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宇宙へお引越し・2a

 宇宙消防士への就職を希望する者は、高等教育学校の五年生になると、職業訓練(インターン)として消防学校に入らなければならない。前半の半年間は総合的な実技訓練と学科を学び、後半の半年間は各担当ごとに専門的な訓練を積む。リーダー、救命医、宇宙船技師、パイロット、通信士を担当する五人が一つのチームになり、アバターを使って肉体は陸上に残しながら宇宙での実技訓練を行う。


 今年の消防学校の卒業生たちはみな、卒業のタイミングで本物の宇宙での現場を経験することになってしまった。その短い時間で、彼らは以前とはまるで違う人間になったような気がした。


 和馬はいつものようにジャージ姿で引っ越しの荷造りをしながら、その精神がすっかり別人のように変わってしまった自分自身を感じていた。

 それは手伝いに来てくれている沙織と晴香においても同様だった。彼女たちもいつも通りのジャージ姿だが、そこにいる彼女たちはもう以前の彼女たちではなかった。


 和馬はコンテナケースを持ち上げた勢いで、なんとなく横にいた沙織に話しかけた。

「ねえ、沙織ちゃん」

「なあに?」

 と言って振り返った沙織の髪が、ふわりと風に乗って和馬の鼻をくすぐった。彼女も大きなコンテナケースを軽々と運んでいた。


 和馬は言った。

「なんだか、今の俺たちならなんだってできるような気がしてくるんだけど、沙織ちゃんもそんな気がしないかい?」

 沙織は真面目な顔でこちらを見返し、深くうなずいた。

「私もそんな気がする。これってなんなんだろ? 宇宙から帰ってきて興奮してるのかな」

「わかんない」


 和馬は首を横に振った。だが、よくはわからないのだが、このとき和馬と沙織は何か共通の感情で一つに繋がっているような不思議な感覚を味わっていた。困難を共に乗り越えた仲間意識や、相手への信頼がそれを支えていることは間違いない。

 沙織が満ち足りたような目でこちらを見てくるので、和馬もなんだか嬉しくなって微笑みを返した。


 それを横から不審そうな目で見ていた晴香が、コンテナケースをやけくそのように二段重ねにして、大股でやって来た。

「こら、そこ、イチャイチャしないよ」

 晴香は二人の間にぐいぐいとケースを割り込ませてきた。「龍之介さんが外で待ってくださっているんだから、急いで運ばないと」


 そのころ、龍之介は外に車を置いてその横に立ち、和馬たちが荷物を持ってくるのを待っていた。そうしながら、ネビュラで盛んに仕事の連絡を取り合っていた。龍之介もまた、第十七小隊の隊員として、クロノ・シティに配属されることになった。彼はリーダーとして、あらゆる手配を取りまとめなければならなかった。さらには妻と子供たちのことも考えなければならない。


 幸いにも、保育士の冬樹(ふゆき)冴子さえこ先生も一緒にクロノ・シティに来てくれることになった。彼女には娘の(まとい)と息子ののぼるがよくなついてくれているから、これからもお世話になれることはとてもありがたい。それだけでも心配事の九割くらいは片付いたような気さえしてくる。


 冴子先生は、同僚で救命医の夏木コウジの奥さんだから、一緒にクロノ・シティに赴任することは必然とも言える。二人の間には三歳と一歳の息子がいるのだ。


 いよいよ、このガラパゴスもしばらくは見納めだ。二年ぶりの宇宙は、俺たちを歓迎してくれるだろうか。

 龍之介は武者震いのする気分で、はるか上空の宇宙エレベーターを見上げた。

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