13話 模擬戦?
少し長くなってしまいましたが、お付き合いください!
スキルの確認も終わり、夕食や風呂も終わり今はコンビニに来ていた。
「こんにちは、神爺さんは今日は居ないの?」
「そうですね、今は来られていませんね。
何か御座いましたか?」
店番のミルエルに神爺さんに渡す予定だったお見上げを預かってもらった。
「あと、これ、ミルエルにもお見上げだから。
髪留め、良く髪直してたから使うかな?って」
神爺さんのお見上げと一緒に綺麗に装飾された髪留めを渡す。
「良いのですか?
これは高そうに見えるのですが」
「良いんだよ。それに、これは申し訳ないけど結構安物だから気にしなくて良いよ」
「お気持ちだけでも嬉しいですよ。
ありがたく頂戴いたします」
受け取った髪留めを早速サイドにとめてくれた。
あげた物を使ってくれるのって結構嬉しいよな。
「それじゃ、店の商品を見せてもらうね」
商品を物色して、明日からの訓練等で使えそうな物を見て行く。それにしてもココの商品の品揃えは半端ないな。
良くあるコンビニ商品から、カタログ商品まである。カタログには、車・家具・電化製品・その他の商品が地球の商品だけではなく、他の世界の商品まである。多くは地球の商品が占めている。
ある程度見切りをつけて、携帯用の救急キットを2つと食材を少し、他にも幾つか選んだ。
最近は料理スキルの確認も含めて、自分で作る様にしている。凝った料理を作ったりすると、どこで嗅ぎつけたか分からないが、ガインのヤツが嗅ぎつけて来て飯をタカリに来るから多めに買っとかないと直ぐに足りなくなる。
「これ下さい。
あと、あっちの世界の金って使えるの?」
「使えますよ、ココは全ての世界と繋がりますから」
会計のついでに聞いてみたら使えると返事が来た。良い事が聞けた。円はまだまだ残っているが、使い切ったら大変だったしな。
「はい、お釣りになりますね。
・・・あの、また来て下さい。蒼真さん」
「喜んで来させて貰いますよ。
色々と見ていたいし、やっぱり知り合いと話もしたいしね」
最近ココに頻繁にくるからか、ミルエルが砕けてきたのか様付けからさん付けに呼び名が変わった。
畏まった会話よりコッチの方が良いよな。
コンビニの買い物も済ませて部屋に戻る。
部屋に戻って、買ってきた物をそれぞれの場所に置き、就寝する。
朝の身支度を手短に備えて装備を身に着け、訓練場に少し前倒しで到着する。
さすがに講集の3時間前に来るのは俺だけで、後は個人で訓練している人たちだけだった。
いつも通りに体を柔軟等で解し、訓練場の周りを周回して走り込む。それが終わったら筋トレをする。筋トレの次に、訓練用の案山子の様な的にタクティカルナイフで近接格闘の訓練をする。
近接格闘を一通りこなして射撃に移る。
射撃は、立ち撃ち・膝撃ち・伏せ撃ちで撃ち、状態を確認して行く。
それぞれの訓練をこなしている内に集まりだしたのか、射撃が終わる時には受講者・教官の全員がそろっていた。
相変わらず俺の銃に興味があるのか、射撃をしていると周りに人が集まってくる。
講集を受けてる連中も興味があるようだ、特にヤンキーたちはゲスな笑みを浮かべながら何か話をしている。俺のを奪うつもりか?銃は使えるからな、撃てればの話しだけどな。
「よーし、揃ってるな。
それでは今日は模擬戦をするぞ、それぞれ防具以外は訓練用の武器を使え。
ソーマ、お前はどうする?変わりに使えそうなのはあるか?」
銃の代わりなんか勿論ないよな。
「大丈夫だ、コッチを使うからな」
訓練用のナイフを持ちガインに銃を使わない事を示す。
それからは、特に問題が無い様に見えたが幾つかの小さな問題が有った。
参加者のほぼ全員がドが付くほどの初心者で、俺とチットぐらいしかまともに動けなかった。
ヤンキー共はやはりヤンキーでしかなく、武器を振り回すだけなのに変にいかがっていた。
他の連中もまあ素人なりの動きで頑張っている感じだった。
模擬戦では、チットと俺が最後まで順当に残った形だ。
俺の場合は反則ステータスもあるが訓練の成果もあるのだろう。チットの場合は以前何処かで師事していたみたいで、動きそのものは俺よりも動けていた。守りだけではなく攻撃等の動きも相当だった。
近接格闘が無ければ俺も他のヤツらと一緒だったし、武術の才能がなければこうして冷静に物事を見る事が出来なかっただろう。
武術の才能は買っておいて良かった。例えば剣術等も個別にコンビニで買えるがそれ1つだけしか習得できない。しかし、武術の才能はスキルをいきなり覚える代わりに擬似的に武術系統のスキルを再現して、修得の切っ掛けを作ってくれている。
一見して便利だが、この才能はスキルではないので本物のスキルと打ち合ったら負けてしまうのはしょうがない部分だ。
しばらく模擬戦を続け、個人個人に教官たちが指導して改善を図っていった。
俺はメインの武器が特殊な事もあり放置気味になっていたが、ガインが近接格闘と銃を同時に使う事は出来ないのか?と聞いてきて無理だと答えた。
理由としては簡単で、銃が壊れる。それにそんな動きを訓練するのに使える弾がないのだ。機会があれば試してみたいけどな。映画とかであるガンカタだっけかな?あんな動きができれば格好言いしな!
訓練が後半になると各々が、個人訓練・模擬戦・教官との質疑応答をするようになってきた。
「ポーター、俺と勝負しろよ」
名前なんだったけかな。えぇーと、もうパンチで良いや。
こちらが返答しないが目線で拒絶しているのに気が付いたのか、勘違いしながら更に言ってきた。
「ビビってるのか、やっぱりポーターになるのは腰抜けばかりだな。
なあ、ダルフ!」
「ウッヒャヒャ!そうだな!
こいつも腰抜けの1人だな、どいつもこいつも歯ごたえが無いし。
俺たち、ひょっとして無敵?」
馬鹿が馬鹿な話で馬鹿な笑い方をしている。
最初の模擬戦で俺が最後まで残っていたのを忘れてるみたいだ。
パンチの相方の名前も忘れちまったな、こいつはリーゼントで良いや。
「で?話はそれだけか?
終わったんだったら退いてくれないか?」
「はあ?
お前何調子に乗ってんの?
俺たちに勝てるとでも思ってんの?」
いつ2対1で戦う事になってんの?
「まあ勝てるだろうな。
なんせ戦略なし、技術なし、まともに訓練もしない、装備は・・・・この際いいか。
兎に角、力任せにしか戦えない様なヤツに負けないだろうな」
「言ってくれるねぇ、じゃあそのお強いポーター様に1つ相手して貰おうかね!」
秘かに回り込んでいたリーゼントが、不意打ちで後ろから剣を振り下ろしてきた。
秘かにって言っても丸わかり何だけどな。
「別に幾らでも相手するぞ?」
動きも素人の動きだから最低限の動きで横に避けて、そのまま後ろに居たリーゼントの腹に、防具の上から肘鉄を軽く当ててやった。
「何かしたかポーター、効いてねえぞ」
手加減してるのに気が付かないアホ1人。
「お前!・・・・・何で止めるんです」
教官の1人がいきなり始まった2対1の模擬戦モドキの喧嘩を止めようとした時、ガインに止められていた。
「あれ、なんに見える?
俺にはソーマが遊んでいるとは言い過ぎだが余裕に見えるんだが?」
ガイン達教官組みは本来、新人に良くある喧嘩を止める立場なのだが、蒼真は2人の攻撃を軽くいなしていた。
「・・・・・凄い」
残っていた新人組も蒼真たちの模擬戦を見ていて、誰かが呟いていた。
それもそのはずで、絡んだ2人組は武器を持ち、蒼真は素手で相手にし続けていた。
いい加減飽きてきた。
「ちょろまかと、止まれよ!」
いやいや、何言ってるの?止まるはず無いでしょ。
相変わらず俺を挟む様にして攻撃してくるが連携も何も有った物ではなかった。
「はぁ・・・良いか?まず」
パンチの攻撃を避け、ガラ空きの脇腹に拳を撃ちつける。「グブ!」っと呻くパンチ拳を打ち付けたのと同時に後ろにいるリーゼントのこれまたガラ空きの足に座る様に屈みながら回し蹴りを当て態勢を崩させる。
態勢を崩したリーゼントの顎に屈んだ分勢いをつけて立ちながらアッパーを打ち込み、完全に動きを止める様にする。
まだ痛みから回復していないパンチの胸倉を掴み引き寄せる。
「連携が取れていないから各個撃破される。
更に、こうしてまともに訓練をしないから動きに付いていけない。
その上相手を見下すだけ見下して知ろうともしない。
お前らこそ役立たずなんじゃないか?」
言うだけ言ってもう1発腹に殴ってパンチを投げ捨てる様に解放する。
「絡んで来るんだったらもっとマシになってから来いよな」
そう言ってその場を離れると、残りの全員がこちらの事を見ていた。
「少しやり過ぎだ、ソーマ。
でも、代わりにヤッテくれて俺たちの手間が省けたぜ」
ガインが近づいてきて、俺の方をバシバシ叩きながら言ってきた。
「あぁ、あれか?
別に、たぶんあいつ等コレが狙いだろうしな」
両足にある銃をポンポンと叩きながら小声で伝える。
「確証でもあるのか?」
「あぁ、あいつ等が俺を見ている時は俺ではなくて銃をガン見している。
挙句隙あらば盗もうと狙ってきているしな。
バレバレなんだよ」
「あいつ等は底抜けの馬鹿なのか?」
「多分な」
この世界で、ギルドに登録されている人物が窃盗をするのはかなり厳しい犯罪とされている。
特にギルドメンバーの装備品を盗むのは、バレれば即刻犯罪奴隷にされるぐらいだ。
「わかった、コッチでも気を付けておく。
それじゃあお前たち!今日はここまでにしようか!
明日は街から出て狩り・討伐と、素材の剥ぎ取りの仕方を教えるからきちんと用意しとけよ!
朝、朝飯を食ったら少し早いが8時にギルドの入口前に集合だ。
遅れるなよー!では解散!」
解散宣言で、バラバラに帰って行く。
ギルドの教官たちにヤンキーの馬鹿どもが運ばれて行く。あの位で動けなくなるとは情けない。
帰ろうとした時に、アレク、チット、スロウ、ニコが近寄ってきた。帰ったんじゃなかったのか?
「ソーマだったよね君、何処かで働いていたのかい?
例えば騎士団とか」
アレクが聞いてきたけど残念だったな。
「いいや、ココが初めてだと思う」
「・・・始めてって?」
スロウが聡く聞いてきた。
「俺、記憶無いんだよね。
気が付いたらココから近くの森の中に居たからそれ以前の記憶はまったくね」
俺の答えにヤッテしまったと思ったのか。
「済まない、知らなかったとは言え失礼な事を」
アレスが即効で謝ってきた。
「別に良いんだよ。
俺も1つ聞いて良いか?」
「良いよ、何でも聞いてくれ」
「お前たちはグループで動いているのか?
何かいつも一緒に居る気がするんだが」
「そうだよ。皆、この街の出身で、今後は研修が終わればパーティー登録できるからそれからになるけどね。
ちなみにパーティーリーダーはチットになるんだけど」
「そっか、名前は決まってるのか?」
「実はまだなんだけね」
決まってないのかよ。
「わかった。済まないけど俺、明日の準備が有るから行かせて貰うよ?」
「あぁ済まなかった。
明日からも宜しくな!」
宜しくも何もないんだがな。
手を振ってアレクたちから別れて自分部屋に向かって帰る。
「あの方で良いのでは無いですか?」
蒼真が離れて行った後、アレクたちはギルドの食堂に集まっていた。
「どうしてそう思うニコ」
チットの質問にニコは迷いながらも答えていく。
「そうですねぇ、1つはあの戦闘力ですかね。
それに、勤勉な所も良いかと」
「そうだな、そこは評価できるか。
他に有るヤツいるか?」
「彼の戦い方も良いんじゃない?
彼が居れば前衛から後衛まで幅が広がるわ」
「確かにな、ウチには自由に動けるヤツがいないからなぁ」
「でも彼、誰も信用してない様に思えるんだけど?」
「それは仕方のない事ではないのでしょうか、実際あの方は記憶が無い事が受付の・・・エレスさんに確認できていますし。
ココには知り合いと呼べる方も殆んどいらっしゃらないでしょうから。
こちらから歩み寄れば良いだけではないのでしょうか?」
アレクの指摘にニコがフォローする。
実際は、ニコが言っている部分に正解が含まれているが本当はただこちらの人に馴れていないだけだったりする。
「よし、じゃあ彼に声だけでもかけてみるか。
ダメだったらその時はその時でしょうがないと諦めよう」
如何でしたでしょうか、なるべくコンパクトになる様に頑張って行きたいと思います。
引き続きご意見ご感想をお待ちしております!