43話 再出発
やる事、それは潜伏している敵のあぶり出しだ。
あぶり出すと言っても簡単な事で、俺が看破の眼で屋敷の者たちを全員確認していくだけだった。
確認が完了次第一斉に物体操作で拘束させてもらう予定だ。
屋敷の庭に集められた者たちは、集められた理由は知らされていない。
オイバザードさんが、屋敷の者たちに戻ってきた理由を説明しだした。
これは、俺の確認が終わるまでの時間稼ぎで、総数67名を1人1人確認していく。
看破の眼で確認していき、エンギニアの者と出ている者にターゲットロックを付けていき、話が終わった瞬間に一斉に拘束した。
動けなくなった者たちは自分に何が起きているかが分からず、動ける者たちも慌てていてちょっとした騒ぎになりかけていた。
「沈まれ!」
オイバザードさんの一括によって騒ぎが収まった。
「こうなった理由を説明する。
ソーマ君、頼む」
オイバザードさんから俺に変わって、説明する事になった。
説明の前に拘束した7人を物体操作で前に揃えてから説明を開始した。
説明の中で、看破の眼については誤魔化しながら説明していったが、似たようなスキルなどが有るのか、何とか理解してもらった。
拘束した7人についても尋問後に処罰が決められる様だがどうなるかは分からない。
19人もの間者が紛れていた事に屋敷の者たちは驚き、もしかして他にも居るんじゃないかと軽く疑心暗鬼になっていたが、オイバザードさんと俺の説明で、同じ所で働く仲間に対して変な疑いを持たなくて済んでホッとしたような表情をしていた。
これで、屋敷からは一旦は間者を排除できたが、いつまた潜り込んでくるかは分からない。
解散となってから、オイバザードさんの執務室でどうするのかと尋ねたら、ステータスの鑑定スキルを持つ者を王都から派遣して貰うそうだ。
その調整は、向こうに行った時にするそうだが、現状としては少しは余裕があるだろう。
それでも街の中に居るもの全ては監視する事は出来ない。
公式に来訪した者や、エンギニアで兵士となった人が帰省しただけの場合、ステータスだけでは判断できないし、対処し辛いようだ。
「今回は危なかったな」
今、俺とアイマさん、ミルエルの3人は、俺に貸し出された来客用の部屋に集まっていた。
それぞれ、今回の事で思った事を話し合う事にしたんだ。
俺としては、今回の事で面倒ごとから逃げてきたが、それは無理そうだ。
だからその事から逃げるんではなくて、自分にふりかかってくるモノを少なくしていこうと思う。
全部は流石に無理だからな。
自分のできる範囲を頑張って行くさ。
「私は今回、無力でした・・・」
「ユウカさんはまだ良いですよ。
不測の事態には慣れていませんし、スキルも使えない状況だったんですから。
私なんか何も判断できず、ただその場に居ただけです。
ソーマさんの手助けに来たはずなのに・・・」
2人は今回の事で大分凹んでいる様だ。
「それは仕方がない事だよ。
アイマさんは捕まっていて、更にはスキルが使えなかった。
ミルエルは理由は知らないけどステータスが低下してるし、スキルも低下、もしくは封じられてるよな?
神爺さんの仕業か?
だったらそれは仕方のない事さ」
「ステータスなどに関してはそうですね。
お祖父さんがフリムの時の罰として施されました。
それでも判断できなかったのは私自身のせいです」
「余り自分を責めても仕方がないよ。
それでも気になるのなら今後、こう言った事になった時に判断していけば良いんだから」
俺の一言に少しは気が紛れてくれたのか、暗かった表情が少し明るく和らいでくれた。
「・・・あの~ちょっと良い?
ミルエルさんのお祖父さんって、誰なの?
ソーマさんは知ってるみたいだったけど」
「私のお祖父さんはコンビニの店長ですよ。
コンビニで会っているはずですが?」
ミルエルの返答にアイマさんがこっちに顔を向けて本当に?って、表情をしている。
「本当の事だよ。
あのコンビニの神爺さんがミルエルの祖父さんだよ。
俺はちょくちょく行ってるから、世間話の時に聞いてたから知っていたけど、アイマさんは知らなかったんだっけ?」
「聞いてません!
・・・って事はですよ?
ミルエルさんは・・・神様?なの?」
「いいえ、私は神族でも天使です。
神になるためには神の位に就く方が何らかの理由で居なくなって、その代わりに選ばれた者が神の位に就くのです。
ですから私は天使のままなんですよ」
神様って、推薦式なのか・・・
「それにほら、これで信じますか?」
バサッと、今までなかった白い羽を纏った翼がミルエルの背中から生えた。
「あれ?
翼って生えてたの?
俺も見た事無かったんだけど」
「普段の生活には邪魔ですからね、消してるんですよ。
この翼は実際に生えてるのではなくって、天使の力の具現化見たいのモノですからね」
「ふーん、そう言うモノなんだ。
けど実際見てみると綺麗で似合ってるよ。
ねぇ、アイマさん?」
「そうですね、翼もただ白いだけではなくて輝いて見えます。
綺麗です」
骨られて恥ずかしくなってきたのか、翼を消してしまった。
「けど、これは翼は消しといたままの方が良いかもな」
「何でですか?
出しといても良いと思いますが」
アイマさんは気が付かないのも無理ないか。
「この世界は地球とほぼ同じで、神様や天使等は滅多にその姿を現さない。
それが良くても悪くてもだ、だから代わりに啓示なんて事をしているのさ。
そんな彼らがその姿を見せた何てなったらどうなると思う?最悪アイマさんたちにしたみたいに悪用しようとする連中が出てくるかも知れない。
いや、必ず出てくるかもな。
それは俺にも言える事なんだろうけど」
それからは今後王都に向かう道中、ミルエルも含めて訓練して行く事になった。
アイマさんはレベル上げやスキルLVを等を上げる訓練を、ミルエルは自信をもって行動できるように訓練してく事になった。訓練中は基本的に2人はペアとなって行動してもらう。
俺は、この上げてしまったステータスに慣れる訓練をしていく、ついでにフリムも遊ぶついでに鍛えてやろうと思っている。
フリムが傷つくのは嫌だからな。
こうして話し合いは進んでいき、そのまま解散となって各自の部屋で寝る事になった。
俺は疲れすぎたのか、フリムを抱き枕にしたような形でベットですぐ寝てしまった。
翌日の早朝、再度出発となった。
馬車等も増え3台体制で移動となった。
1台はオイバザードさんや俺たちが居る馬車、残りの2台が護衛が乗っている馬車になる。
護衛にはオイバザードさんの兵士も乗っているが、ギルドで雇われたガードナーの人たちも何人かいた。
知らない人たちだけど。
後は馬に乗って護衛をしている兵士の人たちも居た。
移動が開始された時は、俺はあえてガードナーの人たちが乗っている馬車に乗り込んだ。
念の為の確認と、了承して貰えるのなら俺の訓練で付き合って貰おうと思ったからだ。
まぁこの世界の金はあまり無いから、食料関係を提供しようと思っている。
地球では無いから、いくら領主の移動とは言え、保存食なども出てくる頻度が流石に多くなってくる。
特にオイバザードさんは、贅沢などにはあまり興味が無く、必要以上にお金を使いたがらないそうだ。
何でも、浮いたお金を領民に何らかの形で還元しているそうだ。
そんな領主の居る街に住んで居るからこそ領民は、税金なども積極的に払うし、殺人などの重犯罪とかも発生率が他の街や村に比べてかなり低いという事だ。
馬車での移動中、一緒になった人たちの挨拶周りも終わり、何人かに訓練のお願いをしてみたら、その全員が了承してくれた。折角なので、その人たちの負担にならない様に暇な時に教えて貰えるようにした。
報酬は毎回全員に出そうと思っている。
最初の休息まであと少し、どんな事になるのか楽しみだ。




