先輩たちの不始末、新人が背負う理不尽。
「まさか……。ミュンヘンに会社があるのにドルトムントのファンだなんて。……まあ、うちの社長みたいに、別の地域の球団を追いかけてるパターンもあるかもしれませんが……」
「まあ、そうだな……! 会長ほどの御方が、まさかライバルチームのファンだからって理由で俺を川に沈めたりするか? ……いや、俺たちの社長ならやりかねねえけどな」
ライムはそう言って笑い飛ばした。すると、トラダリー・スパンが声を上げた。
「Hey, Guys……到着だぜ。……さあ降りよう。これから真の 『Lit』 が始まるからな……」
サッカーチームのプライドで生死を論じていた者たちが、ついに資本主義の頂点であるBMQの心臓部へと足を踏み入れるのだ! トラダリーの『Lit』な叫びは空虚な駐車場に響き渡り、元キラーとロックスターはポケットの中のレアル・マドリードのバッジを握りしめながら戦意を固める……なんとも奇妙な光景! カモワードよ、お前がこれから目にするのは、正体を隠した会長よりも恐ろしい、『真の依頼』の正体なのだ!
車を降りるなり、目の前に現れた数十人の武装警備員を見て、エドワードは肝を冷やした。
「……トラダリーさん、これのどこが『Lit』な状況なんですか? 僕はただ『Exit』したいんですけど……」
我らが情けないカモワードはそう毒づいたが、時すでに遅し! 入る時は自由でも、出る時はそうはいかないのだ!!
警備員の一人がグラウンド・Dに歩み寄り、冷たく言い放った。 「おい、貴様……。武器の持ち込みは禁止だ」
その言葉に、グラウンド・Dが突如として激昂する。 「武器だと……? これは俺の身体の一部だ!! 何も知らねえ分際で、お前が口出ししていいもんじゃねえんだよ!!!」
絶体絶命だ、カモワード!!!!
その横でマックスは、手際よく写真を撮りながら「BMQの警備員の民度見て。急に来て全てを奪おうとするドイツ人の民度終わってる……。Meのブラザーは包囲されてるぜ」というクソ投稿をぶちまけていた。
#ドイツ_人種差別 #芸術弾圧 #FreeGroundDee
ここはロビー一階。正体不明の怪漢たちが侵入! 武器を所持! 直ちに協力を求む! 警備員Aは他フロアの警備員たちに報告――ヒップホップ界の用語でいうところの、いわゆる**『Snitch』**を始めたのだ……!
それを聞いたトラダリーが叫ぶ。 「What the fuk???? What did you say nxxxx? あの野郎、今 Snitch してやがるぜ、Bro……。なんて **Mother fuking** な奴だ!!」
コーティもこれに続く。 「What……? Snitch……? Homicide……Homicide……!!!!! Schweah!!!!」 あろうことか、Snitchを働いた警備員をこの場で「始末」しようと息巻き始めたのだ……!!!
するとマックスはこのバカげた状況をさらに加速させるべく、またしてもツイッターに指を走らせる。 「BMQの警備員の野郎、ついに Snitch までしやがった。BMQ不買運動レッツゴー」
#No_BMQ #ドイツ企業の正体 #Snitch
「この野郎……。よりによって Snitchだと……? ぶち殺してやる!! クソがッ!!!」
グラウンド・Dは理性を失い、銃をひったくった。流石はラッパー、密告には人一倍過敏に反応しやがる! 全くいかれた連中だ! これがヒップホップ精神ってやつか!? 尊敬の念すら湧いてくるぜ! カモワードよ、あんな風になってはいけないぞ!!
「待ってください! 待ってくださいってば!!!! 僕たちは『デミアン・デモニクスのなんでも承り所』から来ました……! マテオ・シュヴァルツビンガー会長の依頼で来た、傭兵事務所の者なんです! これを見れば分かるはずです……!」
ここでエドワードが、ついにカモワードらしからぬ、この事務所でも数少ない「まとも」な行動を取った! 成長したな、カモワードよ!! ああ……二話の間、カモのように騙される姿ばかり見てきたこのナレーションおじさんは、涙が止まらないぞ……!
しかし、警備員たちはさらに声を荒らげる。 「今度は会長が依頼した傭兵を自称するのか! 者共、射撃用意!!」
「えぇぇぇぇ!?!?!?!?!?!?!?」
エドワードの叫びも証拠も、この脳筋警備員たちには届かない! 絶体絶命だ、カモワードよ!!
「おいおい! 俺たちは本当に事務所から来たんだよ。あんたのところの会長が雇ったんだって! これを見ろ! ほら、マナーズ公認特別資格証! 傭兵って書いてあんだろ!!」
ライムの必死の訴えにも、警備員は耳を貸さない。 「貴様ら……。まさか、本物を始末してマナーズに成り済ましたのか!!」
信じるどころか、疑いは深まるばかり! この世界には、まともな人間は存在しないのか……!!
「ライム……心配するな。ああいう奴には、最高の『対話手段』があるからよ……」
グラウンド・Dはそう呟くと、彼が信じる最高の対話手段――愛銃『Booga』を手に取り、彼なりの「対話」を始めようとしていた……!!!
その傍らでコーティは、今にも血を啜らんとする狂気に満ちた眼光で警備員を睨みつけていた……! トラダリーは「It’sn't lit!!! It’sn't lit!!!」と連呼しながら、警備員へとじりじりと詰め寄っていく。そしてマックス……このバカは相変わらず正気に戻ることなく、狂ったようにツイートを垂れ流していた……!!!
まさに地獄絵図が完成しようとしたその刹那……! 警備員の無線に連絡が入る。 「はい……本部長。……えっ? 本当だったんですか……? 承知いたしました……」 無線を切った警備員Aは、先ほどまでの食いかからんとする勢いはどこへやら、一瞬でビジネスモードへと切り替わった。 「……失礼いたしました。貴き御方々に不敬を働いてしまったようで……。こちらへどうぞ。会長室までご案内いたします」
するとライムは、待ってましたと言わんばかりの「カモを見つけた」顔で喚き散らした。 「ほら見ろ! 俺たちは正しかっただろ! おいあんた! あんたのクソみたいな判断のせいで俺たちは精神的苦痛を受けたんだ。きっちり弁償してもらうぜ……あぁん? さもねえと……あんたの会長に 『Snitch』 してクビにしてやるからな……!」
「も、申し訳ございません……! 必ずや弁償させていただきます……!!」 警備員たちはその場に膝をつき、平身低頭で許しを請うた。
だが、ここでラッパー四人衆の空気が一変する。 「おいライム……今、**『Snitch』**って言ったか……?」 グラウンド・Dが低く唸り、怒りを露わにする。 「Hey……英国のロッカーよぉ。今の言葉は 『Lit』 じゃなかったぜ……」 トラダリーが詰め寄る。さらにライムの背後では、 「Fweah~……(もう一度その言葉を吐いたら、貴様の口を引き裂いてやるぞ、このロリコン野郎……)」 という膨大な殺意を内包した「Fweah」を漏らすコーティ。 「Lime…… Me を Disappoint(失望)させるなよ……」 マックスまでもが脅しをかける始末!!!
ああ……こいつらは味方であっても Snitch(密告)をすれば容赦しないというのか!!! ヒップホップの規律は血よりも濃く、知能より優先されるというのか!! カモワードよ、この修羅場において、お前が信じられるものは本当に何一つとして存在しないのだな!!!!
「おい、待てッ、待てお前ら……!!!! 結局、俺が Snitch をしたか? してねえだろ……! こいつらから追加の賠償金をふんだくれるんだぞ……! なあ? あのクソ社長に渡す必要もねえ……! 俺たちだけで山分けしようぜ……!」
ライムのあまりにも見え透いた提案に、この馬鹿どもは一瞬で「あ〜、そういうことか〜」と声を揃えた。ついさっきまでの殺気は霧散し、大金を手にできる喜びで満面の笑みを浮かべる**四人のマヌケ(四人のうっかり者)**であった……!
その時……!!!
『おい、今なんて抜かした? 俺に渡す必要はねえだと? ふざけんじゃねえぞ、お前ら。あの警備員の野郎らから賠償金をむしり取って、俺に5割は差し出せ。もし1ユーロでも足りてなきゃ、その時は閻魔大王に拝ませてやるからな……』
デミアンのテレパシーによる一喝に、全員が衝撃を受けた……!! 一体どうやって……!!!! デミアン、お前はマキ〇さんか何かなのか!? 恐ろしい、恐ろしすぎるぜ……!!!!!
「……ああ、俺がバカだったよ。行こうぜ……」
ライムは項垂れた。警備員の案内に従い、五人の間抜けと一人のカモからなる傭兵集団は会長室へと向かっていた。 ロビーはすでに阿鼻叫喚、マックスのツイッターは炎上中、そして頭の中では社長が「金を出せ」と脅してくるこの奇妙な行進! 果たして彼らの運命は!?
「皆さん……ここが会長のいらっしゃる場所です。間もなく会長がお見えになりますので、恐縮ですが……少々お待ちください……」
警備員の言葉に、五人の間抜けたちは……。
「あぁ〜〜ん!? 客を待たせるのが礼儀かよ? あぁ? お前ら、それでもドイツを代表する企業かよぉぉぉぉ!!!!!!!」
案の定、ライムがこれ以上ないほど見苦しく喚き散らしていた。
「会長が来たら必ずクレームを入れてやる。呼んだ客を待たせるとは、大企業のサービスってのはそんなもんなのか?」
グラウンド・Dが苛立ちを隠さず吐き捨てると、マックスは相変わらずスマホから手を離さず投稿を続けていた。 「BMQの会長の野郎、俺たちを呼び出しておいて待たせやがる。これってアリか?」
#終わってる #No_BMQ
「It’sn’t Lit……It’sn’t Lit……」
トラダリーの呟きが虚しく響く中……。
ああ……カモワードよ、なぜこの恥ずかしさをお前一人が背負わねばならぬのか! ドイツ最上層部の心臓部で繰り広げられる、この無根拠なクレームパーティ! まもなく開かれる扉の向こうには、彼らの脳天を叩き割る会長が待っているのか、それともさらなるカオスが待っているのか!?
数分後、ついにその姿を現した会長……。
「敬いなさい……下々の民共! このマテオ・シュヴァルツビンガーが、本来ならお目にかかることすら叶わぬ身分のお前たちを、特別にここまで来させてあげたのですから」
驚くべきことに、そこに立っていたのはライムが狂喜乱舞しそうなロリ美少女であった……!!! マスコミで目にしていた、あの権威ある巨影を纏った男の姿はどこにもなく、気高くも幼い少女が傲慢な笑みを浮かべていたのである。
驚くべきことに、そこに立っていたのはライムが狂喜乱舞しそうなロリ美少女であった……!!! マスコミで目にしていた、あの権威ある巨影を纏った男の姿はどこにもなく、一人のガキが玉座のような椅子に座り、傲慢不遜に叫んでいるではないか!!!!
カモワードよ、お前が対峙したのは世界経済の巨頭などではなく、ライムの『守護本能(と書いて犯罪と読む)』を刺激する最悪の爆弾であったのだ! この事務所の未来に、再び暗雲が立ち込める……! ああ……カモワードよ!! ライムが犯罪者になる前に、お前が止めねばならぬのだぞ〜〜〜〜〜っ!!!!!!
我が忠告が終わるよりも早く!!!!! ライムが例の吐き気のするような笑みを浮かべ……。 「ねえ、お嬢ちゃん……。このお兄さんが、美味しいものをあげようねぇ……」 日本から直輸入した『うまい棒』を手に取り、下卑た好意を振りまき始めたではないか……!
だが、マテオは冷ややかに言い放った。 「何ですの、この反吐が出るような産物は。……おい警備員、片付けなさい」
「はっ!!!!!!!!」 ようやく、ライムに散々振り回された警備員の復讐が始まろうとした、その時……!
「……ああ、待ちなさい。この男は見たところ、このチームのリーダーのようですわね。放っておきなさい」 マテオの一言で、勝利を確信していた警備員の満面の笑みが、音を立てて崩れ去っていく……。
「さあ、座りなさい。お前たちが遂行すべき依頼について、説明してあげますから」
ついに動き出すBMQの極秘依頼! しかし、目の前には『うまい棒』で会長を誘惑しようとする変態ロッカーと、ツイッター中毒のラッパー、そして沈黙の中で殺気を放つキラーたち……。 カモワードの胃に穴が開くのが先か、依頼が完遂されるのが先か!?




