないでくださいまし。」
「……すまない。」
まったく。
「まあ、いいですけど。ところで、お腹が空きましたわ。」
「そうか、もう昼か……食事にしようか。」
「おねーさま、一緒に食べましょ!」
「ええ。」
家族と食べるのも、久々な気がしますねぇ。
食事。うん、ここの家のご飯は美味しい。
「そういえばおねーさま、お話の中になかったけど……この世界に来る一つ前はどんな感じだったの?」
それを聞くかー。
「……ふふ。そうですね……。」
くろーい笑み。
「沢山暴れて、遊んで、暴虐の限りを尽くしましたわ……。お姫様を攫ってみたり、勇敢な戦士を弄んだり、国を滅ぼしてみたり。パブリックエネミー、というのをやってみましたとも。」
「う、うわあ……。」
ドン引きですよねー!
「物語に出てくる悪い竜みたいでかっこいい……!」
「えっ。」
えっ。
「おねーさま、そのお話もっと聞かせて!」
「えっと……。」
目ェキラキラしてやがる。目線で両親に助けを……うわ、目逸らされた。
「し、食事中だからね、後で……ね?」
「約束!」
「わかりましたよ……。」
まさか食いつかれるとは思わなかったですわ……。
ええ、ええ、ご飯が終わったら速攻でせがまれましたがなにか!
まったく。
で。
ようやく本題の、魔獣について勉強する事に。妹も一緒で。
教師役は母上。
「では、魔獣について簡単に話しましょう。……アンナは、魔獣がどんな物かわからないのよね?」
「ええ。名前は聞いたことあるけど、それも神話でしか。見た事は一度もないわ。」
多分。
「なら見た目からね。魔獣は……基本的には、真っ黒な体に赤い目をした獣よ。」
「基本的には?」
「ええ。たまに、獣の体に黒い靄が纏わり付いているだけだったりするわ。目は赤くなっているけど。」
「既存の獣に……ふぅむ。」
「おねーさま、どうかしたの?」
「いや、なんでもないわ。」
なかなか危険な感じね。
「次は能力について。基本的には姿をとった獣と同じ様な行動、攻撃をするわ。けれど、魔獣以外に対して好戦的で、普通の獣とは段違いの力を持っているのよ。」
「それはなかなかたの……大変そうね。」
「……おねーさま。」
「なにかしら?」
しれっと。
「コホン。まあ、いいわ。先程行動が普通の獣と同じだと言ったけれど、一つだけ違う事があるわ。」
ふむ。
「方法は不明なのだけれど……獣を襲って魔獣を増やす、という行動ね。」
「……で、その獣がさっきの靄が纏わり付いた魔獣になるわけね。」
「ええ。そんな力を持っている訳だから、危険だと判断されているのよ。」
「そうなのね。……ところで、そうね……角付きうさぎの魔獣を倒すのに、どれだけの人がいるのかしら。」
「それは……。」
「それについては、私が。」
おや、父上。書斎に行ったと思ったら。
「そうだな、角付きうさぎの魔獣で……兵士一人二人程度だな。」
「それは訓練された兵士?新兵?」
「訓練された兵士だ。」
「狼のなら?」
「一頭で小隊はいるな。」
「ふーん……なかなか強いのね。というより面倒な脅威、ね。」
「ああ、とても面倒だ。しかし。」
しかし?
「強い個体から、魔石が取れる。かなり純度の高い奴がな。」
……ほう。
「最も、一体につき一つあるかないか、だがな。」
「もしかして、一攫千金を狙った奴らが。」
「ああ、いるな。それもかなり。犠牲者も、かなり。」
ふーむ……。
「ああそうだ。先程書斎からこれを取ってきてな、見せよう。」
「なにそれー?」
「魔獣の姿を写した、魔石だ。一攫千金を狙う奴らがな、撮ってくるんだよ。」
「高く売れるのね。」
「ああ。」
さてさて、みせて。
「では、いくぞ。魔石よ、記録せし世界を開け!」
魔石から出る光、壁に映る映像。
「……草原?」
「何もいないよー?」
「まあ、まて。もうすぐだ。」
しばらくして、うごめくモノ。
黒い体躯、赤く光る目。
狼の姿をとるそれは……。
「…………。」
どこかで見た。黒い獣、赤い目、靄、島に住む、妙な獣、北、北、北……!
「絶島の獣……!」
あれと同じ!ということはやっぱりヤバいやつだわ!
「アンナ、今、なんと。」
「聞き間違いじゃなければ、絶島、と聞こえたのだけれど……。」
「え?絶島がなにか……?」
問題あったかな?
「どこにあるのか、知っているのか!?」
「教えなさい!」
え、なに。
「教えるのはいいけれど……船では行けない、世界の果てですよ?」
最初に行った時は、転移だったかしら。しかも魔力切れて戻れなかったなぁ。
「そう、か……。」
「絶島に行きたいのですか?何故?」
「魔獣を止めるための何かが、絶島にあると言われているのだ。」
「うーん……。」
あったっけ……わかんね。
「そこまで見てなかったわ……。」
「そうか……。しかし、絶島が本当にある事が分かっただけでも良しとしよう。」
「そうね。」
……絶島、魔獣が沢山居たけどね……。まあ、いいや。
「魔獣について、基本的には以上よ。何か質問はあるかしら?」
「いや、今はないわね。」
「なーい!」
「そう。なら、終わりにしましょう。」
おわったー。
そろそろ暴れたい……。