昔話をしようか。
アンナちゃん、お話する。
どうも、アンナちゃんですわ。
王都の屋敷で、絶賛家族会議中ですわぁ。
「何を落ち込む必要があるのやら。」
「アンナ、貴女が巫女になったという事もあるけれど……。」
「やはり、3000回以上も同じ時を廻っているというのは、な。」
「何か問題でも?」
「貴女の事が心配なのよ。」
……そう。
正直言うと、私に親だとか家族だとか、そういった情はもう、あまり残ってないのよね。
「御心配ありがとうございます。ですが。」
瞳の奥に宿るモノを見透す。
「憐れに思われる筋合いはありませんわ。」
「アンナ!」
「これは私の人生。私の道。数多の世界を垣間見ようと、それは私が決めた事。」
それが例え……だったとしても。
「故に、そのような目で見られる筋合いはありませんわ。」
だって。
「終わりの無ェ人生、楽しまなきゃ損だろうがよォ?」
瞳孔開いて、少し首傾げて、ニタリと嗤う。
「ナァ?」
あーあ、両親固まってらぁ。
「まあ、そういう理由ですので。暫くの間ですがよろしくお願いしますね。」
「……おねー、さま?」
おや、妹。話がわからずうとうとしてたけど起きてたのね。
「おねーさま、いろんな世界を旅をしてきたの?」
「そうよ?」
……お?目キラキラしてる。
「なら、どんな世界があったか聞かせて!楽しかったんでしょ!」
おおう……まあ、そうね。
「そうね……なら、少し長くなるけど……。」
簡単に、少し嘘を織り交ぜて。御伽噺といこうか。
「むかーしむかし、そう、一万と八千年ほど前……。とある国に少し性格の悪いお嬢様がおりました。」
昔はね。
「その国の事を憂いながら、けれど力はなくて。婚約者を取られまいと必死になっていた娘でした。」
あの時は本当に。
「けれど、人を惹き付ける才能を持った娘が現れて。婚約者を取られてしまいました。」
よくあるお話。
「お嬢様は取られまいとしていた行動が仇となって、国外追放となってしまいました。」
ここまではよくある。
「追放された先、行く宛もない森の中で。お嬢様はとある人と出会いました。」
「とある人?」
「ふふ。その人は、人の形をしていながらも人間ではなくて。翼の生えた、少々お堅い方でした。」
「魔族か……。」
「ええ。その方は言いました。ここで死ぬか、私と共に来るか。……お嬢様は、魔力だけは人一倍強かった為、それならばとついて行く事にしました。」
ここからおかしくなる。
「ついて行ったその先で、人では無い方達に教わりながら、翼の生えた方の助手の様な事を始めたのです。」
弟子とも言う。
「そこで数年を過ごし、魔術について少々詳しくなった頃。」
ここから。
「元居た国が、良く分からない理由で、人では無い者達の国に攻め込んで来ました。」
あれは難癖だったね。
「どうも、人では無い者達の王が色々な事の元凶である、という名目で。」
そんな訳ないのに。
「精鋭を集めた少人数の者達が、王を殺すべく来た訳です。」
「ふぅむ……。」
「その中に、お嬢様を追放した者達……そして、元婚約者と奪った娘がおりました。」
あれは傑作。
「人では無い者達の強い者達が、それを止めようとして。あえなく殺されてしまいました。」
問答無用の。
「説得に行って殺された者達の中には、翼の生えた方もおりました。」
負けるんかい!ってなったね。
「お嬢様はその方の後釜として、選ばれて。相対する機会を得ました。」
もう一度、話をしたいと。
「しかし、彼等は言いました。貴様、我等を愚弄した上、国にまで敵対するか!と。」
傑作だよ。
「お嬢様は、その言葉で落ち込みながらも。この戦いに意味などないと説得を試みました。」
本当に。
「しかし、彼等は聞く耳を持ちません。集団で襲いかかってきます。」
あの時は大変だったわ。
「仕方なしに、お嬢様は迎え撃ちます。相手は見知った顔。けれど、お嬢様を殺しに来ています。仕方なし、仕方なしに。一人、焼き尽くしました。」
クソガキを。
「彼等は激昂します。見知った顔すら殺すのかと。攻め込んでいるのは彼等なのに。」
理不尽ね。
「そうして襲いかかり、集団で斬りかかり。お嬢様は倒れます。」
「っ……!」
「お嬢様は、暗転する視界の中で思いました。次があるのなら、もっと、と。」
次があるのなら。
「神でも悪魔でも精霊でも、なんでもいい、次の機会を、と。」
もっと。
「もはや視界も感覚も無くなったその時、声が聴こえました。」
うまくやる。
「汝、永遠の時を過ごす覚悟はありや?」
永劫を。
「汝、同じ時を廻る覚悟はありや?」
生きてやると。
「お嬢様は、その言葉に頷き。」
輪廻の果てまで。
「ふと、気付いた時。神殿で祝福を受けた時に戻っておりましたとさ。」
ここから、お話が始まっていく。
「これは、永遠、永劫を廻る者の物語。」
幾多の世界を。
「数多の世界を、旅するお話。」
幾百、幾千、幾万と。
「ここから掻い摘んで、お話致しましょうか。」
どーれーにーしーよーうーかーなー。
「長く、永くなりますが。よろしいですか?」
「……聞こう。」
「聞きましょう。」
「聞く!」
「……では、お話致しましょう。世界を、自分を、壊す物語を。」
さあ、はじまりはじまり。
これ、一話かな???
尚、今は書かない。この周が終わったらぼちぼちとね。