48話 王
兵士が守る、門の様な扉が開いていき、謁見の間に入っていく俺達。
謁見の間は、学校の体育館位はあるか?
以外と広く、ここで式典もしてそうだな。
謁見の間の奥にはこの国の国王が座り心地の良さそうで、豪華な椅子に座っている。
その周りには、王に仕える貴族たちが、控えて立っていた。
皆、オイバザードさんを除く俺たち4人を、それぞれの思惑の瞳で見ている。
到着した俺たち4人に王が笑顔で話しかけてくる。
「おぉ!お待ちしていた!
エンギニアより呼ばれし勇者、ユウカ・アイマ殿とその連れの方々よ!
余が、クレメルの国王であるベルガ・クレメルである。
其方たちの到着をお待ちしていた」
豪華な服装、と言っても装飾過多な感じではなく、王という立場から必要最小限の格好をしているだけといった感じだ。
周りの貴族たちとそんなに変わらない。
年格好は、白髪混じりで、60代と思うが、服の下から主張して、かなり筋肉質で、肉体だけなら30~40代のボディービルダーだ。
「は、はい!
初めまして、アイマです。
この度はご迷惑をおかけ致します!」
アイマさんが、緊張しながらも挨拶する。
それに合わせて俺たちがその場で跪いて頭を下げる。
「そのように緊張なされないでくだされ。
残りの方々もその様な挨拶は抜きで良いぞ、余に仕えてる訳ではないのだからの」
ベルガ王の言う通りに立って控える事になった。
「オイバザード殿も大変だったのう」
「ハッ!
有り難きお言葉です」
「それに、娘殿には悪い事をした。
余が命じてエンギニアに送らなかったら亡くなる事はなかった。
誠に申し訳なかった」
「いえ、そのような事は・・・
娘は・・・アリシアは、国に仕える事を誇りにしておりました。
単身とは言え、エンギニアでの任務をこなし、更には今回召喚された勇者であるユウカ嬢を保護するという大業を成しました。
国に向かう途中、死にはしましたが、無事に我が元にユウカ嬢は着きました。
アリシアが死してなお守っていたと思っております。
それにソーマ殿にユウカ嬢が出会ったのも行幸でした」
オイバザードさんは、娘さんの話になった時、震えていた。
時間が少しは経ったとは言え、まだまだ辛い話だろうに。
「そうであったか・・・
して、ソーマと申す者は其方で間違いは無いかの?」
「はい、私がソーマです」
まだまだ衰えを知らない瞳が俺を見ている。
「そうか、お主がソーマか、此度は良く勇者を守ってくれた。
礼を言う」
「ありがとうございます。
ベルガ王、1つ申し上げても宜しいでしょうか?」
いい加減、イライラしてきたしな。
「何でも申すが良い」
了承も得たし、遠慮なく言っても良いか。
「では、失礼いたしまして。
いい加減、我々の事を覗き見てステータス等を見る者たちを下げて頂けませんかね?
あと、いくら何でも部屋の各所に兵士・・・ですかね?を、配置させて狙わせてるのはどう言うつもりなんですかね?
さっき、ベルガ王が言った通り、俺はこの国に仕えている訳ではないから自己防衛のためとして攻撃に移っても良いんですかね?」
俺の言った事に驚いたのか、ベルガ王の瞳が驚きの色に包まれている。
俺の看破の眼がさっきから反応している事から考えて、俺たちの事を調べているんだろう。
「ゼルフ殿、今、ソーマが申した事は誠か?
余は余計な事はしてはならぬと伝えたはずだがの?」
「も、申し訳ございません!
しかしながら、いくら勇者殿を護衛してきた者たちと言え、何の情報もない者たちを信じてしまってもよいのかと思い、勝手ながら私が指示を出しました!
お前たち!下がりなさい!」
ゼルフとか言う貴族が慌てて配下の者たちを下げさせた。
反応が移動していき、無くなったのを確認してから再度伝える。
「信用できないのは仕方がないと思いますが、招いたのはそちらですよね?
そんな事がまかり通るなら、俺たちはここから急いで去りたい気分なんですけど?」
「ソ、ソーマ君それは言い過ぎで「よい、悪いのはこちら側だ」」
オイバザードさんがフォローしようとした時に、ベルガ王が非を認めてきた。
「ソーマが申すのも当たり前の事だ、知らぬ事とは言え、余の配下が失礼した」
「いえ、悪いのはベルガ王ではないのですから。
それに、アイマさんとイエイヌなら見えますけど、俺とミルエルはステータスを見ようとしても見れませんよ」
「ほう、お主とそちらのお嬢さんはのぞき見防止の魔道具を持って居るのかの?」
「そのようなものです」
「王よ、そろそろ時間となります」
ベルガ王の隣に控えていたブロウグさんが何やら促している。
「おお、もうその様な時間か。
では勇者方、食事の用意が出来た様なので、ここから移動して食事としよう。
使い魔にも食事を用意したので一緒に連れてきて構わぬのでそのつもりで。
では参ろうか」
ベルガ王に続いてグロウブさんオイバザードさんがその後を歩いていく。
それに俺たちが続く形になった。
他の貴族は来ないらしい。
あ、ゼルフって貴族は来るみたいだ。
配下の人なのか、何やら耳打ちしている。
言い終わったのか、後方から遅れてやって来ている。
「先ほどは済まなかった」
「いいえ、もう済んだことですから。
でも何でこんな事を?」
移動中の俺たちに追いついたゼルフが謝ってきた。
「言い訳になるが、其方達が実はエンギニアの回し者かも知れぬと思ってしまっていたので、配下の者に調べさせていたのだ。
王に何かが有ってはと思ってな」
「そうですか、俺はメルギルに居たので違います。
それにエンギニアに言った事は無いと思うので」
「そうか・・・?
思うとは?」
「俺にはメルギルに着く前の記憶が有りませんから。
ですから思うと言ったのです」
「それは言いにくい事を失礼した」
この人はこの人で、良い人なのかも知れないな。
1人で突っ走る所が有るみたいだけど、それは国や国王の為みたいだし。
そんな事を考えて居たら食事の会場に着いたみたいだ。
どんな食事が出るんだろうな?




