49話 王からの小さな依頼
「さぁ勇者方、狭い所で申し訳ないが、此方にお座り下され。
ここは、我が王族のプライベートでの会食場での。
今ここに居る者たち以外はココには来ないのでユックリしてくだされ」
ベルガ王が狭いと言ったが、そんな事は無い。
少なくてもここだけで、俺の実家が丸々収まる広さがある。
目の前にはたくさんの料理が並べられており、豪華な食事が用意されていた。
肉・野菜・魚等をこれでもかと使われている。
温かい料理だけではなく、冷たいものもあるようだ。
見た感じは、俺の世界の料理と変わりない。違うのは材料位か。
「では、食事を始めようしますかな」
ベルガ王の合図で食事が始まった。
その合図で、ドコからともなく執事やメイドが表れて、飲み物などを運んでくれる。
「これもおいしいです!」
「ユウカさん、此方のサラダも美味しいですよ」
「・・・ミルエルさん、このお肉も良いです・・・」
女性3人は、出てきた料理に夢中だ。
それに対して俺は、使い魔のフリムやエン、新しいアイマさんの使い魔のフウに食事を与えながら俺も一緒に食べている。
メイドの人が、使い魔たちに興味がある様だが、仕事中だからかソワソワとしてるだけにおさまってる。
「でも、ソーマさんの方が良いですよね」
「そうですね、お城のお料理も良いのですが、ソーマさんの方が食べてて安心できます」
「・・・デザートも美味しいです」
3人が俺の料理と比較し始めやがった。
面倒事になったらどうするんだ。
「ほお、ソーマの料理はそんなに良いモノなのかね?」
「はい、ここの料理とは引けを取らないモノを彼は作ります。
私はココに向かう道中に食しましたが、素晴らしかったですね。
特に、カレーなるモノは良かったです」
ほら、興味を持ちだしたじゃないか。
オイバザードさんも素直に話さなくて良いのに!
「カレーなるものはそれほど良かったのか?」
「はい、具材は良く煮込まれ、肉野菜と入っており、香辛料も豊富に使われていてコクと共に辛味もあって癖になりますな」
「ほうほう興味が出て来るのぉ」
オイバザードさんの話にベルガ王と、そばで聞いていたゼルフとグロウブさんもチラチラと作れ、今すぐ作れと言った感情が籠った目で俺を見ている。
俺にはそう見えた。
「ソーマさん、私たちもホットケーキがまた食べたいです!」
更に横から援護攻撃が飛んでくるだと?!
「はい、移動の時に出たホットケーキが美味しかったです」
「・・・美味しかったです」
アイマさんに続いてミルエルとイエイヌまでもが食いついてきた。
面倒だが作るしかないか・・・
だって、フリムたちもが黙って俺を期待の籠った目で俺を見ているんだからな。
「あの~良ければ作りますか?」
「まことか!」
白々しい、思いっきり見てたじゃないか。
「はい、カレーとホットケーキとできれば使い魔たちの食事も作らせて頂ければ・・・」
「良かろう!
余が許可しよう、是非とも食してみたい」
良いのかよ!
「分かりました、お口に合うか分かりませんが、作らせて頂きます」
横では小さな声で女性陣が「やったー!」等と喜び合っていた。
女性はどこの世界でも甘いものが好きなんだな、まぁ俺も好きなんだけどな。
「そこの者、そちらのソーマを調理場に連れて行って欲しい。
調理長には余が許可を出したと伝えて、道具や食材を自由に使わせてほしいとも伝える様に」
指示されたメイドの人が俺をその調理場に連れていてくれるようだ。
食材が使えると言ってもカレールーが無いんだよな。
しょうがないからコンビニで買ってくるか、できれば良いのでも買ってくるかな?
あとは・・・フリム達のはどうするかな?
「それではご案内させて頂きます」
もう行ける様だ。
「はい、お願いします」
会場から出ていく俺に、期待の眼差しを向けながら見送ってくれる皆を背にしながら出ていく。
時間や周りを気にしないで、久しぶりにきちんとした物が作れるな。




