28話 蒼真と優香とこれからと
「・・・そうか、・・・辛かったな・・・・
それで、相馬さんはこれからどうするんだ?」
彼女の話を聞いた俺はこれからの事を聞いてみた。
「これから、ですか?」
「そだ、神爺さんが言っていた転移者は俺で間違い無い。
だが俺には俺の人生があるんだ、はい分かりましたと素直に何でも手伝える訳ではないんだ。
俺は勇者って訳でもない。
ただ便利な力があるってだけだ」
「そんな、助けてくれないんですか?」
彼女の瞳に絶望が宿り始める。
「別に見捨てる何て言ってないだろ?
ただ、俺に全てを任せ様なんて考えてないか?」
「それはー・・・そうかも知れません」
「だからさ。
言葉は悪いけど、他人の人生に責任が持てる程に俺は強くもないし、偉い訳でもないんだ。
少しだけ手伝って上げるのが関の山さ」
自分に言ってるみたいだな。
「では、私をメルギルに連れてって下さい!
そこの領主にコレを渡したいんです!」
彼女が取り出した物は、さっき、言っていた魔道具だろう。
少し、血が付いていた。
「お金が必要でしたら必ず払いますからどうかお願いします!」
立ち上った彼女は言い切ると、腰から90度に真っ直ぐ頭を下げてお願いしてきた。
「・・・ダメだな、お前、勘違いしてないか?
それと座れ」
「・・・・・・勘・・・違いですか?」
座り直した彼女が聞いてきた。
「何で、えぇっとアリシアさん?で、良いのかな?
その人が相馬さんを逃がしたと思っているんだ?」
「エンギニアで起きたことの最後の証人だからですか?」
「そんな考えじゃ、彼女も浮かばれないな」
「どういう事です!
私は彼女の為にもここまで来たのに!!」
テーブルに手を叩きつけて怒鳴ってくる。
「良く思い出せ。彼女が相馬さん、君を見捨てずに助け続けた事を。
彼女は君に生きていて欲しかったからじゃないのか?」
流石に相馬さんも思い出したのか、震えるように声を出さない様に泣き出した。
「だから俺から提案がある」
落ち着いてきたタイミングで声をかける。
「提案?」
「そうだ、責めて自分1人でも最低限何とか出来るように戦えるようになれ。
メルギルでさよならって言うのも良いが、それじゃ今度は俺が気が気でない。同郷の人間が死ぬかも知れないんだからな。
それまでは、俺も付き合ってやる」
「良いんですか?」
「あぁ、何となくだけど俺がココに居る意味がわかった気がするからな」
「本当に助けてくれるんですか?」
「本当だって、嘘はつかないから安心しろ。
但し、急いだ方が良いだろうから用意が出来次第向かうからな」
「はい!お願いします!」
彼女から笑顔が出てきた。彼女にとっての希望が見えてきたからだろうか。
「準備に必要な物は、俺が揃えてくるから。
それまで相馬さんは、体の疲れを落としてゆっくりして。
ご飯も頼んでおくから食べときな、殆どきちんとした物を食べていないんでしょ?」
「任せっきり何てダメです!
私も何か手伝います!」
本心で言っているのだろう。
「良いから、手伝うって言っても良く分からないだろ?」
彼女から聞いた話だと城での生活のせいで、其の辺の事を教えて貰えなかった様だしな。
もしかしたら、離反者が出ることも想定していたのかも知れないな。
「スミマセン、何から何まで」
「それじゃ、ユックリしてな。
使い魔のフリムを置いていくから、そいつは生まれたばかりだけど強いから安心して良いよ」
そう言って部屋を出て、買い出しに向かう。
ついでに、宿屋のカウンターで飯とお湯を頼んどいた。
いい加減、体も綺麗にしたいだろうしな。
これから面倒な事になって行くんだろうなぁと思いながら、買い出しを始めるために街の中を移動して行く。
買い出しも終わり、宿屋に到着した。
いきなり部屋に入るのもどうかと思ったからドアをノックして声をかけた。
「蒼真だけど、入っても大丈夫か?」
何度かノックしても返事がないから何かあったのかと思い慌てて、部屋に入るとソコにはベットで深く眠っている相馬さんが居た。
お湯が入っていた桶がベット脇に置いてあって、テーブルには綺麗に空になっている皿があった。
食べて体がスッキリすればこうなるか。
ベットで寝ている相馬さんと丸まって一緒に寝ているフリムを見てそう思ってしまう。
なるべく起こさないように静かに買ってきた物を仕分けして荷物入れに入れていく。
準備が終わる頃に、相馬さんが起きた。
「す、すみません!
何もしてないのに寝てしまうなんて!」
いけない事をしてたのを見つかった子供のように謝ってくる。
「疲れてたんだろ?
悪いことはしてないさ。
それに、そんなに時間も経ってないからね。大体2時間ぐらいかな」
「準備は出来たんですか?」
「ああ出きたよ、後はコンビニに行こうか」
俺が連れて行く形でコンビニに行くと、髪爺さんが居た。
「君たちか、無事に会えた様じゃの」
「あの時はありがとうございました」
相馬さんが髪爺さんにお礼を言っている。
何か話合っている間に、俺はいつものシリアルカードコーナーに向かう。
カードを選んでいる内に、相馬さんが隣に来た。
「何をしているんですか?」
シリアルカードを選んでるのが気になるらしい。
「コレな、買ってからコンビニを出ると、それが実体化したりスキルなら覚えられたりするんだよ。
買った本人しか使えないけどね」
「へぇ、じゃあこれは蒼真さん専用みたいな物ですね」
「いや、相馬さんにも買ってもらうよ?
向こうのお金はそんなにはないけど、日本円はかなりあってね。
ここなら支払いに使えるからね」
「でも私お金持ってません」
「俺から1万円分預けておくからそれを使って。
全部使うのも言いし、少しずつ使うのも良いと思うし、自分で考えて使って」
財布から1万をだして相馬さんに渡す。
「こんなに・・・ありがとう御座います」
「俺のためでもあるから良いんだよ。
カード自体も、高くても800円ぐらいだから結構揃えられるから」
「分かりました。
でも、私、何を揃えたら良いのかが分かりません。
ゲームとか漫画とかした事がしたり読んだりした事が無いので、どう選んだら良いか分かりません」
「じゃあ一緒に選ぶ?」
「お願いします」
2人で選ぶことになったから、相馬さんに聞きながら一緒に選んでいった。
選んだのは以下の通りになった。
スキル・才能系
守りの才能
回復魔法LV 1・魔力回復力上昇LV 1
武器系
水龍のナイフ
防具系
防風の軽装具・防壁のペンダント
を買う事になった。
相馬さんは基本的には使い魔をメインに戦うから回復系と動き易い様に軽そうな物を選んだ。
スキル才能系は回復を、武器は水の塊を相手に飛ばして攻撃することも出来て、出した水を飲み水にする事もできる。
防具系は防風の軽装具が付属効果で風の力で矢や攻撃魔法を反らす様に守ってくれる。
防壁のペンダントが魔法の障壁を発生させて物理攻撃の威力を減少させたり止めたりする事ができる。
全体的に守りの要素が強いけど、使い魔が出来るまではしょうがないと思う。
後、武具系統が高いぐらいかな。性能が性能だから諦めた。
「神爺さん、これ、この子が買うから宜しくね。
それと、まだミルエルは戻ってこないの?」
今日も居ないようだしな。
「なんじゃ?気になるんか?」
「まあ気になるかと言われれば気になるなぁ」
「そうかい、そうかい。
そのうちに会えるじゃろうて、向こうも今、色々と準備があるからのう」
準備?何してんだ?
「まあいいか。
それじゃあ買い物も済んだし、相馬さんも帰ろうか」
「はい、分かりました」
相馬さんと一緒にコンビニを出て、戻ってくるとフリムはまだ寝たままだった。
「相馬さん、これからメルギルに向かうけど、忘れ物はないよね?」
「はい、買わせて頂いた物もキチンと着けましたから大丈夫だと思います」
「良し、それじゃ行こうか。
フリム、起きろ。移動するぞ」
まだ寝ぼけているフリムを抱えて部屋をでる。
それに相馬さんが後を続いてくる感じだ。
カウンターには宿泊をキャンセルしてもらった。迷惑料に、代金はそのまま貰ってもらった。
まだ護衛達成時に分かれた所で、アレクたちが居たから挨拶だけした。
その時に、モルガンが、1台先に返すから一緒にどうだ?っと言ってくれたから是非にと頷いた。
最初は徒歩を考えていたが、移動スピードを考えると渡りに船だった。
そのまま魔物商店の準備が出来次第の異動になった。
待ってる間、アレクたちに相馬さんとの関係を冷やかしながら聞かれたが、そんな関係では無いと言っても聞いてくれなかった。
相馬さんも何かニコやスロウに言われていたらしく、終始顔が赤かった。
冷やかしから解放されて、出発となった。
出発前に、一緒に行動することになった魔物商店の人に挨拶だけして、メルギルへと出発した。
これからどうなるかと思うと心なしか胃にくるものがあった。
俺は、なるべく平凡に暮らしたいんだがなぁ。
これからは、なるべくストーリーが動くように書いていきますのでよろしくお願いいたします!!




