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21話 覚えたい・忘れたい

 この日は忘れたくても忘れられないだろうな。

なんせ、あんなモノを見てしまったら・・・・・・・




 護衛初日の午後、予定通りのペースで移動距離が稼げいて問題なく予定していた休息場となる所に来ていた。

ここは見晴らしも良く、比較的人通りも多いため安全に休憩できる所らしい。

らしいと言うのは、勿論俺が来たことないから知っていようがない。


「皆様、食事が出来ましたのでどうぞお食べ下さい」


 モルガンが昼飯ができたと伝えると、そのまま他の荷馬車の所に戻っていった。

多分、隣街に運んでいる魔物に食事でも与えているのだろう。


 昼飯も食い終わり、そのまま道中で、ニコとスロウに教わっていた魔法の使い方の訓練をしていた。

訓練といっても地味なもので。初歩として自分、もしくは他の物から魔力を感じられる事が肝心だそうだ。

感じる場所は人其々で、自分の体から感じるにしても腕や胸、頭、足等様々に違いが出てくる。

また、感じ方にも違いがあるそうで、感覚として、視覚、聴覚、嗅覚と、これまた様々だ。

 その魔力を感じる・把握する訓練中、フリムは魔物商店の店員たちに遊んで貰っていた。その中にモルガンも混じっていたのは気のせいだと思いたい。


 集中していると違和感があった。

たまたま移動しているアレクたちを見た時に、視覚的にだが薄く靄の様なものが見えた気がした。

気のせいかと思ったが今度は気配の濃さに気づいた。

そちらに振り向くと、ニコとスロウがいる方向だった。

よくよく考えながら周りの人達を見てみると、皆それぞれが薄く靄を出していて。その濃さで、気配の強弱が出てきていた。靄の濃さが強いと気配も強く、靄が逆に薄いと気配も薄くなっていた。

自分も意識しながら見ると、それなりに濃くなっていた。ニコとスロウに続いて高いようだ。


「なぁ、魔力を感じることが出来だみたいなんだけど」


「え?!もう?」


「あぁ」


 スロウが驚いていた。

初日では出来ないものなのか?


「お早いですね。

普通の方は、早くても3,4日はかかるモノなんですが。

私も5日はかかりました。

才能を持っておられるからかも知れませんわね」


 ニコも羨ましそうだった。

それから、いくつか魔力を意識的にきちんと捉えられる様に、再度2人からコツを教えてもらって繰り返していた。

 休憩も終わって、移動中には初歩的な攻撃魔法を教えてもらっていた。

覚えたのは雷の魔法で、魔法名はショックボルト。威力は弱いが追加で麻痺を与えることができるのだ。

まぁ確実ではないのだけど。

それでも1人で依頼をこなしていく予定の俺にとっては、ありがたい魔法だった。

 次に覚えたのはそれを武器や防具・体に纏わせるマウントボルト。

これも、武器に纏わせると威力は弱いが麻痺を相手に与えられる。これが防具・体の場合はその属性の耐久性と接触してきた相手に麻痺を与えられる。


 今はこの3つだが、そのうちに教えて貰ったり自分で出来るようになるそうだ。

ちなみに魔法を使うのに必要なものは、魔力とイメージの2つが基本となる。

使用する魔法のイメージが弱いと使えないが、それをカバーする為に魔法詠唱がある。

これは詠唱する言葉を使って、言葉とイメージを関連付をさせて魔法を行使出来るようになる。

 イメージが出来る出来ないでは魔力の消費量に違いが出てくる様だ。イメージが出来る魔法使いが3回同じ魔法を使ったとして、イメージできない魔法使いが同じ魔法を使うと4回分5回分と違いが出てくるから。

 俺はイメージができる方なので詠唱は必要はないが、イメージが必要そうな難しいモノや大規模なモノだったら分からない。


 初日の最終目的地まで後2時間と言った距離で慌ただしくなってきた。

ゴブリンたちが襲ってきたからで、その中には初心者講習の教本に載っていたゴブリンアーチャーやゴブリンナイトが居た。更に狼を少し大きくしたフォレストウルフも何体か混じっていた。


 俺たち護衛組が急いで馬車から展開して襲ってきた魔物を向かい打ってでる。

数はかなり多いが、アレクたちは連携して魔物たちを撃退していく。

 俺も撃退していってはいるが、覚えたばかりの魔法の練習をしていた。

ショックボルトとマウントボルトを使ってみて、分かったのは。ショックボルトはハンドボウルぐらいの大きさの球を相手に飛ばし、打撃ダメージと麻痺を与える事と。付与系のマウントボルト武器にだったら相性は良いみたいで、重の弾に付与しながら撃つと遠距離で麻痺してくれる。

これは危険が少なくなるからかなり使えた。防具や体には付与はしていない。試しに斬られたり殴られるのは危険すぎる。


 検証しながらの撃退が終わると、討伐した魔物の数が少ない事に気づいた。

襲ってきた数と倒した数、その数が合わなかった。

どう言う事かと周りを見ると、チットが引きつった顔で俺に教えてくれた。


「ソーマ、あれみてみろ」


 チットが指を指した先にあった光景は凄まじかった。

倒したゴブリンやウルフをフリムが生のまま貪り食っていた。体はまだ小さいから体に入り込むように食らいつき、内側から食べ尽くす。

残るのは、ほぼ皮とその周辺の肉だけ。皮は食べないで残す理由が分からないが、多分俺が作っていた料理に皮がないからそれで覚えたのだろう。残した皮は一ヶ所に、食べ終わってからまとめていた。後片付けのつもりなんだろ。


 この食欲減退必至の光景は忘れなれなくなった。

なんせ食べ終わり、満足して出てきたフリムは血だらけで肉片が体中にこびり付いてるのにそれを気にもせず俺に飛び込んできたからだ。来ていた服に匂いや血が移り、それを見た周りに笑われ、フリムも満足そうに笑う。


 フリムを綺麗にしてやり、俺も服を着替えている間に残っていた食べ残しの魔物から討伐証明部位と素材を剥ぎ取ってもらっていた。その中に魔石が無かったのは、フリムが食べたかららしい。

 何でもモルガンが言うには、魔石を体内に取り入れることによって、その個体の成長促進や、個体そのものの強さもより強くなる様になるらしい。




 あんな光景はなるべく忘れたい。

もう直ぐ到着となるが、俺の周りは静かだ。

まあ俺が笑ってくれたお仕置きに、マウントボルトで痺れさせたからなんだけどな。

フリムにもお仕置きしといた。

オヤツと遊ぶ時間をなくしてフリムは落ち込んで泣いていたが、次から勝手に食べなければ言いと教えて遊んでやった。


 俺は、フリムに甘いのだろうか?





 いかがでしたでしょうか?

私も忘れてしまいたい失敗や恥ずかしいことがあります。

皆様はどうでしょうか?

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