初尾行
恵は、スーパーの入り口前で今日の特売を眺めていた。
その姿もかわいい。
「ほら、ポイント5倍の日なんて主婦ホイホイなんすよ!」
「こっからが大事だ、恵がスーパーの中に入ったから俺らも車から出て追うぞ!」
俺と井口は、バレない距離をとりながらスーパーへと入った。
そして、商品の棚の影に隠れて恵を見張る。
恵は、買い物かごを腕に下げて当たり前のように友恵の好きなプリンを入れていた。
いつも通りだな…。
「課長…奥さん、美人ですねぇ…。透明感がすごい」
井口は小声でそう話す。
「黙れ、任務中だ…」
「すみません。今のところ、プリンとあ、今減塩醤油をカゴに入れましたよ!健康意識が高いですね。ますます、怪しく見えてきました」
「黙れ、ただの優しい主婦だ…」
「課長、見てください!急に止まりましたよ」
恵は、調味料売り場で足を止めていた。
正面には、スープの素がズラッと並んでいる。
そして、恵は少し悩んで高いコンソメを手に取っていた。
「課長、あれって課長の大好物ですよね…」
井口が耳元で囁く。
俺は胸が締め付けられた。
俺が、最近コンソメスープ飲めてないって前ダダをこねたから買ってくれたのか…。
恵は、高いコンソメをそっとカゴに入れた。
表情は少し笑っていた。
いつもあんな優しい顔して買い物をしているのか…。
何気ない風景に俺は胸を痛めた。
次に、恵は野菜売り場でキャベツを手に取り鮮度を確かめている。
「いやー、美人はキャベツの持ち方も違いますねぇ」
「いい加減黙って見てろ!」
「課長の家の今日の夕食はコンソメスープっすね」
恵…俺の言葉を覚えていたのか…。
今日は、早く帰るぞ…恵。
俺は、逆スパイでありながら恵を夫として見ていた。
「課長、今めっちゃ愛する妻を見る時の顔なってましたよ。スパイを見る顔じゃないです」
「嫁としてなんか…見てねえよ…」
コイツ鋭いな。
でも、そんなこと自分でも分かってる…。
愛する妻をスパイを見る目で見ろなんてできる話ではない…。
「井口、MTを見逃す前に追うぞ」
「え、あ、はい!」
恵は、レジへと向かった。
そして、素早く小銭の計算をして会計をしていた。
「課長!あの速さはもうスパイっすよ!」
「バカ、ただの主婦だ!世間の主婦を舐めるな!しかも、恵は何年主婦やってると思うんだ!」
最後は、エコバッグに買ったものを詰めていた。
「課長の奥さんエコですねー。いやー、主婦力高い!え、あ課長!今、奥さんスマホ触ってますよ!何か誰かとやりとりしてるんじゃないですか!」
「マジか」
恵は、笑顔でスマホを触っていた。
その、通信相手の向こう側は誰だ!
男か!?
だったらはっ倒してやる!
お前を暴いてやる!
「井口!無線傍受の準備だ!」
「ええ!まあ、え、はい!」
井口は、狼狽えながらも準備を始めた。
その瞬間、俺のスマホがピコンと鳴った。
「課長のスマホに通知きましたよ!」
「ああ」
俺と柴田は、恐る恐るスマホを見る。
『今日の夕食は修くんの大好物だよー!早く帰ってきてねー♡』
恵からのメッセージっだった。
「ごめん井口、傍受の話は無しだ…」
「はい、っていうか課長奥さんから修くんって呼ばれてるんですか!羨ましいなー!」
井口は、メッセージを見てニヤついて茶化してくる。
コイツ…。
修くんって呼び名は、俺と恵だけの秘密なのに…。
恥ずかしい…。
「井口、今日の尾行は終わりだオフィスへ帰るぞ」
「え、はい。課長、顔赤くなってますよ」
「うるせー!」
「ていうか、課長の無線傍受の命令ただ奥さんへの興味でしょ!」
「いい加減黙れ!」
こうして、調査1日目は終了した。




