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xross adventure-neverend challengers-  作者: 鬼々崎うらら
生徒会編
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xross adventure!-ar- 01;04



「何なのだ!主人公のヒロインに対する朝の第一声が"ダルい"!?昨日一体何があったのかは知らないが・・・、もう少し爽やかなセリフは無いのか!」

「おはよう今日も良い朝ですねああこんな晴れ渡った日には君と一緒に泣きゲーのバッドエンドでも見て胸糞悪くして無差別に八つ当たりしてェなァ」

「もう少し主人公らしい発言はできないのか!?」

翌日、朝9時。賢治の目の下は黒く染まっていた。

昨夜から、賢治は全然睡眠につくことが出来なかった。あれだけ自分の住む部屋が散らかっていたら、さすがに面倒屋の賢治も片付ける気になってしまう。


昨日、賢治が水晶玉に触れた時に現れた彼女は、普段からマヤと賢治と共に生活している"妖精王"オベロンだ。

"妖精王"、オベロン。

元々、偉人であるシェイクスピアの戯曲"夏の夜の夢"から、マヤの手によってこの世界に召喚されたという、言わば御伽噺の登場人物。

常に紫のウェディングドレスを身に付け、後ろで纏められながらも余る程の金髪の上にはティアラが輝いている。おまけに美形といった、一言で表すなら"姫"といったところだろう。

部屋が荒らされていた昨日、賢治は水晶玉に触れてオベロンを召喚したのだった。

賢治は、気になっていることをオベロンに質問する。

「なァ、ベロンベロン」

「オベロンだ」

「お前には、ここで何があったか説明してもらいてェんだけどさ」

「水晶玉に入った状態でどう外界を見ろと?」

「はァ・・・。じゃァあれだな?何も分かんねェってことか」

「騒音は聞こえたが、ここで何が行われていたのかは知らんな」

つまり、オベロンも部屋で起きたことに関しては何一つ知らない訳だった。


「はァ〜あ、結局マヤも帰って来ねェしなァ」

学校で一人、溜め息混じりに呟く賢治は、あることについて少し考えていた。

マヤの件と、賢治が受けた強襲事件の関連性。

関係性があるのでは?という考えが頭に浮かぶ。

どちらにしても、原因不明で怪し過ぎる。

どうも結びつけずにはいられなかった。

と、考えていた頃ちょうどに。

「賢治・・・、賢治!」

「あァ?」

ちょうど考え事をしているところを鈴に止められ、少し機嫌を損ねて返事をする。

どうせまたどうでも良いことだろ、と賢治は思っていた。

どうせ、'いつもみたいに'。

だが。


「風紀委員会の会長が虐められているのだぞ!」


このどうでも良いような他人事と付き纏う疑惑から、非日常は加速していった。




賢治と鈴が廊下に出ると、何やら人集りが出来ていた。

掻き分け掻き分けながらも一向にその人集りの中心に辿り着くことが出来ない。

「ッたく邪魔だなオラァ!!!」

賢治の右腕による怒りの一掻きによってようやく人集りの中心で'行われていたことが視認できた'。

この学校では基本的には生徒全員が指定されたブレザーだが、それとは全く違う金色のボタンが目立つ真っ白な学ランを着用して、青フレームの眼鏡を掛けた少年が数人の男子生徒に囲まれて立っていた。その少年を取り囲む5、6人程の生徒達は全員柄が悪く、明らかに不良少年だということが分かる。

眼鏡の少年が左腕一本のみで抱えていたのは、眼鏡の少年の背丈程の巨大ハンマーだった。

「生意気なんだよなぁ〜、お前さぁ?」

不良少年の一人が、眼鏡の少年に話しかける。会話中だった。

「インテリが取り柄なだけのお前が生徒会に文句付けてくんじゃねぇよ!」

話しかけていた不良少年が立っていた眼鏡の少年を突き飛ばし、突き飛ばされた眼鏡の少年は力が掛けられた方向に何の抵抗もせず、廊下の壁に勢い良く叩きつけられる。巨大ハンマーが壁にぶつかりカーンという音を響かせたと同時に廊下が騒がしくなった。

「何?アレ・・・」

「イジメ、だよな?」

「ちょっと、堂々とやり過ぎでしょ・・・」

ガヤつく生徒達を他所に、不良少年達の暴力行為は続く。

「風紀委員会の運営費カットになったからって生徒会を疑うのか?あぁ!?ナメてんのかこの野郎!」

廊下に響き渡る怒声と同時に、今度はまた別の不良少年が殴りかかる。当然、ガードも何もしない眼鏡の少年はただ壁に打ち付けられるだけで、やられてばかりである。そしてガヤつく人集りの生徒達。

この騒ぎでよくも教師が飛んで来ないもんだ、と賢治は思う。

「なあなあ賢治よ、止めに入った方が良いのだよな・・・?」

この騒ぎの中、一人ビクビクと怯えながら一部始終を見ていた鈴は、賢治にそっと小声で質問する。12歳の子供である鈴が、主に16、7歳の人集りの騒ぎの中にいるのだから、怯えても当たり前だろう。

「面倒」

「面倒ではないのだっ」

回れ右をして教室にさっさと帰ろうとする賢治を鈴が腕を捕まえて止める。

その時だった。

「おっ?お前、ランク5の賢治か?」

先程一発目に眼鏡の少年を殴り飛ばした不良が、賢治を見るなり楽しそうに話しかけてくる。

「あ?賢治だって?あの'無能力なのに特待受けた'ヤツのことか〜?」

ギャハハといきなり大声で笑い出す不良少年達と同時に、周りに集まっていた生徒達の注目が一気に賢治へと向けられる。

賢治は、馬鹿にされていた。

「・・・賢治」

鈴は恐る恐る賢治の表情を伺う。

「無能力な人間が能力者の集う学校に来て授業受けて一体どんな意味があるんだおい?いいか?無能力者は能力者の授業を100回受けたところで、ご都合主義の少年マンガみてぇにある日能力に目覚める訳じゃねえんだから無能がこの学校来てもなぁ?」

この次の言葉を、不良少年はありったけの皮肉を込めて言い放った。

「お前さぁ、ここでやれることあるの?ん?何も無いんだろ?ん???」

不良少年達の笑いが高まったその瞬間だった。

その瞬間の直後、まさに直後。

「・・・・あ?」

その場の空気を仕切っていた不良少年達の注目が一気に賢治に行く。

「・・・!」

そこで何が起こったのか、誰もさっぱり分かることでは無かった。

形の無い、何かが賢治の周りで崩れ落ちた。


賢治のオーラが、一瞬にして怒りそのものに変わった。

賢治のそれは、周りの空気さえも巻き込んだような、例えるならば。

"空気に亀裂が入った"。


「・・・っ」

不良少年達から笑顔が消え、目の色が変わる。それを囲んで眺めていた生徒達の視線も集めた賢治は、ただ無言で見つめていた。

そこに立っている彼、賢治は。

総ての光を閉ざしたような、どこまでも広がる闇のような瞳で不良少年達を睨みつけていた。

「・・・けっ!」

不良の1人が、賢治の支配している空気を振り払うかのように動き出す。

「・・・なんだその目?俺らは事実言ってるだけだろうがぁ?」

他の不良達もそれで調子を取り戻したのか、そうだと言わんばかりの目で賢治を睨み返す。

そして、眼鏡の少年に変わり、今度の虐めの対象はーーーーー、

「生徒会直属近衛部隊の俺たちに生意気な態度取るヤツは生徒会への侮辱として見なし、全員違反者としての罰を与えることになってんでなぁ!!!」

ーーー賢治となっていた。

「・・・賢治!」

今の今まで状況が脳内処理されず暫し混乱状態だった鈴がハッとする。先程声を上げた不良少年の一人が、賢治目掛けて廊下を走って来たからだ。

明らかに、誰がどう見ても、ターゲットが賢治だった。

しかし、その本人は。

逃げようとも避けようとも止めようともせず、全くもって微動だにしていなかった。

'腰のとあるホルダーに手を掛けている以外は。'

「・・・賢治」

鈴はただ、賢治の側に寄り添っていた。

賢治のブレザージャケットの裾をぎゅっと掴んでいた鈴は、'賢治を止めようとはしなかった'。

不良少年がどんどん賢治に迫り、あっという間に間を詰められた。

不良から5メートル程離れていた為、すぐに間を詰められてしまった。

「調子乗んなよ無能特待生!!!」

不良少年が右腕を勢いのままに賢治へ伸ばす。

その右手は握り拳となっており、顔面目掛けて飛んで来る。

それは賢治の目の前にまで迫り、あと2、3センチで拳が顔面にぶつかるーーーー


「面倒クセェ」


その一言を発したのはーーーーー、不良の飛んできた拳を目前にした賢治だった。

賢治の目の前にある不良の拳は、僅か数ミリのところで動きを止めていた。

止められたその拳は、僅かに震えている。

不良少年が飛ばして顔面直前に止めた拳の反対側、賢治と対局に向かい合った状態の不良少年の目の前に、'一丁のハンドガンが構えられていた。'

賢治の伸ばした右手に握られたそれは、確かにハンドガンだった。

ゴツゴツとしたシンプルな形が特徴のそのハンドガンは、賢治が先程まで腰のホルダーに差していたデザートイーグル。その先にある真っ暗な穴を、不良少年の目と目の間に向けていた。

「ーーーー!!」

咄嗟に危険だと判断した不良少年は拳をゆっくりと鎮め、素早くバックステップした。

先程の余裕の雰囲気は無く、賢治を少し睨みつけただけでどこかへ行ってしまった。

「・・・生徒会直属の近衛部隊にケンカ売ったこと・・・、後悔すんじゃねえぞ!」

と言い残して。

さて、とため息混じりに呟いてデザートイーグルをホルダーに仕舞うと、周りからの大量の視線に気付いた。

「・・・マズいな」

と、呟くものの。

「・・・まァ、今の見られてたんじゃしゃあねェか」

賢治が気にしていたのは、自分が人に対して銃口を向けたことだった。

どうせ、誰かがチクってセンセーにバレる。

・・・とは分かっていたが、取り敢えずその場から急いで逃げた賢治と鈴だった。





「・・・まったく、賢治くん?」

場所はランク5生徒の教室内、夕焼けに照らされたオレンジ色一色の中に向かい合う2対1の席。

片方にはここの担任である教師のマキノが、その隣には申し訳無さそうにもじもじと座る鈴がいる。2人と向かい合うように用意された席には相変わらず目つきの悪い賢治が座っていた。

「センセー、あれはセートーボーエーと言って、自分の身を守る為に行ったやむを得ない行為ですがァ?」

「私も現場を見ていないから、そこら辺を断定は出来ないけれどね・・・、と、とにかくね?例え実弾の入っていない銃だったとしても、人に対して向けるっていうのは、た、タブーってものなんじゃないかなって」

マキノは独特な詰まったような口調で賢治を注意するのだが、マキノ自身内気な教師である為に上手く賢治を叱ることが出来ない。マキノはただただ、自分が犯してしまったタブーを正当化しようとする目の前の教え子に、困った顔で大きく溜め息を吐くくらいしか出来なかった。

「暫く停学処分っていう形になるけど・・・、き、気をしっかりね!」

「何にだよ」

賢治から冷静にツッコミを入れられ、励ますつもりが「あ、うぅ」という小声で誤魔化してしまう。賢治もそれに慣れているらしく、小さく溜め息を吐いて頭をボリボリ掻き始める。

「まァ、1週間停学だけなら別に大したこたァねェな」

「す、少しは反省してくださいよぉ・・・」

マキノは賢治に言うが、その本人は特に聞く様子も無く、席を立って教室を出ていこうとする。

「では、私も帰るのだ」

鈴も席を立ったところで、ちょうどマキノが何かを思い出したかのように鈴に話しかける。

「ああ、そうだ鈴ちゃん。生徒会の方から呼び出しがあったよ。ま、まさか賢治くんにつられて何か悪いことでもしちゃったの!?」

「俺の所為みてェにすんなよおい」

「何もしてないのだが、初めて呼び出されるのだ。私も気になるのだ」

鈴は首を傾げながら答える。賢治は今が夕方であることを思い出し、ふと時計に目をやる。

短い針が5寄り、長い針が9と10の間。だいたい16:47といったところだろうか。

12歳の子どもをもうすぐ暗くなる時間に1人で帰らせてはいけないと思い、賢治は鈴を待つことにする。

「さっさと用事終わらせて来いよ」

「生徒会の呼び出しだから、きっと遅くなるぞ?」

「お前1人で帰れんのかよ」

すると鈴はにっこりして返答した。

「生徒会の者と共に下校するから大丈夫なのだ!」






「ンァ・・・、朝か・・・」

カーテンの隙間から覗く朝日に照らされたベッドの上で、長い髪をボサボサにした賢治は眠い目を擦りながら起きる。

閉められたカーテンで暗くなっている部屋の出口を探し、自動ドアを開く為のスイッチであるタッチパネルへ手をかざしてリビングへと出た。

リビングは片付けられており、テーブルの上に置いておいた買った食パンを開け、すぐ側のキッチンにあるトースターに入れてセットする。

リビングは、病院から退院したあの日とは違い、スッキリと片付けられており、しっかりと掃除もされている。意外にも綺麗好きな賢治が全て片付けたのだった。

そう。あの日以降、賢治の養母であるマヤは未だに行方不明だ。

停戦同盟軍のメンバー鍛え抜かれた最高の特殊部隊であり、賢治以外のメンバーにも捜査を手伝ってもらっているが、手掛かりすら見つからないといった状況だった。

そして、賢治の停学もかれこれ一週間が過ぎたこの日こそ、久しぶりの登校日である為、停学中はだらだら寝ていても良かったものが今日になって再び早起き生活を始めなければならない。

「停学中にマヤ探しても見つかんねえしなァ」

正直、賢治は心配だった。一見、賢治の様子は仕方なく義母であるマヤの行方を捜査しているように見えるが、感情を出すのがどうも恥ずかしく、本音が言葉として出ることも無ければ顔に出ることも無い。

マヤは、どこへ行ってしまったのか。賢治の一週間の停学中、そんな不安感が賢治を襲い続けていた。


とりあえず朝食を取り、一週間ぶりに学校のブレザーに袖を通すと、黒のロンファーを履いて部屋を出て行く。

ふと、賢治は出てきた部屋の自動ドアを振り返る。

「マヤの部屋」と黒マジックで書かれたダサい自動ドアは、この部屋の主がいなくなった今でも何ら変わりは無い。

しかし気にしていても仕方ない為、賢治はマーベラス国立学院への登校の足を進めた。


「・・・で、何でこの間のお前がここにいる訳だァ?」

学校に着くなり、昇降口の下駄箱にて賢治を待ち構えている生徒が一名いた。

それは一週間前、賢治達ランク5の教室の前の廊下で、不良少年達に殴られ蹴られていた眼鏡の少年だった。

しかしあの時とは違い、真っ白の学ランでは無く賢治と同じ学校指定のブレザーだった。

そして急ぎの用らしく、賢治の教室までの足を堰き止めてまで話したいことがあるらしかった。

「鈴・・・と言ったかな。あの子といつもいるのは君、賢治君か?」

「・・・?あァ、まァそうだ」

唐突の質問に首を傾げながらも、とりあえず答える賢治に、眼鏡の少年は話を続ける。

「俺は、ランク2で勉強をしている白城颯だ」

「白城颯、ねェ・・・」

真っ白な学ランを以前着ていた眼鏡の少年は、白城颯(しらしろ はやて)と自ら名乗った。賢治はその名前を聞くなり、少し考え込むモードに入る。その様子から、以前聞いたことのある名前ではあるらしかった。

「・・・誰だっけ?アンタ」

なかなか思い出せずに、いよいよ考えることを放棄した賢治は颯に聞く。

「白城颯だ」

「いやそっちじゃなくてなァ・・・」

言葉の足りなさのせいで颯に上手く伝えられないことに少々苛立ちを覚えながらも、それをどうにか抑え、頭をボリボリ掻きながら聞き方を変えた。

「ほら、お前さァ・・・、何かやってるお方?」

ああ、と颯はようやく理解し、自己紹介を続ける。

「風紀委員会の委員長を務めている。だから名前は広く知られてはいるが、能力面での劣りのせいで他の者達から風紀委員会の長なんざ務まらないと非難ばかり受けていることで有名だ」

「そりゃァお気の毒に」

賢治は特に興味を持った訳でも無く話を流す。すると颯が、話題の内容を鈴のものへと変えてきた。

「あまりダラダラと説明するのもあれだからな、単刀直入に説明する」

颯の口から出て来た言葉は、賢治に多大なショックを与える現実だった。

「マーベラス国立学院ランク5の優秀生徒、三上鈴は、一週間前より行方不明になっている」




































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