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56話 街へ

「・・・それではこちらが、ソーマ様のお部屋となります」


 案内された部屋はかなり広く、流石は国王が住む城の部屋だと思う。こう言う部屋って、何だっけ?貴賓室とかって言うんだっけか?


「それとソーマ様、こちらは国王様とゼルフ様からになります」


 調理場に案内してくれたメイドから差し出された2つの袋の中には、かなりの量があると思われる膨らみが有った。


「これは何です?」


「こちらは国王様からで、ソーマ様が達成された御依頼の追加報酬分となります。

そしてこちらがゼルフ様からになりまして、謁見の間での非礼に対するお詫びの印だそうです。

今後の活動にでも役立てて欲しいとの事です。

2つともお金になりますので、持ち運びの際にはお気を付け下さいませ」


 金か・・・有って困るものでも無いからこのまま貰っておくか。

確かに今後のためには多く有った方が良いだろうしな。


「ありがとう御座います。

それでは遠慮なく貰い受けますね」


 貰い受けた2つの袋の重みに内心驚いた。

予想していたよりも多く入っていたのだろう。


「あぁ、そうだ。

少し聞きたいんですけど、ここの王都にあるギルドって、どの辺にあります?」


「それでしたら、西区と東区の丁度間にある建物になります。

ここ王城と教会に続いて3番目に大きな建物ですので、迷うことは無いと思います。

これからお出かけになられるのでありますか?」


「はい、ギルドで用事を済ませたいので行ってきます」


「畏まりました。国王様とオイバザード様にお伝えしておきます。

お一人で行かれるのですか?」


「うーん、そこは分かりません。

皆が行くと言えば、一緒に行く事になると思いますね」


「では、何かありましたらお呼び下さいませ。

一度下がらせて頂きます」


 一例してそのまま下がっていく彼女を見送ってから、俺はミルエルたちの部屋に向かう事にした。

向かうと言っても部屋が隣に続いているから直ぐに着くんだけどな。


 それにしてもフリムのヤツ、短い期間なのに結構成長したんだな。

見た目は、ひと回ぐらい大きくなってるし。歩き方もヨチヨチと歩いていたのに、今じゃテコテコと歩いて付いてくる。

それでもまだまだ甘えたい盛りなのか、抱っこをせがんできたり、一緒に寝たがる。

成体になるにはまだ時間がかかるんだろうな。

可愛いから良いけど。


 ミルエルとアイマさんは、部屋に残るって事だった。

後は、イエイヌにも一応聞いておくか。


「イエイヌ居るか?ソーマだけど」


 ドアをノックして声をかけると、直ぐに返事が返ってきた。


「・・・ソーマさんですか?

・・・何か・・・ございましたか?」


「特に用って訳じゃないんだけど、これから街のギルドに行くんだけど一緒に行くか?

このまま部屋でゆっくりしていて貰っても良いんだけど」


「・・・行きます」


 二つ返事で返って来た答えと同時にドアが開き、イエイヌが出てきた。


「良いのか?

休んでいたんだろ」


「・・・大丈夫です。

・・・休んでいたと言っても・・・座っていただけですから。

・・・それに・・・ここの雰囲気に慣れてないので・・・落ち着きません」


「そっか、それもそうだな。

じゃあ早速だけど行こうか」


「・・・はい」


 俺とフリムとイエイヌの3人で街に行くことになった俺たちは、街に早速行くことにした。

知っている道順で行くから、城から出るのに少しだけ時間がかかったけど何とか城の正門の前に出ることができた。


「えぇっと・・・ギルドは・・・」


 辺りを見渡すと、確かに2つの大きな建物が有った。

一つは俺もよく知る教会風の建物だから、あれがこの王都にある教会の建物だろう。

もう一つが、その協会よりも少し小さいだけだからあれがギルドの建物か?


「済みません、あそこに見えるのがギルドの建物ですか?」


「そうであります!」


「そうですか、ありがとう御座います。

彼処みたいだから行こうか」


 正門で門番をしていた男に確認したら間違いなかった。

一応礼を言って、イエイヌとそこに向かうことにする。


 ギルドまでの道程は少しあるから、周りの様子を見ながら進むことにした。

流石は王都と言った所で、多種多様の人種がメルギルよりも多く住んでいる。

よく見かけるドーワーフや獣人は元より、エルフや魚人種なんて種族もいる。

 魚人種は、見た目が半魚人の様な者とおとぎ話で出てくる上半身が人で下半身が魚の姿の2パターン存在している。

後半のタイプの人は、いずれも車椅子の様な乗り物で移動している。

まぁ歩いては移動できないよな。でも何で陸上なんかで住んでいるんだ?あれか?中立国って言うぐらいだから、色々な国との交流が盛んなのか?

 おぉ?!あれは魔族か?背中に生えている羽はコウモリっぽい形してるし、しっぽもよく見る形のものだ。魔族って悪者のイメージがあるけどこの世界じゃそうじゃ無いのか?


 行き交う人に内心驚きながらもギルドへ向かっていると、イエイヌがいつもより近くでくっ付く様に歩いているのに気がついた。


「どうしたんだ?何かあったのか?」


 気になったから尋ねてみると、イエイヌは「・・・人の多い所が・・・苦手です」と返ってきた。

無理せずに部屋で休んでいれば良いのに。

「・・・折角ですですから」と言われてしまったので、仕方がないかと思いつつイエイヌに合わせて向かう事にした。


「ここが王都のギルドか・・・」


 目の前にある建物が王都のギルドの建物で、メルギルとは違って、複合施設ではなくて冒険者ギルドだけでメルギルにあるギルドの建物の大きさを超えてしまっている。


「では早速入るか」


 俺の呟きにイエイヌとフリムが反応して、「・・・はい」「フィー!」と返してきた。

独り言だったんだけどな。

あまり気にせずに、ギルドの中に俺たちはそこにある扉を開けて入って行った。

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