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よい奴でも悪い奴でもすべて訳はあるものだ.3

「……え? どういうこと?」 「これ見てなよ」 彼女がAから始まる有名な放送局のニュースをつけると、そこには驚くべき映像が流れていた。僕がまた殺人を犯し、さらにフランス大使館に火をつけている映像が……。

「……っ!!」 僕は凍りつくしかなかった。一体誰が……!

「まぁ……ここまで事が大きくなっても、先輩なら何とかしてくれるだろうけど、近いうちにうちの事務所も捜査対象だろうね~」 彼女は苦笑いを浮かべた。 シンデレラは「ちょっと白雪……シンクレア君は今、すごく辛いんだから、そんな風にからかっちゃダメだよ……」と僕を庇ってくれた。涙が出そうだった。

そんな言葉を聞いても、白雪はからかい続けた。 「あ~ぁ、もうあたしが捕まえて警察に渡しちゃおうかなぁ……ヒヒッ」 彼女が卑俗な笑みを浮かべていた、その時だった!

警察の服を着た男たちが、天井を突き破って事務所に急襲してきた。 シンデレラと白雪は、警察よりも壊された家具や壁のほうが気になるようだった。 「ダメ……。あれ、社長が大事にしてたコーヒーマシンなのに……。あそこにあるのは奮発して買った職人仕立てのイタリア製ソファが……ダメ、ダメよ、あれは社長が一番……あああ……」 彼女は壊れた家具に触れながら絶望していた。

それに対し、白雪はこの状況を楽しんでいるかのように「ねぇ、お巡りさんたち~。これ知ったら、うちの社長、怒るよ~?」と逆に警察を挑発していた。 そんな白雪の言葉を鼻であしらい、責任者と思われる男が口を開いた。

「私の名はヨハン・ブリッチヒ……。UNメナス特別管理部ドイツ支部、メナス対テロ直属部隊の統括部隊長として、エドワード・シンクレア、貴殿を逮捕する」

すると白雪は「うげぇ……。若いくせに老害じゃん。吐き気がする。あんなのが上司なら、あたし自殺しちゃうかも……」と言った。

「貴様、エドワード・シンクレアを秘匿ひとくするつもりか?」 「まぁ~、一応うちのお客様だからね。そんな風に逮捕されちゃうと困るんだよ」 「公務執行妨害だと分かって言っているのか?」 「知るかよ。知ったこっちゃないね」 彼女は笑いながら言った。 「メナス特別管理部のあんたなら分かってるだろ? 私ら傭兵フリーランスが法を守ったことなんてあったっけ?」 「確かに、貴様ら傭兵どもは……公認職種でありながら我が特別管理部を妨げ……」

その瞬間、白雪が元素系メナスと思われる氷を作り出し、警察全員を凍りつかせた。

「ほらエドワード、早く逃げて! ここはあたしとシンデレラで何とかするから!」 彼女はそう言ったが、シンデレラは「どうして私まで……」と言わんばかりの泣きそうな顔をしていた。

凍っていたヨハン部長は氷を砕きながら叫んだ。「貴様……何をする!」 「大事なお客様を守っただけだよ~」 彼女は手を挙げ、降参するポーズを取った。 「まぁ、あんたらに実害を与えるつもりはないからさ~。何してるの、エドワード! こういう時は逃げるのが漫画の『お約束』でしょ! 早く逃げて! あそこに隠し通路があるから、そこから逃げな、早く!!!」

彼女の言葉に、僕は逃げるしかなかった。 「やっと行ったね。ふぅ~、任務完了!」 彼女はまるで大仕事をやってのけたような表情を浮かべた。

「……逮捕しろ」 ヨハンの冷徹な声が響いた。

ヨハンは冷徹に命じた。「エラ、テオドール。貴殿らはエドワード・シンクレアを追跡し、生捕りにしろ。私はこの公務執行妨害軍団を制圧する」

その言葉に応じ、背後にいた二人が姿を現した。「了解しました、部長」 彼らは即座にエドワードを捕らえるべく動き出した。

僕は息が切れるまで路地裏を走った。だが……。 「ねぇ、逃げ回るのって楽しい? 私、君みたいな人が理解できないんだよね。結局こうして捕まるのに、どうして無駄な足掻きをするのかな?」 見知らぬ怪しげな女が、一瞬で僕を組み伏せた。

「くっ……!! 僕は濡れ衣を着せられているんです……! 真犯人は別にいるんです……!!」 制圧された僕が必死に訴えると、その女――エラは首をかしげた。 「ふーん……濡れ衣だってさ。どうする、テオドール?」 彼女は路地の奥から歩いてくる男に問いかけた。

「惑わされるな、エラ。この手の連中の言葉はすべて嘘と弁明だ。そう言えば誰もが自分の浅はかな策に嵌まるとでも思っているんだろう。だが、我がメナス特別管理部を欺こうとは、相当にいい度胸だ。そこの女なら騙せても、このテオドール・シュマッハを欺くことはできんぞ、エドワード・シンクレア」

「違うんです!! 犯人は別にいます!! 他人の姿をコピーできる身体系メナスなんです!!」 だが、僕の言葉が終わる前に、男の口から深い嫌悪の混じった声が漏れた。 「黙れ、犯罪者め」 その言葉と同時に、彼は腰の長剣を抜き放ち、僕の両手を貫いた。

「あああああぁぁぁ!!!」 僕はのたうち回ろうとしたが、エラという女に押さえつけられ、身動き一つ取れなかった。

男は淡々と続けた。 「貴様のような輩を、私は腐るほど捕らえ、殺してきた。その誰もが口を揃えて『自分は潔白だ』『濡れ衣だ』と抜かしたが、結局はすべてそいつ自身が犯した結果だった。貴様も同じだ。自分で犯した記憶を消し、他人のせいにしているだけだ。貴様のその化けの皮、メナス特別管理部の取調室ですべて剥いでやる」 彼は冷たく命じた。「エラ、こいつを縛れ。メナス封印具を装着させろ。こいつのメナスは特殊系、それも心理系だ。危うく術中に嵌まるところだったぞ」

「……え、マジで?」エラは本当に驚いたような表情を浮かべた。 だが、事態はそれだけでは終わらなかった。彼は続けた。 「貴様、この封印具を付けても、そのメナスなら何らかの細工を仕掛けるつもりだろう……。二度と余計な口を利けぬよう、今ここで舌を切り落としてやる。エラ、押さえていろ」

エラが「テオドール、あんた相変わらず犯罪者には容赦ないね……」と呟く。だが彼は「何……? 容赦ないだと? こいつらが民間人と社会に働いた悪行を思えば、私のしていることなど氷山の一角に過ぎん。社会に害をなす貴様らは、一匹残らず消えるべきなのだ, エドワード・シンクレア」 そう言い放ち、長剣の刃を僕の口元へと向けた。

刃が僕の喉奥に迫ったその瞬間――「エドワード! こっちよ!!」

白い粉末が視界を遮った。フランツが消火器を撒き散らしながら乱入してきたのだ! 彼女は震える手で僕の腕を引き、叫んだ。 「エドワード!! 早く!! 私が隙を作ったから、今のうちに逃げて! 私についてきて!!」 消火器の煙に巻かれ、エラたちが怯んだ隙に、僕は彼女の手を引いて駆け出した。

僕たちは必死に走り続けた。 「事務所に戻ったんだけど……シンデレラさんもあの短髪の子もいなくて、警察が規制線を張ってたの。これじゃ危ないと思って……そしたら路地裏から悲鳴が聞こえて……。よかった……本当に……。もっと早く助けに行ければよかったのに……」 「……いや、フランツのおかげで助かったよ。君がいなかったら、僕は今頃舌を切られて殺されてた」

「あともう少しで、お兄様のいる聖堂よ。我慢して……お兄様は補助系メナスの使い手だから、きっと治療してくれるわ」 彼女に支えられながら、僕たちは聖堂へと辿り着いた。

聖堂の重厚な扉が開くと、硝煙と血の臭いの間に、静謐な香油の香りが漂ってきた。祭壇の前、純白の司教服を纏った男が月光を背に祈りを捧げていた。

「フランツ。道に迷える子羊とは、その子のことですか?」

神父の声は澄み渡り、平穏だった。だが、その静けさが僕にはかえって異質な恐怖として迫ってきた。フランツは切実に訴えた。 「はい、お兄様……。この子です。でも、状態がすごく悪いんです。警察に酷いことをされて、両手を大怪我していて……」

すると神父――クローマー・アインスはゆっくりとこちらを振り向いた。彼の視線が、無惨に貫かれた僕の両手に止まった。

「おやおや……。ですが、ご安心なさい、子羊よ」 その言葉と同時に、彼の手から神聖な光が溢れ出し、僕を包み込んだ。 「あなたのすべての苦痛は、私がすべて受け止めましょう……」 その言葉が終わる頃には、僕の手の傷は驚くほど綺麗に完治していた。

「……ありがとうございます……」

彼は言葉を続けた。「迷える子羊よ、あなたは必ずや希望の道を見出し、再び光り輝くことができるでしょう。ですから、どうか絶望しないでください。フランツ、彼を寝室へ案内し、休ませてあげなさい。私は、彼を救うための策を練っておきましょう」 フランツは「わかりました、お兄様。エドワード、肩を貸すわね」と言い、僕を寝室へと運んでくれた。

寝室は息が詰まるほど清潔で静かだった。まるで棺桶の中にいるような妙な圧迫感があったが、凄惨な追跡と痛みから解放された安堵感が、その恐怖を上書きしていた。フランツは僕の隣に横たわり、きつく抱きしめてくれた。 「エドワード……私は最後まであなたを信じるわ。世界中があなたの敵になっても……」 「フランツ……ありがとう。本当に……ありがとう……」 僕はそう絞り出し、涙を流した。

彼女は僕の涙を拭い、優しくなだめてくれた。「泣かないで、エドワード。あなたはきっと、この状況を乗り越えられる力を持っているわ。もう大丈夫よ……私たちを信じて」

だがその時――ドゴォォォォン!! 聖堂の扉が激しく破壊され、テオドールとエラが乱入してきた。 「そこにいるのはわかっているぞ、エドワード・シンクレア!! 我々の目を逃れるために聖堂に逃げ込んだか!? 貴様という人間は……人間と呼ぶことすらおぞましい、吐き気のする存在だな!!」

テオドールの叫びに、エラが困惑したように言った。「ちょっとテオドール、ここ聖堂だよ? 神聖な場所じゃん。しかも扉を壊すなんて……また修理代がかさむよ。こんな不敬な真似したら、バチが当たるって」 だが、テオドールは鼻で笑った。「貴様は、存在もしない神が、目の前の社会と市民より優先だとでも言うのか? あそこにいるのは凶悪犯だ。捕らえるのが我々の職務であり宿命なのだ!!」

僕はその声を聞き、立ち上がろうとした。「フランツ、これ以上、君とお兄様を困らせるわけにはいかない……。僕は、自首するよ……!」 だが、彼女は僕をさらに強く抱きしめ、遮った。「行かなくていいの。お兄様がどうにかしてくれるわ……」 彼女は僕の前に立ち塞がった。その手を振り払うことはできなかった。彼女の仕草には得体のれない不気味さが漂っていたが、その内側にある慈愛と安らぎが、今の僕をどうしようもなく穏やかにさせていたから。

そこへ、聖堂の影の中からクローマー神父が静かに姿を現した。 「子羊たちよ……。恐縮ながら、本日の聖堂の務めは終了しております。お引き取りを」 しかし、テオドールは彼の言葉など眼中にないというように剣の柄を握り、唸った。 「貴様がここを預かる神父か。おい、エドワード・シンクレアを隠さずに今すぐ差し出せ! 公務執行妨害と犯人隠避の罪は目を瞑ってやる。さっさとその男を渡せ。貴様らが庇っているのは、稀代の絶対悪でありテロリストなのだぞ!!」

激昂する彼に対し、クローマー神父はまるで駄々をこねる子供をあやすかのように、慈悲深く答えた。 「冤罪に苦しむ哀れな者です。私が信じる神が私を救ってくださったように、私もこの子羊を救いたいのです」

テオドールの忍耐は限界に達していた。「……救いだと? 貴様らが宣うその偽善的な神が、犯罪者風情を救ってくれるとでも言うのか?」 クローマー神父はその嘲笑に対しても、ただ静かに微笑んだ。 「子羊たちよ、あなた方は勘違いをされているようだ。私が仕えるお方は、あなた方が想像するような、軟弱な存在ではありません」 その言葉と共に、彼の表情に歪な笑みが浮かんだ。 「聖堂を汚す愚かな子羊たちには、少々罰を与えねばなりませんね……」

テオドールが叫ぶ。「これだから神信者は嫌いなんだ!! 救いだの何だのと寝言を抜かし、目の前の正義を――!」 彼の言葉が終わるよりも早かった。 クローマー神父の手が、テオドールの喉を強引に掴み上げた。それは光をも超越したような、人の目では到底追えない速度だった。

「テオドール……! やめて、神父様だろうと許さないわ……!」 無表情だったエラの顔が初めて歪んだ。彼女はテオドールを救おうと飛びかかったが、クローマーは目もくれず、エラの腹部を容赦なく蹴り飛ばした。

「ガハッ!!」 彼女は悲鳴を上げ、床に崩れ落ちた。 「ご安心なさい。愚かなあなたたちのせいで、我が神の聖堂が壊れてはなりませんから、手加減はしておきましたよ」

喉を掴まれたテオドールは、怒りに満ちた目で長剣を抜き放った。拘束から逃れるための最後の手向け。 だが、クローマーは嘲笑いながら、空いていた左手で、テオドールの目の前にある刃を掴み取った。

バキッ、メキメキッ――!

特別管理部の精鋭のみに与えられる特殊鋼の長剣が、クローマーの手の中で乾いた小枝のように脆く砕け散った。

「貴様……本当に神父なのか!? 一体何なんだ、この強さは……!」 テオドールが驚愕の声を漏らすが、クローマーは不気味な笑みを湛え、彼の首をさらに強く締め上げた。 「聖堂へ無断侵入し、我が神の所有物である扉を壊したあなたに、教える必要はありません」

テオドールの顔が紫色に変色していく。静寂の中に、骨が軋む不気味な音だけが響いた。 クローマーはそれを鑑賞するように見届けた後、ふっと力を抜いた。テオドールが床に叩きつけられ、荒い息を吐き出すと、クローマーはふらつきながら立ち上がったエラに向かって冷淡に告げた。 「……あなたたちは非常に煩わしい存在でした。ですが、いつか我が神が降臨される際の重要な生贄となるでしょう。命だけは助けておきます」

彼は抵抗する気力すら失った二人を獣のように引きずり、祭壇の裏手にある、湿った冷気が漂う地下牢へと放り込んだ。

寝室から出てきた僕に、フランツが抱きついたまま囁いた。 「静かになったわね、エドワード。見て、私のお兄様って凄いでしょ?」 だがその瞬間、どこからか聞こえてきた正体不明の悲鳴に、僕は言い知れぬ不安に襲われた。ここを離れなければならない、という直感が沸き上がった。 「……フランツ、ごめん。やっぱり、僕はシャルルさんのところへ戻るよ。本当に、ごめん……」

僕がそう告げた瞬間、彼女の表情から生気が消え、暗く沈んだ。 「……何を言ってるの? ずっと一緒にいるって言ったじゃない。あの男のところに戻るなんて……ダメ。あなたは永遠に私と一緒にいなきゃいけないの……」 その言葉と共に、彼女は僕の胸を刺した。


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