50話 見逃してたなんて!
案内された調理場は、未だに活気に溢れていた。
何人もの人が洗い物をしたり食材の下処理をしていたり忙しなく動いている。
「こちらが調理場になります。
只今調理長にお伝えしてきますので、ここでお待ちくださいませ」
案内してくれていたメイドの人は、俺に一礼したのちに、調理場で活気づく人の中に進んでいく。
その中に居た、1人の人に話しかけだした様だ。
話が終わったのか、俺に2人で近づいてくる。
「あなたが国王様に料理を作るって人だね?」
「はい、今回、急遽ですが、俺が作る事になりました。
迷惑かけます」
調理長は女性だったのか、男だと思ってた。
後ろ姿だとショートヘアーだから分からなかった。
「全然構わないわよ。
国王様は年の割には好奇心旺盛でね、気になったモノに直ぐ飛びつかれる方だから。
ちょくちょく今回みたいな事があるのよね。
私たちも、料理関係だったら勉強になるから気にしなくて良いわよ」
何んとも協力的で良い人だな。
「ありがとうございます。
早速良いですか?」
「あぁ、良いよその辺のを好きに使いな。
食材も好きなだけ使っていいし、何なら人も使っていい。
今は片付けとした処理くらいだから直ぐに終わるからね、それとも私が手伝うかい?」
「そんな、大丈夫ですよ。
作るのは簡単なモノですし、場所とかを借りれれば自分でしますから。
では早速」
そう言って俺は、一旦コンビニに移動した。
コンビニに移ると、いつもの挨拶が聞こえてきたけど、声が1人分多い気がする。
声がした店の奥を見ると、神爺さん以外に、1人の若い男が居た。
男もコンビニの制服を着ているから店員だろう。
「ソーマ君いらっしゃい、今日はどうしたかね?」
「今日も料理作れと言われてね。
その買い出しだよ。
所でこの人は?」
「そうじゃった、そうじゃった。
この子はミルエルと変わって、新しいバイトの子でのぉ。
アンシェルじゃ。
アンシェル、こちらはソーマと言ってのぉ、ミルエルが一緒に居る子じゃ」
「初めましてアンシェルです。
これから宜しくお願い致します」
見た感じ、がミルエルに似ているな。
「こちらこそ宜しくな。
神爺さん、早速だけど、店の中見させてもらうな」
「ほぉほぉ、好きに見なさい。
ワシはこの子に色々と教えなければいけないからのぉ」
挨拶もそこそこに、店内を見て回る。
カレールーは高い物にして、後はホットケーキの材料とかを籠に入れていく。
「後は・・・うん?」
材料を選び終わった俺は、適当に店を見て回っていると、何となく気になる物が有った。
いつも何かある度に買っていたカードコーナーに、マジックバック・マジックポーチなる物が普通に有ったからだ。
「・・・なんだと?」
カードの説明書きを見る限り、よくある魔法のアイテムで、アイテムのランク毎に入る量が違って、尚且つ保存が出来る物もランク毎に選べるらしい。
一番低いランクだと5㎏位しか入らないけど、入れる物の保存状態を維持できる物も選べる様だ。
その代わりに値段は高いんだけどな。
このスペックでお値段6000円だ。
だが買おう、それも最高ランクの物を。
だって、物を無限に入れられる上に保存もできた方が良いじゃないか。
しかし、驚いたのはそこではなくその値段だ。
「1個、10万だと?」
高いよ!
誰が買うんだよ!・・・あ、俺か。
まあ使える物だから仕方がないか、先行投資だ。
「お会計かのぉ」
「あぁ、それと聞きたいんだけど、金って、円じゃなくても良いのか?
それとこのマジックポーチは前からあったけか?」
会計ついでに、聞かなければならない事が出来てしまった。
「そうじゃがどうしたんじゃ?
もしかするとお主、見逃しておったのか?
いつも買って行かぬからてっきり要らぬものかと思っておったわい」
「そうか、見逃してたみたいだな。
金に関しては、そろそろ日本円もつきそうだからな」
「支払いは、ソーマの行っている世界の物でも大丈夫じゃから安心せい」
「あぁ、助かるよ。
ココに来れても買い物が出来ないなんてなったら来る価値が無くなってしまうからな。
それじゃ、また来るから。
アンシェルさんもまた宜しく」
会計を済ませて、挨拶もそこそこに出ていく俺。
「はい、またお願いいたします」
「次は、他の3人も連れてくると良いぞぉ」
調理場に戻った俺は、周りにある道具などを確認していってからカレーを作る事にした。
作るのはもちろん簡単だ。
具材を切って、炒めて、煮込んで終わりだ。
ルーを入れた時に、料理長がやたらと興味を示したから、ある程度煮込み終わった時にスプーンでルーを舐めさせたら教えて欲しいと言われた。
でも買ってきたやつだから、俺が作ったオリジナルで、秘密と言う事にして、残ったルーを全て挙げた。
煮込み終わるまでに、女性陣用にホットケーキに、生クリームとフルーツを乗せて、蜂蜜をかけたパンケーキモドキを小さめに作った。
使い魔たち様に、フルーツを沢山使ったサラダを作ってやった。
最近エンを除いて肉ばかりだったからな、少しは良いだろう。
あいつ等もフルーツ系は好きだからな、喜んでくれるだろう、多分。
全部作り終わった俺は、料理長に残った材料を渡してあげると喜んでくれた。
余り物なんだけどな。
案内してくれたメイドの人はあのまま残って居てくれたみたいで、できた料理を運んでくれるみたいだ。
さて、俺ので満足してくれると良いんだけどな。




