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「一人の幸せなんてのは、案外あっさりとひっくり返るように出来ている」

一方、ドイツにて。




「はじめまして、デミアン君。私はフランス皇室から参りました、騎士団員のベルト……」




「黙れ。さっさと僕を連れて行け。面倒くさいんだよ、マジで」




ベルトランは感じた。目の前の少年は間違いなく3歳のはずだが、その体からは100年……いや、全人類史のあらゆる憎悪を凝縮したような怒りを感じる。




数日後。




「あら、あんたが私の婚約者のデミアン・デモニクス? 顔だけはマシね」




「お前ごときが僕を評価してんじゃねーよ、このクソ女」




「……何ですって?」




その瞬間、マリーはデミアンの急所を容赦なく蹴り上げた。




「あだぁっ……!!!! 痛い……痛いってば!!! 母様にだって叩かれたことないのに……!!!!!」




「マリー王女殿下、デミアン婿殿は立派な旦那様になられるお方です。そのような振る舞いは……」




「何を言ってるのよ、この間抜け。ベルトラン、あんたはただの……」




「力ちから」 「速度そくど」 「技術ぎじゅつ」




固有技(固有技) 絶命手ぜつめいて




「……これでも食らって、消え失せなさい」




その瞬間、2年ぶりにベルトランは、「ベルトランが幸せになれるはずだった世界の破片」と共に、衝撃の余波で再びヴェルサイユ宮殿から庭園まで吹き飛ばされた。




(今度は**仙田結弦せんだゆずる**かよォォォォォ!!!! 作者、絶対そっち系の漫画好きだろ!!! 著作権的にアウトだよ!!!)




「……お……王女殿下……。……ご……見事な……手刀で……ございました……。げふっ……」「ま……ママ……。僕、もう帰る……」




「この子は……。男の子のくせに、まだママ、ママ言ってるの? ほら、男らしくしなさい」




「申し訳ありません、王女殿下……。失礼ながら、お二人の年齢のお子様が親御様を慕うのは、ごく自然なことでございます……」




「奴隷は黙ってろって言ったでしょ」




「申し訳ございません……」




2年後




「ベルトラン。お前もいよいよ貴族社会の結婚適齢期である17歳だ。どうだ、見合いでもしてみてはどうか?」 (※この世界の貴族や皇族は、皆この年齢で結婚するのが通例である)




「陛下、私にはまだそのような……」




「お父様~! ベルトランは私の1級奴隷なんです。お嫁さんをもらっちゃったら、私が遊べなくなるじゃないですかぁ……。行かせちゃダメですよ?」




「ああ……! 私の愛する娘、マリーがそう言うのなら叶えてやらねばな!!!! 婚談は取り消しだ! ベルトラン、お前は結婚しなくてよい!!!」




「……え?」




「はぁ……」




「ベルトランさん……」




「デミアン君……いえ、婿殿。こちらへは何のご用で?」




「いや……またマリーが皇帝室へ向かうのが見えたから、何かあったのかと思って来てみれば……。まさか……」




「はい……」




「すまない……。僕たちが、いつも……」




「いいえ……私が至らないばかりに……」




1年後




(ベルトランは、友人であるモネールに招かれ、語り合っていた)




「ベルトラン君、愛する女性や大切な女性はいないのかい? 君もそろそろ結婚相手を探さないと。僕らの年代でまだ独身なのは、君とロラン君、ブラダマンテ嬢くらいなものだって分かってるだろ? すでに二児の父となった僕からの忠告だ。このままだと、本当に結婚できずに独身のまま終わるぞ」




「……愛してはいないが、大切……いや、私が世話しなければならない女性ならいる」




「誰だい!? まさか……。あ、いや、すまない……」




「……3年前には、男の子デミアンも増えた」




「ああ、そうだったな……。王女殿下は……メディアではそれこそ『聖幼女』なんて呼ばれているけれど、皇室内ではいかがお過ごしなんだい?」




「……聞かないでくれ……」




「すまない……」


マリーという名の地獄を耐え抜き、王鍵直属騎士団団長、そして皇室直속騎士団団長の座を掴み取るための、ベルトランの任命式が始まった。




「14番目のオリヴィエ・ド・ヴィエンヌでもあり、ベルトラン・デュ・ゲルトリング8世。汝を、フランス第300代皇帝シャルルマーニュ・ソードワード14世が、王鍵直属12騎士団、およびフランス皇室直属騎士団団長に任命する」




「御恩、心より感謝申し上げます。陛下」




「よいのだ。お前にはそれを受ける資格が十分にある」




万雷の拍手と歓声が響き渡り、誰もがベルトランを祝福した。




「ぐすっ……ベル……おめでとう……。だが、次の団長の座は俺様がいただくからな!!!」(※注:5年に一度選出される)




「ロラン、お前もすごかった……。私が選ばれたのも、運が良かっただけだと思っている」




「おめでとう、ベルトラン」




「ブラダマンテ……」




「ベルトランお兄様、おめでとうございます」




「シャルロット王女殿下……」




「これでようやくマリー姉様から脱出できるね?」




「ジャンヌ王女殿下……」




「ベルトランさん……」




「婿殿……! 一体誰にやられたのですか……? 仰っていただければ、私が処……」




「逃げろ……」




「え?」




「ベルトラン、お・め・で・と・う~!」




「……こ、王女殿下……」




「今日は何して遊ぶ? 地獄のプランク? それとも女王様と家臣ごっこ? それともデミアンと一緒にリアルおままごと? デミアンが夫で、ベルトランさんはおじいちゃん役ね」




「…………」




「そんなことしちゃダメだよ、マリー」




「ルイ……!」




「ベルトラン団長は君のおもちゃじゃない。それにデミアンも君のものじゃないんだ」




「ったく……たかが数時間早く生まれたくらいでお兄ちゃん面しちゃって……」




「か……感謝いたします……」




「いいんですよ、団長。あの子の遊び相手になってくださって、僕の方こそ感謝しています。もちろん、君にも感謝してるよ、デミアン」




「……ふん。もっと早く止めてくれよ、ルイ……。俺が苦しんでるの、知ってるだろ」 (※この時点からデミアンの一人称は「俺」になる)


ルイ・ソードワード20世。この少年はデミアンやマリーと同い年だが、驚くほど大人びており、頼もしい姿を見せていた。




数日後。




「ベルトランよ。お前もいよいよ騎士団長なのだから、結婚せねばならんのではないか? 今、お前の年代で貴族や王族を含め、お前たち3人以外はほぼ全員が結婚している。私が良い縁談を持ってきてや……」




「アバママ(お父様)……ベルトランはマリーの所有物じゃないですか……。結婚しちゃったら……もう……」




「い、いかん……! それはいかんぞ~……! マリー、パパが悪かった……。泣かないでおくれ……」




マリーはベルトランに、腐った笑みを浮かべていた。




「…………今回もか」




数ヶ月後、冬。




「お前も結婚せねばな。今度こそ良い縁談を……」




「アバママ……」




「マリーがダメだと言うなら、ダメなのだ~!!!」




「……はい」




1年後、春。




「結婚には最高の季節ではないか? いよいよお前も……」




「アバママ、ベルトランが嫁を貰っちゃったら、マリー悲しくてこれ以上生きていけそうにありません……」




「い、いかん……!!!」




「……承知いたしました」




夏。




「新婚旅行にギリシャのサントリーニ島へ行ってこい。見合い、今度こそ設定してやるから……」




「アバママ……~」




「申し訳ないが、見合いは中止だぁぁぁぁ!!!!」




「………………承知いたしました、陛下」




1年後、春。




「お前ももう結婚せねばならんだろう……。もはや結婚適齢期の末年、24歳なのだから……」




「左様でございます」




「……ところで、お前はなぜ今まで結婚できなかったのだ?」




「陛下が……」




「あ、すまん。今度は本当だ。今度はスウェーデンの貴族のお嬢さまと……」




「アバママ……」




「あ、いかんいかん!!! すまん!!!」




「……?」




秋。




「……真実の愛の季節は、秋だと思わないか?」




「……はい」




「だから、今度こそ本当に……」




「アバママ、どうしてそんなにベルトランの見合いばかり設定するのですか?」




「あ、あ……パパが悪かったぁ……」




「……」




冬。




「今度こそ、本当にお前をクリスマスに結婚させてやる。このチャンスを逃したらお前の人生は終わりだ。マリーにバレないよう、こっそり夜明け前に呼んだのだからな……」




「……今度は本当でしょうか。前回のように、また直前で中止にしたりはなさいませんか……」




「おのれ……! 私がまた中止にするつもりなら、マリーが寝ている早朝にわざわざ呼ぶものか! 貴様、王を何だと思っているのだ! 汝の君主だぞ!」




「失礼いたしました……」




「よろしい。では今回のお嬢さまだが、スイスの……」




その瞬間、マリーが扉を蹴破って入ってきた。




「アバママ!!! デミアンが……ひぐっ……寝てる間にデミアンが……本人はミスだって言ってるけど、私の胸を触ったのぉぉぉぉ!!! うわぁぁぁん!!! 懲らしめて! 懲らしめてよぉぉぉ!!!」




「な、な、な、何だとぉぉぉぉ!?!?!?!? 今日……あの恩知らずな青二才を半殺しにしてくれるわ!!!」




「陛下……私の見合いは……」




「後で決める! あの恩知らずを捕まえねばならんのだ!! だから私は部屋を分けるように言ったのだ……! あの女房め、なぜ同じ部屋にしたのだ!!!」




「…………人生」




一方、寝室からはデミアンの悲鳴が聞こえてきた。




「あだだだだ!!!! 痛い!!! 痛いってば!!! ミスだったんだよ、このボケ老人!!!」




「義父上に向かってその物言いは何だ!!! それにボケ老人だと? 私はまだ30だぞ、この野郎!!!」




「あだぁっ!!!! 痛い、痛いってばぁぁぁぁぁ!!!!!」




一日後。




「ねえ、ベルトラン」




「……何の用だ、ブラダマンテ」




「あんた、また見合い中止になったんだって? もう70回目くらいかしら。陛下も罪な人ね……」




「……それで、何の用かと聞いたのだ」




「あたしも結婚できないまま行き遅れちゃったし、あんたももう見合いする相手もいないでしょ? もし、どうしてもダメなら、このあたしが……」




「笑わせるな。お前のような愚かな女は、私の新婦候補にはふさわしくない」




「……は?」




「私の分析によれば、愚かな女との間に子供が生まれれば、私の子供は50%の確率でその女の遺伝子を継ぎ、愚かになる。ゆえに、お前とは結婚できない」




「…………そう。あんた、一生独身でいなさいよ……」




「なぜあんなに怒っているのか分からんな」




その日の夜、フランスの高級ミシュラン3つ星レストラン。




「ふえぇぇぇぇぇん!!!!! …………」




「……なぜ泣いている、ロラン」




「ブラダ……ブラダマンテにプロポーズして、振られたんだよぉぉぉぉ!!!! ぐすっ……今は気分が悪いから失せろって……。だからって、俺を刀で斬ることないだろぉぉぉ!!! 見ろよ、この腹の傷……!!! あの女、俺を斬りやがったんだぞ……!!!」




「どうやら、我々三人は死ぬまで非婚(独身)のようだな」




「縁起でもないこと言うなよ!!!」




「お二人は相変わらず、楽しそうですね」




「おい、チャールズ!!! お前はイギリスのエリートで、あのアンブローズ家に婿入りしたからって俺たちを馬鹿にしてんのか!!! お前はいいよなぁ! ええ!? お前は今、7歳にして国連事務総長候補で、メナース特別管理部事務総長候補でもあるんだからな!!! お前みたいな人生の勝ち組から見れば、俺たちが滑稽なんだろ!? 滑稽なんだろぉぉぉぉ!!!」




「いいえ。お二人もきっと、良い方に巡り会えるはずですよ」




「こ……こいつ……! あああもう!!!! でも……俺たちにはホフマン君がいるからな……!!!」




「あの……僕はまだ16歳なので、結婚はまだ……」




「コンラート、君はあの間抜けとは違って、早く結婚できるはずだ」




「……いえ……」




4年後。




「ねえ、ベルトラン……。私のブラジャーがまた合わなくなったから、買ってきてくれる? G(25)で買ってきて。もちろん、エレス(Eres)でね」




「……そのようなものは、王女殿下が直接買われるか、他の方……例えば同じ女性であるブラダマンテにお願いしてはいかがですか……?」




「あら、命令不服従かしら?」




「いいえ……」




「デミアンに買ってこさせようと思ったんだけど……あの子、逃げちゃったのよ。買ってきなさい」




「……はい」




店にて。




「何あれ……。男が一人でブラジャーを買いに来てるわよ……。しかもGカップ? 変態じゃない? 通報しましょうよ……」




「……はぁ」




「あの……。彼女さんの物でしょうか?」




「いいえ」




「……」




「そんな目で見ないでください……。妹の物です」




「あ、失礼いたしました……!」


数ヶ月後、夏。




「ねえ……ベルトラン……。またブラジャーが合わなくなったわ……。今度はデミアンと一緒に行ってきなさい」




「婿殿は現在、ドイツの事務所で仕事をしておられるはずですが……」




「あの子なら、私が呼べばすぐに来るわよ?」




「マリー……!!!! 何だ、暴漢が押し寄せただとっ!!!!? ……え、ベルトランさん?」




「ほら、すぐ来た」




「デミアン。ブラジャー買いに行ってきなさい。ベルトランと一緒に」




「……? なあマリー……? 君ももう16歳なんだし、ブラジャーくらい自分d……」




「あんた、婚約者の頼みも聞けないの? 本当にちっぽけな男ね」




「あ……いや……分かったよ……」




店にて




「あらあら、また来たわよ……。今度は何? あのサングラスは何なの、変態仲間? はぁ……本当に同じ客として腹が立つわね」




「J(32.5)をお願いします……」




「……次に来たら警察に通報しますからね」




「……?」




ベルトランが窮地に陥ったその時、デミアンが割って入った。




「すみません……僕の彼女なんです。今、風邪をひいて外出できない状況でして……」




「あ、こちらこそ失礼いたしました……。では、あちらの男性は彼女さんの実の?」




「はい……お兄さんです……」




「失礼いたしました……!!!!」




数日後の夜




「王女殿下。殿下が頼まれたフランス特製のデザー……」




(一方、扉の前で)




「マリー……!!!! 頼むからお願いだ!!!! せめて……僕に心の準備をさせてくれ……! 心の準備を……!!!!! あのクソ老いぼれに、また殴り殺されちゃうよ……!!! この前も見つかった時、君も知ってるだろ……!!! 俺が、え?」




「何を言ってるのよ……。私がどれだけ我慢したと思ってるの? 今日は絶対にやるから……」




「ああ、頼む……!!! 君とヤると、俺は2週間は廃人になるんだぞ……!!!」




「何言ってるの……。あんたはただ、じっとしてればいいのよ……」




ベルトランは感じた。あの光景……間違いなく15年前の……。




「あああああああああ!!!!!!!!」




翌日




「婿殿……」




「何の用だ、ベルトランさん……。それから、俺たち二人きりの時はデミアン君って呼んでくれって……」




「承知いたしました、デミアン君……。その、見ようとしたわけではありませんが、不注意でお二人がその……」




「ああ……あれか……。し……死ぬかと思ったよ……」




「もしお二人の子供が生まれたら、私は辞表を出します」




「心配するな……。幸い、僕がマナで避妊させたから……。本当に、やるならコンドームをつけようって言ったのに、生でやるって意地を張られた時は僕も怖かったんだ……。安心しろ」




「はい……」




2年後、現在




「王女殿下、どちらへ行かれるのですか?」




「あのバカに会いに、ドイツのケルンに行くわよ」




「……婿殿は現在、面接で忙しいことをご存知のはずですが……」




「そんなの知ったこっちゃないわよ。ただ行けばいいのよ」




今日は、こうして一人の男の人生が、凄惨なまでに壊れていく姿を見守ることとなった。


















申し訳ありません、旅行中に書けませんでした

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