32話 これからの話
こんなに朝の目覚めが重い事が今まであっただろうか。
朝から考えても何にもならないのに、つい考えてしまう。フリムは相変わらず幸せそうに寝ている。
ベイルさんが、朝食の準備が出来たと部屋まで来てくれて、そのまま案内してくれた。
食堂にはもう既に、相馬さんが来ていて食べずに待っていてくれた。
しかし、相馬さんの表情は少し暗かった。たぶん俺と同じように考えすぎているのだろうな。
会話も少ないまま朝食が終わり、ある程度時間が経ってから、再度昨日話をしていた応接室に集まっていた。
「じゃあ結論から言うとね。
君たちには王都に行ってもらうよ。
ここでは何にもできないから、国王に決めてもらう。これは国際問題でもあるからね」
昨日分かれてからも泣いていたのだろうか、オイバザードさんの目は泣いた痕の様に赤い。
「済みません、何で自分まで?」
「色々考えたんだけどね、一緒に居て貰った方が都合が良いんだ。
エンギニアは異世界から呼んだ勇者、つまりユウカ嬢を探している。
追っ手はどこまで来ているかは分からないし、若しかしたら君も狙われるかも知れない。
不安要素は少ないほうが良い」
「自分1人だったら何とかできますけど・・・」
俺が渋っていると、オイバザードさんが無言で手招きした。
身を乗り出すようにすると、小声で耳打ちしてきた。
「今、ユウカ嬢を1人するのは精神面でマズイと思うんだよね。
昨日今日で心に負った傷が治るわけないし、また1人なったら不安定になってしまうかも知れないよ?」
言い終わると、オイバザードさんは座り直しながら言ってきた。
「それに、知らない人ばかりより、知ってる人が居た方が良いでしょ?」
「分かりましたよ、行きます」
結局折れてしまった。
「助かるよ。
それからユウカ嬢」
「は、はい!
何でしょうか!」
緊張しすぎのような気がする。
「ユウカ嬢には王都に着いたら国王に、私にしたように話をしてもらうよ」
「私がですか?」
「大丈夫、ソーマ君と私も一緒に居るから。
それに先に使いの者を出している。我々が王都に着く頃には事前説明がされているから、その補足だと思ってくれればいいから」
「はい・・・それでしたら大丈夫だと思います」
オイバザードさんも一緒に行くのかよ、先に言ってくれないかな?
「オイバザード様、1つだけお願いしても良いですか?」
「様はいらないよ。
お願いってないだい?極端なモノでなければ大丈夫だと思うけど」
「今ですね、自分、ギルドの初心者講習を受けていまして。
それを何とかして頂ければと、このままでは失格になってしまうので」
次に回せば良いと思うけど、印象が悪くなるのは俺は嫌だな。
「ソレぐらいだったら、ギルドに私からお願いしとくよ。
いつ戻れるか分からないから、講習は成功扱いにしてもらうよ。
それと宿舎に住んでいるのかい?」
「はい、そうです。それが何か?」
「さっきも言ったけど、いつ戻れるか分からないから、宿舎もそのままにしといて貰っておくよ」
「態々済みません」
「コレぐらいはね、他には無いかい?」
「じゃあギルドの知り合いに伝言をお願いしても良いでしょうか?」
伝言ぐらいだったら追加しても良いかな?
「それぐらい良いよ。
ベイル頼むよ」
呼ばれたベイルさんが、紙と筆を持ってきてくれたので、直ぐにガインとエレスさん宛に伝言を書いて渡した。
「コレをお願いします」
「確かにお預かり致しました。
直ぐにお渡ししてまいります」
伝言を受け取ったベイルさんは、直ぐにギルドに向かってくれた。
「では申し訳ないけど、用意が出来次第直ぐに出発したいけど2人とも良いかい」
「こっちは大丈夫です」
相馬さんに確認してから返事をした。
「じゃあ準備ができるまで待っていてくれ」
準備ができるまで、特にする事がなかった俺と相馬さんは、自分たちの使い魔でもあるフリムとエンの事について話をしたり、自分たち自身の事を話し合ったりした。
自分たち自身と言っても、王都に着くまでの自分たちの目標を立てて。
その訓練や練習をどうしようか?って話だけど。
話をしながら待っていると、準備が出来たと使いの人がきた。
向こうではどうなるか。そんな不安があったが、俺よりも相馬さんの方が不安なのかも知れない。
屋敷の前には、これぞ貴族が使いますと言った感じの馬車があった。馬車と共に、お付の兵士と思われる人たちも数人、馬に乗って待機していた。
この時、出発前にひと悶着があるとは思わなかった。
それも俺が関わっているとは思わなかった。
これから王都に向かっていくお話になっていきます。
戦闘描写等も書けていけたらと思っていますので、これからも宜しくお願い致します!!




