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ガラパゴス・ガーディアンズ2 あるいは航空宇宙消防本部第十八小隊  作者: 霧山純
第二話「桃井翼、ジャーナリストになります!(後編)」
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桃井翼、ジャーナリストになります!(後編)・1a

 ニューヨークのマンハッタン島は、現在では「旧市街」と呼ばれている。

 超高層ビルが密集して建つロウアー・マンハッタンが世界経済の中心地としてその機能を果たしていたのは、かれこれ三十年以上も昔の話だ。


 現在の世界経済の中心地はガラパゴス上空のクロノ・シティだ。そして、国連本部はガラパゴス人工群島のアメリカ区にあるニュー・マンハッタンにその拠点を移している。

 しかし、世界金融の中心地としては、ニューヨークは未だにその地位を他に譲らない。ただし、それはこの旧市街ではなく、ニューヨークの南の海上に新たに作られた埋立地「ニュー・ロングアイランド」に舞台を移している。そこには高さ二千メートルを超える超々高層ビルが林立し、実際にその地を訪れた者にしかその本当の姿が理解できない超未来都市が形成されていた。ここが現在の「新市街」とされている。


 天野(あまの)幸子さちこを案内役として、桃井(ももい)つばさ白石(しらいし)智香ともかは、ニューヨークの旧市街にあるアッパーウエストサイドにやって来た。


 ここは東を広大なセントラルパーク、西をハドソン川に挟まれ、古き良きアメリカを思わせるレンガ造りのビルディングが建ち並んだ地区だ。美しく整備された街路樹の脇をクラシックな乗用車が走り、道行く人々の格好も五十年前から時が止まったように、かつてのニューヨーカーのライフスタイルを維持している。カジュアルでありながらオフィスにいても粗野にならない洗練されたファッションは、人それぞれに巧みにアレンジされていて、どれもけっして重なるということがない。


 だが、その一方で、全体的に年齢が高く、ここに住む人たちは昔の生き方を懐かしみつつ、半ばそれに固執して古い価値観に囚われているようにも見える。


「……とまあ、私にはそういう風に感じちゃうんだけどね」

 翼は、ピンクのオープンカーからレンガの街並みを眺めながら、そんなことを独り()ちた。

「さすがはお師匠、その深い考察にはいつも頭が下がります」智香も周りの景色に見入りながらつぶやくように言った。

「若い人たちのほとんどは新市街やガラパゴスや、宇宙のほうに目を向けているのに、あえてここで暮らす意味ってなんなんだろう……」

「この街に、何かそういう人を惹きつける何かがあるのでしょうね」

 二人はそれぞれ色違いのシャツにジーンズという、カジュアルなニューヨーカーのファッションを真似てみた。翼は真っ白なシャツに茶色のお団子頭。智香は黄色いシャツを着て、長い髪の上に青いヤンキースの帽子を被っている。


「こらこら、君たち、そんな堅苦しい話はやめたまえ」

 ハンドルを握る幸子は、サングラスをぐいと上げて後ろを振り返った。彼女はピンクの女優帽(ガルボ・ハット)を被っていて、異様に目立っている。さらに、へその出たピンクのチューブトップを着て、赤いショートパンツという姿はあまりに大胆過ぎた。「今はこの街を素直に楽しもうじゃないか」

「前を向いてください、幸子さん」翼はぴしゃりと言った。

「私のネビュラは後ろにも目が付いているから平気だもん」

「周りの人が心配するでしょ。ほら、警察官もいるし」


 交差点の脇を、まるで古い映画のコスチュームのような制服を着た警官たちが歩いている。彼らは豊かな口髭を蓄えていて、いささか年齢不詳だ。

「ご苦労様です」

 幸子がおどけて敬礼すると、交差点の警官たちは苦笑しながら鋭い目でこちらを凝視してきた。明らかに一般人を見るときの表情ではない。


「ああ、今ので『幸子が来たぞ』って仲間たちに連絡が行っていたらどうしよう……」

 翼は、本当にあり得るかもしれない未来を心配した。幸子行くところ、トラブルが起こらないはずがないと考えておいて間違いはない。

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