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不幸を嘆けば、不幸を招く

「シンクレア君、ベアトリチェはあんな風に冷たい子に見えるけれど、本当は心が温かい子だから……。そんなに嫌わないであげて。あの子は本当にいい子なんだ……」


「あ、心配しないで、シンデレラ)。僕もあの子を悪く思ったりはしないよ。あの子もきっと、何か事情があってあんな風に振る舞っているんだろうから……」


「ふふふ、そうだよエドワード~! あんな態度でも、あの子、意外と中身は乙女チックなんだから~」


「べ……白雪……。お菓子のクズが当たってるわ……」


「いいじゃな~い、細かいこと。後でアンタが払えばいいんだし~」


「……(やっぱりこの会社は狂ってる……狂ってるよ……)」


「ヘイ、この会社はおんどれが住んどった場所よりよっぽどエグくて荒いんや。しっかり死ぬ気で働きや、このケツの青いガキが!」


「……」


「エドワード君……ごめんなさい……。ここの社員、まともな人が誰もいないんです……」


エドワードは本能的に悟った。この会社は、絶対に正常ではないということを……。いや、一体どうすれば、これほどまでに変人ばかりを集めることができるのか……!!! デミアンの審美眼には、もはや感嘆するほかない……!!!


「コンラート主任、こちらお茶です……」


「ありがとうございます、シンデレラさん……。シンデレラさんがいてくれるから、なんとか生きていける気がしますよ……」


その時、再びチャイムの音が響いた。


「デミアンはいるか?」


「あ……あなたは……?」


顔立ちは彫刻のように整った美男子。しかし、その格好はパンツ一丁という男が、堂々と入ってきた。


「あ~ん♥ ニコライお兄様~♥」


「ああ、久しぶりだな……白……名前が難しくて覚えていない。とにかく白なんとか、久しぶりだ」


「あ……あの方は、また……」


「あ……うちの事務所の職員ではありませんが……社長の古い友人の方です。名前はニコライ・ロマノフ12世……」


「ちょっと待ってください……まさか……?」


「そうです。世界に5人しかいないというSS級ハンターの中で1位、『雪原の覇王』と呼ばれる男……。本当にすごい方なんです」


「でも……なぜパンツ一丁で……」


「……全くですね……。ハンターの頂点と呼ばれるお方が……一体……はぁ……」


エドワードは感じた。デミアン・デモニクス……本当にこの男の周りには奇妙な人間しかいないのだと。


「ところで……ニコライさん……。ここには何の用で来られたんですか……?」


「ああ、デミアンが一緒にサッカーを見ようと言うから来たんだ。デミアンはどこだ? 俺はデミアンに会いたい」


「悪いがニコライ、あのソシオパス野郎はお前を捨てて、さっさと一人で行っちまったよ」


「な……んだと……?」


「すでにBossは行ってからだいぶ経つYO……」


「……い……いや……。デミアンが俺を捨てて行くはずが……」


「お前、デミアンのダチのくせにそんなことも分からねぇのか? 馬鹿なのか、お前は……」


「……いや……。あ、そうか……。ならば、ここでデミアンを待つことにしよう」


「えっ……? サッカー、見に行かなくていいんですか?」


「そうだ。実のところ、俺はデミアンに会いに来たのだ。ある物を受け取らなければならないからな」


「それなら、探しに行ったほうが時間を節約できると思いますが……」


「それは面倒だ。ケルンからミュンヘンまで行く方法も知らん。俺は金もないのだ。ロシアからドイツまで来るのに金を使い果たしたからな」


「……コンラートさん、確かSS級ハンターなら……お金は……」


「……あの方は、手に入れた金をすぐに使うタイプなんです。金が入ればウォッカやゲームに注ぎ込む方でして……」


「……じゃあ、その天文学的な額の金を全部ですか!?」


「……はい」


ああ、ニコライ・ロマノフ12世、一体何者なんだ!!! 一生食べていけるほどの金を、一度に、それも他でもない酒に全部使ってしまうというのか……!!! なんということだ!!! ああ……この男、常識を外れている!!! エドワードは感じたはずだ。あの男こそ、自分が出会った中で最大の狂人であり、最も狂気に満ちたおとこだと……。


「……こちらにお座りください……」


コンラートは、まるでこの状況に慣れているかのように、ニコライを席に案内していた……!!! ニコライよ!!! こんなことは一度や二度ではないのだな!!! おじさんは君の図々しさに感嘆するしかないぞ!!!


ニコライは、まるで自分の家であるかのようにくつろいで座り、堂々と言い放った。 「シンデレラ、あれをくれ。前に飲んだやつだ。あれは美味かったぞ」


「あ、アイスラテですか?」


「そうだ、それだ、それだぞ」


「はい……少々お待ちください……」


「……ところで、ニコライさんは寒くないんですか……? その、下着姿のままだと……風邪を引いてしまいますよ……」


「何を言うのだ。むしろ暑いぐらいだぞ。ドイツはロシアと違って……全く、ドイツ人はどうやって生活しているのか理解できん。それに風邪だと? そんなものは弱者がかかる病だ。俺は一度もかかったことがないのだぞ」


「……えっ……」


「ニコライさん……むしろ自分の方が異常だとは思いませんか……?」


「ロシアでは男はこうして過ごすものなのだぞ」


「一体どこのロシアに住んでいたんですか……」


「それでも、俺だってロシアでは服を着るのだぞ」


「どんな服を……? ダウンジャケットとかですか?」


「いや、あんなものなぜ着るのだ? 暑いだけで実用性もなく、高いだけのものを。俺はシャツとズボンがあれば十分なのだ」


「じゃあ、ここでもせめてそれを着てくださいよ……」


「嫌だ。ドイツは暑いのだ」


「……(この男、救いようがない……)」


「ところで、お前は誰だ。見慣れない奴が話しかけてくるな。お前もここの客なのか?」


「……いえ、私は新人ですが……」


「あ、そうなのか。そういうことだったのだな。俺はてっきり客だと思っていたぞ、シンクレア君」


「……ところでニコライさん、なぜデミアンさん……いえ、社長に会いたいんですか?」


「デミアンがゲームCDを借りていったのだが、返さずにそのまま行ったのだ。先週発売されたばかりの新作を借りておきながら返さない。高く買ったというのに。おまけに、俺の宝物第一号である『Xテンドウ・フェXリー・コンXーター』まで持っていきおった」


「一体、どんなゲームなんですか……?」


「『メXルギX・ソXッド・スネークイーター』だ」


「……?」


「久しぶりに発売された『メXルギX』シリーズの新作なのだ。ちなみに、俺の『メXルギX』シリーズのプレイタイムは2万時間だぞ、シンクレア君」


(興味ない……全然興味ないってば……!!)「あはは……そうなんですね……」


「さらに今作は、俺が一番好きな3作目のリメイク作である『スネークイーター』なのだ。俺がどれほど期待していたか。デミアン、いくら友人とはいえ許さんぞ」


「あ、それ~? 先輩、それイーベイ(eBay)で売ってたわよ。初版だからって、かなりの高値で売ってたわ~」


白雪がバラしてしまった……!!! ああ、白雪!! それは言っちゃいけなかっただろ……!!! 可哀想なニコライは、それを受け取るために遠いロシアからここまで来たというのに……!!!!!


「な……何だと……?? デミアンは俺の友だ、白雪。離間工作はやめろ。俺はデミアンを信じているのだ」


「これを見てもそんなことが言えるかしら~? あ……思い出すだけで笑っちゃう……」


驚くべきことに、白雪が差し出したデミアンのイーベイ取引画面には、『日本版メXルギX・ソXッド・スネークイーター 日本版初版デラックスエディション店舗限定』という文字と共に、161.49ユーロ(日本円で約3万100円、韓国ウォンで277,425ウォン、USドルで188.91ドル、2026年1月22日 21時50分基準)で売り払われていたのだ!!!


「……い……いや……」


(この人、さっき捨てられたばかりなのに……まだ信じてる……!!! 僕以上のカモじゃないか……!?)


「それでも……『フェXコン』は無事なはずだ。幸いだな」


「そうかしらね~……実はね、ニコライお兄様……。先輩、今日中にそれも売ろうとしてたわよ。お兄様のやつ……ふふふ」


「……どこだ……一体どこにあるのだ……!!! 俺の宝物は……!!! やはり、あの『デXル・メイ・クラX』ばかりプレイして、『メXルギX・ライジング・リベンジェンス』が名作だなどと言う奴は信じられん……!!」


ニコライよ!!! お前、手のひら返しが早すぎないか!? 数行前までの信頼は一体どこへ行ったのだ!!!


「はい、ここにあるわよ。ニコライお兄様の宝物~」


「デミアンの奴め……。この大切な品を隅っこに放り出しておくとは……。これは驚くべきことに初版であり、ファーストエディションなのだぞ……。これは……俺が155,165.46ルーブルも出して買った代物なのだ……(日本円で324,600円、韓国ウォンで約300万ウォン、ユーロで1,745.70ユーロ、USドルで2,043.30ドルという、とんでもなく高価な代物だ。2026年1月22日 22時2分基準)」


「ああ……『フェXコン』……!!!! ずっと俺と一緒にいようぞ……」


(あ……退職しようかな……)エドワードは本能的に察した。この会社にはまともな人間が一、二人しかおらず、隙あらば社長の友人という男が乱入してくるということを……。


そんな中、ニコライが泣きながら話していたその時、またもや


ピンポーン。


「ここが『デミアン・デモニクスの何でも承ります事務所』で間違いないでしょうか……?」

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