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ガラパゴス・ガーディアンズ2 あるいは航空宇宙消防本部第十八小隊  作者: 霧山純
第三話「第十八小隊はクロノ・シティに配置されます(前編)」
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第十八小隊はクロノ・シティに配置されます(前編)・4b

 かつてスペースデブリから宇宙船を守るもっとも確実な方法は磁気シールドだった。それは強力な磁場を発生させることで、磁石につく鉄のような物体だけでなく、非磁性体と呼ばれる磁石につかない物体までもを離れた場所から操作する技術だ。その磁場の網が細かいデブリを捕まえる。


 このシールドを用いることによって、宇宙船はスペースデブリが密集した場所を安全に通過することができる。シールドに捕らわれたデブリは回収されるか、遠くへ押しやられるかして、宇宙船に被害をもたらすことができないからだ。


 ただし、この磁気シールドには大きな欠点が二つあった。それは、磁気の壁によって通信が完全に遮断されてしまうことと、宇宙船同士が密集した場所では磁気が干渉してしまってうまく働かなくなるということだ。


 実際に、クロノ・シティの周囲で引き起こされている多重事故は、そのシールドを十分に生かせているとは言えない状況だった。制御するもののないスペースデブリは、思いのままにあらゆる方向へ飛散している。


 第十八小隊アルファ・チームの五人が乗る消防宇宙船ロムルス号は、事故現場のウォーム・ゾーンに差し掛かった。そこには世界各国の航空宇宙消防隊の船も集まっている。


 事故現場は三つに区分け(ゾーニング)される。それは中心から赤・黄・緑に色分けされており、それぞれ「ホット・ゾーン」「ウォーム・ゾーン」「コールド・ゾーン」と呼ばれる。ホット・ゾーンがもっとも危険で、コールド・ゾーンは安全とみなせる区域だ。航空宇宙消防隊は、その中間にあるウォーム・ゾーンに集結し、活動を行う。


 ネビュラ上には、各国の消防宇宙船がどの国に属しているのかが鮮明な国旗の画像とともに表示されている。実際には黒一色の船体であっても、日本であれば日の丸、アメリカであれば星条旗といった具合に、まるで船にステッカーが貼られたように一体化して、一目でわかるようになっている。


 静止衛星でもあるクロノ・シティは、時速一万一千キロメートルで地球を周回している。クロノ・シティは四つの階層に分かれ、それぞれの階層には二千メートルの間隔が置かれている。それは地球であれば雲が浮かぶ高度であり、クロノ・シティの四つの階層は大気と雲で満たされた空間で仕切られている。


 一つの階層に立って空を見上げると、空気が澄んでいるときには上の階層の底の部分がうっすらと見えることもあるが、基本的には雲に遮られている。


 クロノ・シティは大気に覆われているので、宇宙から見ると青い靄に包まれているように見える。ほんの三年前まで、クロノ・シティは透明なガラスのドームに覆われていた。そのとき起きた機械細胞(マシン・セル)との融合によって、ガラスのドームはすべて取り除かれ、代わりに濃密な大気の層が周りを包むようになった。それは空中都市そのものが生命を持つようになったことを意味する。


 それから大規模な改修が行われたクロノ・シティは、昔の無機質な機械の塊のような姿から、四つの大地を重ねたような有機的な姿に変わった。回転するすり鉢状の大地には地球と同じ一Gの重力が発生するため、見かけ上は地球で暮らすのとほとんど変わらない。


 アルファ・チームのリーダー、桃井華は、現場への到着を地上の本部に報告した。

「第十八小隊アルファ・チーム、現地に到着。静止軌道に沿って帯状に広がるスペースデブリの範囲を確認。ホット・ゾーンの全長は三百二十キロメートル、幅は百三十キロメートル、現在も一分ごとに五、六キロメートルずつ拡大している模様」

 本部のオペレーターからの声が瞬時に返ってきた。

「こちら本部、了解。第十八小隊アルファ・チームはウォーム・ゾーンで待機し、次の指示を待て」


「了解」と華は答えると、破壊された船と破片とが視界いっぱいを満たしている宇宙空間に目を向けた。二年のブランクを経て、いよいよ現場に戻ってきたのだ。

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