34話 聞きたいこと
街を馬車で出てから暫く時間が経過したが、馬車の中の俺は物凄く居心地が悪かった。
ずっとミルエルが俺を見ていたからだ。
単に見ているだけだったら良いんだが、微笑む様に笑っているのに目だけが笑ってない。笑ってるのかも知れないが、その瞳には何も写っていない様にも見える。
フリムも察したのか、ミルエルの膝の上から相馬さんの膝の上に移動して丸まっていた。
フリムを乗せている相馬さんも気まずいのか、窓から見える外をずっと、見ていた。
オイバザードさんも言葉には出さないが、肘でどうにかしろと突っついてくる。
いい加減、俺も居心地が悪かったから聞いてみることにした。
「・・・ミルエルさん?
何か言いたいことでもあるんですか?」
何で敬語で聞いているんだ俺は?
何時もならタメ口なのに。
「いいえ何でもありませんよ?
全然気にする必要は御座いませんから」
より一層目には何も映らなくなった。
「そんな訳ないよな、なにか気に障ることでもしたか?」
「そうですねぇ蒼真さん自身は何もしてませんから大丈夫ですよ?
ええ、私がイケナイだけですから、気にしないで下さい。ええ、本当に」
「とてもそうとは思えないんだけど。
何でも言ってイイんだぞ?
思ってる事とか、気になる事とか、何でも」
「・・・本当に宜しいのですか?」
「良いよ、何でも言ってくれ。
怒ったり、呆れたりしないから」
暫く考える様な仕草をしてからミルエルは話し始めてくれた。
「あの・・・あの方とはどう言ったご関係なんですか?
それと、こちらの方もですが」
「へ?・・・関係?
エレスさんはギルドで世話になってくれてる人だし。こっちの相馬さんは、護衛の依頼を俺に出してる人で、尚且つ同郷の人だから色々あってね手を貸すことになったんだ。
別に何かがあった訳でもないんだけどね」
「その割には、そのエレスさんという方は親しそうにしていましたが?」
「それはエレスさんが面倒見が良いからだからだよ。
俺だけじゃなくて、他の人にも同じだと思うよ」
何でこんな事気にしてるんだ?
「本当にそれだけなんですね」
「そうだよ、それに俺はこの世界では記憶喪失で通って居るからなお更なんだと思うよ。
気を使って関わっていける人なんてミルエルと、ある意味神爺さんぐらいしか居ないし。
相馬さんとだって数日しか一緒に居ないんだから、まだお互いに気を使うしな。
ねえ、合間さん?」
「ふぇ?
あ、はい、そうですね。何だかんだお互いに気を使っている所はあると思いますよ。
それでもまだ、日本に居たっていう所がありますからそれほど気を使わなくても良いと言いますか、蒼真さんが色々歩み寄ってくれているので助かってますが」
え?私?っといった感じで、話を急に振られた相馬さんが慌てて答えくれた。
「それと、これでも一応はね、感謝もしているんだ。
本来ならココに居ない君が、フリムのためにとは言え、態々来てくれたんだから」
「そ、そうですか?
そう言っていただけると嬉しいです。
それだけでは(フィー!!)ないんですけど・・・・」
フリムの寝言で最後のほうが良く聞こえなかった。
「ごめん、最後の方が良く聞こえなかった」
「いえ、何でもないので大丈夫です」
暫く聞いてみたけど、結局、教えてくれなかった。
相馬さんは聞こえてたみたいで、ミルエルに何か耳打ちしたと思ったらミルエルも耳打ちで相馬さんに話ししていた。
女子2人の内緒話をしてる姿を見続けることになった。
黙って過ごしている俺に、オイバザードさんが2人を邪魔しないようにか、小声で聞いてきた。
「それで、ミルエル嬢の事を教えてくれると嬉しいのだけどどうかな?」
素直に答えていい物だろうか。
「教えたらどうするのです?」
「別に何もしないと思うよ?
私自身はね、他の者が何かするかも知れないけどね」
「じゃあ教えられません」
「その理由を聞いても良いかな?
普通だったら貴族の、それも領主の聞かれたことは答えないとイケない。
そうしなければ処罰の対象になってしまうからね。
それを知っても断るかい?」
「はい、お断りします。
元々俺はこの世界の人間ではないので、俺や俺に関わる人のマイナスになるような事は極力排除したい」
「でも君は、今はこの世界に生きているよね。
だったらこの世界の法に則って行くべきではないかな?」
「それは誰の為の法で?
一部の上に立つ者の為の法だったら、それこそお断りです」
「うーん、意志は硬いようだね。
こんな事ぐらいで罰したりしないから大丈夫だけど、ミルエル嬢はそれ程隠しておきたいのかい?」
「詳しくは言いませんが、彼女も俺や相馬さんと同じような存在なんですよ。
むしろそれ以上と言って良いかも知れません。
だから申し訳ありませんが、お話できません。国王様?に話をする時も俺は話しませんよ。
そもそも俺は唯の護衛のはずですから。
何かの頭数に入れていたらそれは止めたほうが良い、都合よく何かをさせようとしたら俺は直ぐに姿を隠させてもらいます。
勿論あの2人も連れて行きますから」
「クックックッ、それを俺に言うかね。
安心しなさい。面倒な事になるかも知れないが、利用しようとは思わないはずだ。
特に、国王はそうだ、アリシアの話を聞いていたと思うが、国王は異世界人の血を引いてらっしゃる。
だからか、この国は中立になっているし、裏では異世界の者を保護している。
今はその活動自体がほぼ無くなっているがね」
「無くなっているって何でです?」
「簡単な話でね、結構昔から異世界の者が現れなくなったんだ。
だから無くなっているんだけどね。
もしかしたら、エンギニアみたいに裏で抱え込んでいるかも知れないけどね」
それもそうか、国が関わって居るんだったら早々逃げ出すこともできないか。
相馬さんは、今回運が良かっただけだろう。
この移動中に、今後どうしていくか、ある程度考えて行かないとイケナイかもな。
何て考えていたらいつの間にか、俺は眠ってしまっていた。




