人間は器用貧乏
私はツインテと出会って、11日しかたってもいないし役に立つところか基本的には迷惑しかかけていない。
私と出会っていなければ、村にはきちんとした形で訪れることになっていただろう。
山も迂回せずリスクをとり近道を通っていっていたかもしれない。
村人と思われるグループ達にも化物と一緒にいる人みたいに思われなかったかもしれない。
「あの、ごめんなさい。こんなことにはなるとおもっていなくて。」
謝ったのは、ツインテの方だった。
「私が村に行くことを進めてしまった。本当に申し訳ないわ。その、顔も化物みたいになってしまったし…。」
そんなことはない。化物になったのは自分が熊に食べられたと勘違いしたからだ。
村に行くことを決めたのも自分だ。
それなのに謝っているのはツインテの方。こんなのは間違っている。絶対に間違っている。
「私の方が悪いです。すごい助けてもらってるのにこんなことになるなんて。ツインテさんにはいつも助けてばかりなのに
私はツインテさんに何もできてない。」
今になって思えば、ツインテは出会ってから今この現状を知りたいがツインテとあまり仲良くしようとしていなかった気がする。
ツインテは旅の目的を教えてくれたり、何も知らない私に色々話してくれたりしてくれた。色々優しくしてくれた。
こんな私にもツインテに何かできることはないだろうか。何か…。
私が私と自認した時からのことから今までのことを思い返してみた。
私は今まで、お母さんと一緒にいてずっと本を読んでいた。
家に大きな書斎の部屋があり、そこから本を一つずつ読んでいった。
ジャンルは様々。小説、勉学、歴史、魔導書、宗教、伝記、帝王学みたいな本、パチンコ必勝本。
中身が難しいものもあり、それらを自分で解読はすることはできないものもあった。
とはいえ、ある程度の知識は身についたようには思う。
でも、その知識を活用したことはない。お母さんと一緒にいたときは使う必要性がなかったからだ。
そして、多分私は現状を見るにお母さんといた場所からこの世界になんらかの方法でワープしたのだと思う。
お母さんがいた場所は、世界が同じ地球かもしれないが、違う世界かもしれない。お母さんといたところで、熊の神とか聞いたことないし…。
世界が違うと仮定すると使えない知識もあるかもしれないが、基本的に世界が違えど法則は変わらない。
例えば、1+1は2ということにはどの世界も共通しているということ。
ただ理由は省略するが、魔界では魔法が使うことができなかったり、天界では重力が地球より軽かったり、世界特有の性質はある。
「そういえば、ツインテさんって魔法が使えるんですよね?どんな感じのものが得意なんですか?」
「基礎的な魔法は全部使えるわよ。旅に便利な魔法しかあまり使わないから…まぁ器用貧乏といったところね。」
確かに、出会った時も特定の物質にしか発火しない炎の魔法を使っていた。
「具体的にはどんな感じのものが使えますか?」
「火とか水とか風とかを少しだけ操ることができるけど。」
「破滅魔法とか使わないんですか?」
「破滅魔法?聞いたことないわね。」
破滅魔法。それは世界を滅ぼすことができる魔法。
実はいうと私は破滅魔法に魅入られ、破滅を愛し、破滅に愛された女。
実際使ったことはないが、魔法陣を描くことはできる。
「世界を滅ぼす為の魔法なんです!」
「は?」
そういって、私は自分の指を切った。
その指で床に、魔法陣を描き始める。手が縛られているため時間がかかる。
血が足りなければ、違う指を切りまた再度描き始める。血でできた魔法陣なので、部屋中に鉄のにおいがする。
そうして指10本を負傷させて、なんとか魔法陣は完成した。
魔法陣は完成したが、魔法は出ない。どうやったら、魔法は出るのだろう。
そういえば、作・アリスさんの本にときめき魔法トゥインクル☆はあと という シリーズがある。
本の内容を簡単に説明すると、超絶イケメン王子様をときめき魔法で助ける一般女性の主人公の話。
その一般女性が魔法を放つ際に言う言葉がある。
『あなたにどっきゅん♡トゥインクルはあと!燃え上がる恋!愛の炎の魔法!』
他には
『あなたにどっきゅん♡トゥインクルはあと!冷めない恋!冷笑魔法!』
などある。これらは詠唱というらしい。つまり、魔法を使うためには詠唱をしなければならないということか。
本によると詠唱は心を込めて気持ちを言葉に表すらしい。私が破滅魔法に対する気持ちを言葉に表すということか。
私は両手をあげた。そして動きを付けながら次に続く。
「世界を破!メツ♡この世をハ!滅♡†未来永劫†メッセよ!きゅいん♡はあと!」
最後には腕を横に、自分のつむじに両手の指の先を向け、がに股のハートのポーズを作った。
詠唱した後に少し間があったが、ツインテは何も言わずに私の腹を殴った。
ちなみに、破滅魔法が発生することはなかった。
「申し訳ないけど、今のあなたは見た目が気持ち悪い化物だから、たとえかわいい声でかわいい?ような動きをしたとしても
すごい逆に気持ち悪さ倍増というか、率直に言うとすごい気持ち悪いからやめて下さらない?」
私はお腹をなぐられてうなだれていた。そんなに私すごい気持ち悪いんだ…。
「ごめんなさい、私迷惑かけてばかりですよね…。」
ツインテを助けるどころかまた迷惑をかけてしまった。
「いや、別に何もしなければその顔でも何も言わないわよ…。世界を破滅だかなんだかしらないけど、もし世界が破滅したとしたらあなたも死ぬのよ?
本当に魔法が発生したらどうするつもりだったのよ…。」
確かに言われてみればそうだ。全ては先のことを何も考えていない私のせい。
「本当に…ごめんなさい。」
私は深々と頭を下げた。
「こちらこそ、言い過ぎたわ。ごめんなさい。」
ツインテも軽く頭を下げた。
そして、私とツインテは微笑みあった。私ははたから見たら、出来てるかどうかは分からないけども。
「でもどうして魔法が出なかったんだろう。この魔法陣は合ってるはずなんですけど。血で描いたのが悪かったんでしょうか。」
「多分なんだけど、世界を破滅するほどの魔法なら魔力が足りないんじゃないの?魔法陣が正しいからと言って魔力がなければ使えないわよ。」
なるほど。魔力の存在を完全に忘れていた。
人間は保有する魔力が他の種族より少ない傾向があるため、そこまで強い魔法が使えないんだった。
「魔力かぁ。自分の魔力がどのくらいか分かる方法はないです?」
「うーん、例えば火の魔法を出して段々威力をつよくしていって強さが止まればそこが限界って感じにはなると思うけど。」
私は簡素な火の魔法を使用するために指5本にすべて、ろうそくの火くらいのサイズの小さな火を出した。
「え!?魔法陣なしで魔法を使ったの!?」
「そんなにおかしかったですか?」
「魔法陣なしで魔法を使うのは、かなり高難度の使用方法よ。例え簡単な魔法でも高難度の魔法陣を使用した魔法より難しいといわれているの。」
そうだったのか。まぁ、ここから火力を上げていけばいいんだな。
力を入れる。だが、火力は上がらない。
「ここまでしか上がらないんですけど…。」
「うーん。魔法陣ありで魔法は使えないの?」
「私、破滅魔法以外は魔法陣かいたことなくて…。」
「あなた、なんでそんな極端なの!?」
ツインテはこほんと咳払いした。
「残念だけど、あなたの体に魔力はそこまでないわね。確かに魔法陣なしで魔法を使うのは難しいんだけどそれは別の話。いまのあなたは、ただ器用に威力の低すぎる魔法を使えるだけよ。」
そんな…私は破滅魔法を使うことができないのか…。
破滅を愛し破滅に愛されていると思っていたこの私が…。
私は膝から崩れ落ちた。
「まぁお互い器用貧乏という感じね…。」
そういってツインテは詠唱をし、手に炎をだした。勿論わたしよりもでかい。
「詠唱というのは本来、魔法陣を口頭でいうもので、魔法陣を書いた後にするものじゃないのよ。直ぐ使う場合は詠唱。罠の設置などは魔法陣を事前に仕込む感じね。」
「では先程の破滅魔法は魔法陣で書いたから、詠唱は必要ないということですか?」
「あれ、詠唱のつもりだったの??」
「詠唱は心を込めて気持ちを言葉に表すものですよね?アリスさんが書いた ときめき魔法トゥインクル☆はあと シリーズ私好きなんですよ。」
ツインテは考え込んだ。
「魔法トゥインクル☆はあとは流行っていたから私が子供の時に見たことはあるけど…作者ってそんな名前なのね。」
やはり、ときめき魔法トゥインクル☆はあとは人気あるんだ!私も大好きだし。
あれ…?
なんか違和感があるような…。なんだろう。この違和感が分からない。
ときめきの有無とかじゃない何かが…
「話は脱線したけど、魔法トゥインクル☆はあとシリーズは子供向けの話だから、都合よく描かれてるわよ。それを真似したところで魔法は使えないわよ。」
そして、手にある炎を消した。
魔法陣があれば魔法が使える。ただ、実用的な話を言うと、書くのにも時間がかかる。
だから物語ではあんなに詠唱で魔法を使っているのか…。
魔法陣で全て解決すればいいじゃんという昔の私の目論見を全て粉々にされた気分だ。
やはり、知るのは簡単でも、使ってみると色々出来ないことが多いのだなと実感した。




