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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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アネモネ2

作者: ふつか苺味
掲載日:2014/09/08

「今日も課長に怒られたんだ」


 俺は半泣きで愚痴を零していた。

 こいつに愚痴を聞かせるのは俺の日課となっていた。




「お前怒られてばっかりだな。何したの?」

「十個発注を、百個発注と間違えた」

「馬鹿……」


 空は橙色に染まっていた。

 ビルや住宅街や、電柱の影が、黒く変わる。

 仕事を夕方で無理矢理終わらせ、なんとか帰宅した俺は、明日仕事行きたくないなぁとぼんやり考えていた。


「よくクビにならないな、それ」

「なんでだろ? なんだかんだ、課長に気に入られてんのかな」

「ふーん……あ、というかお前、また電気つけっぱで寝てただろ」


 怒りに満ちた顔が、居間に寝転がる俺を覗き込む。

 そういえば、昨日テレビと電気をつけっぱなしで寝てしまったんだった。

 俺は寝転んだまま両手を合わせる。


「ごめん~」

「ごめんじゃない! 今月入って何回目だよ?」

「……六回目?」

「七回目」


 こいつは、フウと溜息をついて家計簿に目を落とした。


「また赤字だ……今月やばい。お前の給料と、俺のバイト代でギリギリ」

「んー、まぁなんだかんだ言って、いつも何とかなるじゃん」

「……なるけど……」


 曖昧な返事をし、再び空を見た。

 いつの間にか橙色が濃くなって、空は紫色を帯びていた。

 この季節は、日が落ちるのが早い。


「……ふふ」

「何? 気持ち悪い」

「やー、なんか前にも、こんなことがあったような気がして」

「いつ?」

「……お前と出会う前?」

「俺とじゃないのかよ」

「いや、お前と」

「は? 電波ちゃんか?」


 見下され、鼻で笑われた。

 椅子に座るあいつと、床に寝転がる俺では、必然的に俺が見下ろされる体勢になるが。


「うりゃ!」

「わっ!」


 それでもやはりムカついたので、俺は床をゴロゴロ転がり、あいつの足に巻きついた。


「離れろうっとおしい! しかも汚い」

「ヤダ」


 甘えた声でそう言うと、こいつは徐に立ち上がり、俺を蹴って布団の方まで転がした。


「いってえ……」


 頭を打ってクラクラする俺に、ボフッと覆い被さってくる。

 整った顔が間近にあり、身体が強張る。

 お互いの心臓が、強く脈打っているのがわかる。


 俺はドキドキしながら目を閉じた。

 が、いつまで経ってもキスが来ない。

 不思議に思って目を開くと、こいつはプハッと噴き出して笑った。


「ふは、何、キスしたかった?」

「!!!」


 悔しくて恥ずかしくて堪らなくなった俺は、こいつの後頭部を引っ掴んで無理矢理口付けた。




 *




 窓際に置かれた、名前も知らない造花。


 二人で住むには、狭すぎる部屋。

 毎月ギリギリの貧乏生活。

 何の障害もない、平穏な恋。


 こんな当たり前の光景を、ずっと、ずっと、待ちわびていたような……。




「何泣いてんだよ……」

「……俺、お前と出会えてすげえ幸せ……」

「ええ、何いきなり? 気持ち悪いなぁ」


 こいつは笑いながら、指で俺の涙を拭った。



-END-

※解説


「アネモネ」


財閥の跡取り息子と一般人の高校生の男の子同士が恋をします。

しかし両親や、周りの皆から反対され軽蔑され続け、堪えきれなくなった二人はありったけのお金を持って駆け落ちします。

連れ戻されてからは外出も厳しくなり、財閥の跡取りは高校卒業とともに許嫁と結婚させられる運命になりました。

現世でどうしようもなくなった二人は心中を決意します。


「アネモネ2」


生まれ変わった後の二人の話。

元財閥の跡取りは前世の記憶はありませんが、元一般人の男の子は薄っすら記憶があります。

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