回転するギロチン・1a
【Blenderで作製した、クロノ・シティの全体概略図】
【分解したクロノ・シティ。左上から第一階層~第四階層】
遠巻きに見ていたときにはそれほど気にならなかったのだが、いざそこに上陸するとなると急にその印象が生々しく迫ってくる。
ガラパゴスから飛び立った高速宇宙船は、上空三万六千キロメートルの静止軌道に沿いながら、クロノ・シティに接近していた。
目的地が真上にあるからといって、宇宙船は空へまっすぐ昇っていくわけではない。まずは楕円軌道を描いて地球の真裏へと向かう。インド上空あたりで高度が三万六千キロメートルに達したところで、船は静止軌道に乗り、再びガラパゴス側に回り込んでくる。楕円を半周してから、真円を半周して戻ってくるわけだ。
そのため、時速四万キロメートルの速度で三時間程度かかることになる。
視界いっぱいを埋め尽くすほどに接近したクロノ・シティは、ボールの形をした回転するギロチンだった。その形容が真っ先に来るので、他の喩えがすべて吹き飛ばされてしまうほどだ。
宇宙エレベーターで支えられている二重のリングの内側に、直径三十六キロメートルの球体が回っている。それは完全なる球ではなく、面積だけで見るなら半球分しかない。それは四等分にしたスイカの皮だけを残して、それを二枚向き合わせたような形をしている。
その二枚向き合わせたスイカの皮が、四層重なっている。層と層の間には二千メートルの間隔が空いているのだが、全体が大きすぎてほとんど隙間がないように見える。
それが外側から内側へと順番に第一階層、第二階層、第三階層、第四階層と名付けられている。
隣り合う階層の回転軸は九十度ずれている。さらには隣り合う層同士は反対方向に回っている。第一階層と第三階層が反時計回りに回っているとき、第二階層と第四階層は時計回りに回っている。
その反対向きに回転する二つの層が重なり合うときに、刃が交差するギロチンのように見えるのだ。その間をすり抜けて内側の階層へと向かう宇宙船は、極めて正確な時刻表を頼りに、極めて精緻に決められた軌道を通過しなければならない。もしミスをすれば、本当にギロチンの刃の露となる運命が待っている。
そんなところへ、森崎和馬と桃井翼たちの乗る高速宇宙船は接近していった。目指すは第四階層だ。ギロチンの交差する場所を三つ通過した先に、その目的地はある。




