野良ギャング三姉妹と捕まった男・4c
応援部隊が現場の捜索を始めたので、本隊のエディー・マーカス警部も部下たちと共に貨物船の反対側を調べ始めた。
藪の中を切り開いていくと、破壊された船の側面から内部が露出している場所を見つけた。マーカス警部はそこに犯人が侵入した形跡がないかどうか調べた。足跡、体液、指紋、皮膚のかけら、服から落ちた繊維など、あらゆる物証を探した。
そして、何も見つからないことを確認すると、集まった部下たちに船内への進入を許可した。
「油断をするな、中に敵が隠れているかもしれん」
マーカス警部は、銃にきちんと弾が装填されているかを確かめた。こうした現場では、常に一瞬の油断が死に直結する。
その頃、ステファニーを抱きかかえたマルコは、貨物船から見て真南の湖のほとりを全力疾走していた。あと五十メートルほどで、愛車のジープに辿り着くことができる。愛車は岩に偽装して風景に溶け込んでいるが、マルコとステファニーのネビュラには、その姿がはっきりと映っている。
そこに、妹のマーガレットの声が届いた。
「ハーイ、姉さん、そっちはどう?」
「お前、私たちに内緒でえらいことしてくれたらしいな」
興奮したステファニーは、抱かれたままで上半身をぐいと起こした。彼女の腕はマルコの頭にしっかりと巻きついている。マルコの視界はそのせいで半分塞がれた。
「どう? びっくりしたでしょ」マーガレットは笑っている。
「あんた、今、警察と一緒にいるの?」
「いるよ、私の後ろからついて来てる。ボスのグラハムさん」
「姉の私がよろしく言っていたって伝えてくれる?」
「あはは」
マーガレットは、息を切らせながらも楽しそうだ。「いいよ、よろしくって伝えておく。しばらくこっちで現場をかき回しておくから、姉さんは早くおうちにお帰り」
「サンキュー、マギー、ごめんね」
ステファニーは、それ以上何を言ったらいいのかわからなくなった。肝心の狙いのブツは、まだ貨物船に積まれたままだ。何か月も前から準備してきた計画なのに、ほんの少しのドジ(腐葉土に足を取られる)でおじゃんになってしまった。他の姉妹たちにも申し訳が立たない。
その無念さと悔しさが、彼女を抱きかかえているマルコにも伝わったようだ。
「ドンマイ、ステファニー、またチャンスが来るさ。捕まらない限り、君たちの稼業は永久に続くんだろ?」
「ありがと、マルコ」
意外にもステファニーは素直だった。「今回は私のせいでダメになっちゃったから、次は私が良い仕事を見つけてこなくちゃね」
「ほら、着いたよ」
マルコは、ステファニーの身体を車の前で降ろした。急に軽くなった肩が、かえって彼には心細かった。これで、とりあえず彼の仕事は終わりのはずだ。このハッキングのために、彼は月の近くのラグランジュ・ポイントでさらわれてきたのだから。
マルコは、草むらの中に立ち、両手を上げてジープと向き合った。
「じゃあ、僕はこれでさようならだね」
――グッバイ、彼自身、その言葉の意味は承知していた。慈しみの女神たちというあだ名の由来は、彼も知らないはずがなかった。
先にドアを開けて運転席のシートに腰かけていたステファニーは、胸のホルスターから小さな拳銃を抜き取った。その、フレームのほとんどが樹脂でできたオートマチック銃は、あらゆる種類の銃の中でももっとも誤作動が少ない製品として知られている。
ステファニーは銃のスライドを引いて初弾を装填した。そして、その銃口を外に立つマルコの額に向けた。
「最後に何か言い残すことはないかい?」
マルコは、両手を顔の横に高く掲げた姿勢で、どこか開き直った気分に浸っていた。
「やっぱり君たちはこうでなきゃいけないと思っていたよ。ここで人質を逃がすようじゃ、これから長くやっていくのは無理だろうからね」
ステファニーは銃を構えた姿勢のままで言った。
「最後に言いたいことは、それだけかい?」
いよいよ最後のときだ。マルコは、乾いた唇を舌で舐めた。
「こういう形で出会うのでなかったら」
マルコは、ステファニーがその言葉を一言一句聞き逃さないように、はっきりと区切りながら言った。「僕は君のことをずっと愛していたかった。病めるときも健やかなるときも、喜びのときも悲しみのときも、富めるときも貧しいときも、この命ある限り、いつまでも真心を尽くしたいと思っていたよ」
それを聞いたステファニーは、ただ一言、「そうか」とつぶやいた。




