シンギュラリティ宣言(後編)・4a
第十七小隊と第十八小隊の隊員たちは、全員まとめて消防衛星に集合し、そこで休憩を取った。このところ、まとまった休日がなく、細切れの交代任務で働いていたせいで、みんなはヘトヘトに疲れていた。
消防衛星は円筒形の小さな構造物で、それぞれ時計回りと反時計回りに回転する二つの円柱が尻同士で合体したような形をしている。消防衛星全体の長さはきっかり五百メートル、直径は百メートルあり、一Gの重力を得るためにおよそ十四・二秒で一回転している。
そこに各国の消防宇宙船が行ったり来たりしているので、中は常に人でいっぱいだ。
格納庫に消防宇宙船を入れると、すぐさまメンテナンスと資材の補充が行われる。それらは衛星のスタッフたちがやってくれるので、その間、宇宙消防士たちは休憩を取ることができる。
外ではプラズマの花火と、強力な磁場を発生させる小型衛星(ジェネレート・マグネティズム・スモール・サテライト)とが干渉し合っているせいで、地獄を描いた抽象画のようなものすごい光景が広がっていた。電磁波のせいで情報もろくに入ってこないため、消防衛星は大洋に浮かぶ孤島のような状況に置かれていた。
そんな中でも、くたびれきった宇宙消防士たちには休息が必要だった。いったい何がこの光景を生み出しているのかを知る以前に、彼らには仕事がたくさんあった。助けなければならない人たちが大勢いるし、これ以上被害を広げる前に片付けておかなければならない事故現場がたくさんあった。
背もたれのない長椅子が広間にずらりと並んでおり、宇宙消防士たちはそこで思い思いに休んでいる。食べ物や飲み物はケータリングから自由に取ってよいことになっているので、みんなはそこで大いに食べ、大いに飲んだ。世界中のあらゆる料理があり、アルコール以外のあらゆる飲み物があった。新鮮な肉や野菜や果物もふんだんにあった。数時間後には現場に飛び立たなければならない彼らは、このチャンスを存分に生かし、全力でリフレッシュしていた。
第十七小隊と第十八小隊の新人たちは、戸惑いながらも休憩を取った。こんな賑やかなところに連れてこられてはみたものの、他の国の隊員たちのようにワイワイと楽しく過ごせる気分には、とてもなれない。
「そんなカチカチじゃ、疲れなんて取れないぞ。靴なんか脱いで、横になって休め」
二つの小隊を率いる総リーダーである三国龍之介は、率先して靴を脱いで服を緩めると、長椅子の上で横になった。
その隣りには、しゃちこばって膝をそろえて座っている第十八小隊ブラボー・チームの若者たち五人がいて、なんとか先輩の真似をして靴を脱ごうとしているところだ。
第十七小隊アルファ・チームの男たちは、ずいぶんと落ち着いて現場を楽しんでいるようだった。彼らは騒ぐことも緊張することもなく、緩やかにくつろいでいる。
一方、第十七小隊ブラボー・チームと第十八小隊アルファ・チームの女性隊員たちはワイワイとケータリングの食べ物飲み物を物色して大騒ぎしていた。こういう状況を楽しめる性格の子たちがたまたま勢ぞろいしているようだ。その中でも率先して大騒ぎしているのは、第十八小隊アルファ・チームの夏木ユズだった。
「こら、ユズ、いい加減に状況をわきまえなさい。いくらなんでもはしゃぎ過ぎでしょ」
と、リーダーの華から注意を受けても、ユズは涼しい顔をしている。そのくらいの図太さがあったほうが、かえって頼もしいかもしれない。そういう風に思うのは、今日初めて過酷な現場を体験した桃井翼だった。きっと何年経っても、今日見たことを何度も思い出すことだろう。そのくらいの濃い経験をたくさん味わった。しかも、今日はまだまだ続くのだ。




