78話 決着と暴走
何とか年内最後に投稿できました!
再度再開された試合は、殆ど俺優位の展開になっていった。
相手方は、俺を簡単に補足できなくてった事で慎重になって動けなくなっていく。一方の俺は1人だから自由に動けるし看破の眼で相手の位置や動きが丸分かりだから楽だ。っと言っても、俺は俺で更新されたステータスの数値に翻弄されて上手く連続した動きができないで居た。
無駄に狙いを外したり、動きも大振りになってしまう。それでも何とか魔力の使い方は変わらなかったから俺の方がヤバくなる前に、物体操作で銃を動かし相手を撃つ。
実際に、動かない的を狙い撃つよりも動くモノを撃つのはこんなにも難しいのかとも思う。
物体操作が無かったら、本当は俺が劣勢になっていてもおかしくはなかったからな。
相手方、オービス側の人数が半数になってきた頃に状況がまた変わってきた。
俺が徐々に動きで押される様になってきたからだ。体力が無くなってきたのでもなく、大きな怪我をした訳でもない。逆にオービス側の動きが良くなって来たのでもない。まぁ練度の低いヤツが先に俺に撃たれて練度の高いのが残ってるからそうも見えるがな。
俺が押されるようになってきた原因、それは俺の体にまた激痛が走るようになって来たからだ。
神爺さんにされた体の調整が、終わって無かったのか何なのかは分からない。でもこの体中の痛みはあの時の痛みと同じだ。唯一意識が持って行かれないだけ助かっている。それに何とか動けるしな。
だが、いよいよ動く事も魔力を使う事も厳しくなってきた。
身体の痛みが体を巡り蹲ってしまう。魔力を使おうとしても意識が痛みに負けて上手く使えない。
今まで物体操作で浮いていた2丁のP90はその辺の地面に転がっている。それを俺を取り囲もうとしているオービスの側の兵士たちが別々に拾い、逆に俺に銃口を向けている。俺以外の使用はできないんだけどな。
審判側は試合自体を継続させている。試合を終わらせるには何方かが負けを認める事で決着がつくからだ。
「ふははは!!
如何したのかね?怪我でもしたのかな?そんな所で蹲ってしまって。
この試合を棄権してさっさとココから去ればゆっくりできるぞ?」
ほぼ動けない俺を取り囲んで、しかも数的有利に安心したのか。奥で隠れていたオービスが俺の前に悠然と姿を現した。
「うっ煩い・・・この・・・・・間抜け野郎が・・っ!」
「面白い!
では私が間抜けだとしたら、貴様は何なんだね?」
「・・・その間抜けに・・・・・お仕置きする者だ!」
俺を取り囲んでいる者たち以外に伏兵が居ない事を確認した俺は、残った意識と体力と魔力を振り絞り。蹲った状態からブレイクダンスのエアートラックスの様に腕1本を軸に横回転し、残った腕でMP5SD6を保持しで俺を取り囲む奴らに撃ち込んでいく。
「・・・ッグ!」
「・・・ッチ!」
「・・・クソ!」
蹲り、動けないはずの俺が突然動き出したのに対して、オービスたちの兵士は対応しきれない処か俺を取り囲んだ姿のまま撃たれていった。
しかし、オービスだけは遅れながらもそれに対応しようと動いて居た。
「きっ貴様はだ「さっさとヤらっれろ!」」
此方に向けつつあった銃口をエアートラックスの状態から続け様にバク宙蹴りの様な動きで銃を弾いてそのままの勢いで立ち上がり、逆にオービスへ銃口を突き付けた。
私に銃口を向けて居るのは一体何者なんだ?
この者に出会ってから一度も顔を見た事が無かった。試合中も私は奥に居たし、元々この者は激しい動きをしないからフードが捲れる事が無かった。蹲っていたと思ったら急に素早く、変則的な動きを見せ。私の兵士たちと部下たちが撃たれ、失格となっていた。
奴を取り囲んでいた者たちが撃たれ、最後に私に銃口を突き付けた時に、急な動きで勢いが付いたフードが捲れその顔を始めてみた。
黒い髪に力強い黒い瞳、肌は白く美しく顔の大きさも小顔で力強い瞳とバランスが取れていて。まるで東の国から送られてきたドールの様に美しい。
「何か言う事は?」
この美しい者から問われ、私は無意識の内にこう答えていた。
「・・・私と一緒になろう」
物体操作を体の動きの補助に使い、一気に相手を殲滅してオービスに銃口を突き付けた。
呆然としているオービスに、俺は一言聞いてみた。
「何か言う事は?」
呆然としていたオービスはゆっくりとだが返してきた。
「私と一緒になろう」
「はい?」
こいつは突然何を言い出すんだ?
「貴女は美しく、そしてお強い。私よりも確実に。
貴女の美しさに惚れた!貴女のその強さに惚れ申した!私と結婚して下され!!」
オービスは、熱が有るかのように顔を赤くし、俺を見つめてきた。
そのまま両手で、MP5を突き出していた右手をそっと添えてぶっ飛んだ事を言ってきた。
「お前は変態か!?俺は男だ!出来る訳がないだろう!」
気持ち悪い手を振り払いながら答えたが、こいつには理解が出来なかったらしい。
「貴女の様な方が男の筈がない!
さあこの私と一緒に!貴女を幸せにして見せましょう!子供は何人が良いですか?私は5人が良いですな!男子が2人に女子3人なれば・・・いいえ、貴女との子なれば何人でも構いません!良い家庭を築きましょう」
「ひぃ~!!」
暴走したこいつはあろう事か、俺に唇を向けて迫ってきた。それも抱擁しようと迫りながら。
「気持ち悪いんだよー!!」
一瞬で、生理的嫌悪感に支配され。目前にまで迫ってきた顔面に未だかつて無い渾身の力で拳を殴り付けて拒絶した。
「・・・っぷ!・・しょ、勝者、ソーマ殿・・・ククク」
隊長さんは、俺にオービスが木っ端微塵にまでフラれたのがツボに入ったらしく勝利宣言をするも笑い出した。オイバザードさんやベルガ王は、俺の変わってしまった姿、って言うか顔を見て驚いていた。
他の俺に負けた兵士たちや観戦していた兵士たちは、各々隣人と「女に負けたのか?」「彼女にしたい」「オービス殿、フラれてやんの」「姉さんって呼びたい」等の俺には全く嬉しくない評価が出ていた。
「お、俺は男だ~!!!」
試合会場に、俺の叫びが木霊していた。
読んで下さった皆様に、良い年が着ますようお祈りいたします!!
皆さま~良いお年を~!!




