?;Unknown.
城内、ここは城内だ。
どれだけ走ったろうか、既に右足首は挫いた後の痣、左腕は二の腕部分が骨折、頭から出血、親指のみ爪が剥がされた右手。少年は、とうに限界を超えており、寧ろそれら全ての怪我で負う筈の激痛は感じない程になっていた。裸足で走っていた為、足裏は傷だらけで、小休憩などしていればこちらもまた激痛に違いない。
だから、少年は走る?
ーーーーーー否。
では、そこまで重症になりながらも、何故走るのか、何故戦うのか。
何故、少年と対局の筈の"光"を真っ直ぐに見続けるのか。
それは本人にも分からない一番の謎だった。きっと、どのような賢人を連れて来ても、どんなに歴史的書物を揃えても、どんな魔法使いを揃えたところで分かりもしないし、少年を止められはしない。
少年には棘があった。誰から嫌われる為や訳あって自分に友達を作ってはいけない為など、そういうことでは無く、ただただ、少年は荒かった。
少年は"影"に選ばれた。棘のある荒い性格、そしてやや根暗である少年を鏡写しにしたような、"影"。
だがしかし。
少年の荒い性格はきっと、棘もきっと、少年の強い正義感から来ていたものなのかも知れない。
ふと気付くと、静寂が広がっていることに気付いた。
少年は傷だらけの足を止めて、城内の人気の無い廊下であることを確認する。腰に差さっていたハンドガンを取り出し、マガジンを引き抜いて弾を装填する。装填された弾数は一発分、その装填されたマガジンの中には、とても弾丸とは思えない黒い何かが一発分あった。
マガジンをゆっくりと銃にしまい、トリガーを引く。銃の上部の取り付けられている可動部が勢い良く一往復する。
少年が最後の準備をし終え、覚悟の意を決めたその時だった。
「ーーーーッ!!!」
右腕が、まるで見えない鎖に束縛されて誰かに引っ張られるように持っていかれる。
いや、物理的ではないが、確かに鎖で束縛されていた。
先程のハンドガンのリロードの如く、勢い良く怪我した右腕が後ろに引っ張られた為、少年は再びの激痛を覚える。何回もやられたこの行為で、いよいよ右腕が引き千切れてしまう感覚さえあり、少年は僅かに嫌な汗を吹き出し始めていた。
決着を付ける。
負けない。
それだけ、少年はそれだけを考えることにし、あらゆる思考回路をいよいよ停止させた。ただただ、"光"を真っ直ぐ見ていられるように。
アイツを助け出す為に。
結局何も気付け無かった俺の、この気持ちを、アイツに、この口で。
この声で、この目で、この全身でーーーーー!
伝える為に。
助けを呼べばいつだって誰か来る。少年にも、頼れる仲間はいる。
だが。
「・・・男ってのはなァ、自我ばっか通して我が儘以前の頑固野郎だけどよォ」
少年は、後ろに身体ごと向く。
その顔にはーーーーー
「ブッ飛ばされるべきクソ野郎を潰す時くらいは、誰にも譲る訳にゃいかねェんだよォッ!!!!!」
笑みがあった。自信の笑みがあった。
少年は左手に握っていた、先程リロードされたハンドガンを前の闇に向ける。
左腕を完全に伸ばしサイトを見つめて標準を確定し、引き金に人差し指を掛ける間、僅か1秒。
目の前の、許されざる敵を打ち、撃ち、射ち、伐ち、討つ為。
最後の引き金を引き、静寂を切り裂いた。