母との別れ、そして出会い
私は、ずっとお母さんと一緒にいた。
お母さんは私に色んなことを教えてくれた。
私は、色々知識を身に着けていきいつしか、常に本がそばにいるようになった。
時間がたつにつれて、お母さんは質問しても答えてはくれなくなった。
それでもお母さんはずっと私のそばにいてくれた。
ある日、お母さんは言った。
「あなたはここにいなくてもいいの、だから…。」
「お母さん…?」
その瞬間、私の体が緑色に光った。
大きい水晶、近くにある2つの椅子、地平線に届くまでの生い茂る緑は風に揺らいでいて
そして、瞬きをした一瞬にして視界が変わった。空。
ちゅんちゅんと鳥が鳴いている。
なぜか、腰が痛い。
重い腰を上げ、体からいつもは聞かない音を鳴らしながら、やっとの思いで立ち上がる。
視界には、木が多く恐らくここは森。木を支えにして私は寝ていたのであろうか。
「やっと起きたの?」
声の方から、温かい空気を感じる。
見てみると、焚火のそばに人間の少女が座っていた。
横には本が置いてあった。
この世界に来る際、近くに置いてあった一冊だけこちらの世界に転送されたらしい。
ゆらゆらと揺れる炎と少しの火花が散っている。
「火事とか大丈夫そうですか?」
「あのねぇ。3日も倒れてた人に心配されたくないわよ。これはね、魔法の炎なのよ。この炎は特定の物質にしか引火しない魔法を使っているの。」
よくよく火元をみてみると、見慣れない灰色のレンガみたいな物質があった。これに火がついている。というか、3日も気絶してたんだ…
私は少女のもとにより、対面の方に座り込んだ。
「あなたを見つけたのはね、少し遠くに緑の光が見えたの。誰かいるのかと思って向かってみたらあなたがいたのよ。」
たしかに、お母さんと離れ離れになった瞬間、私の体が緑色に光っていたからここに来た瞬間も光っていたのか。
記憶があるのは空が目に広がっていた。となると、どこからかここに落ちてきた…?
それにしては、地面にクレーターのような衝撃跡がない。
「そうねぇ、あなたが倒れていた時、熊に食われる寸前だったから、追い払って少し遠くに来たわよ。あとそれ、所持物かと思うから置いたわよ。」
「えぇ!?」
「私の名前は、ツインテよ。あなたは?」
「私は…。」
そういえば、私の名前ってなんだっけ?
私は本を読むことも多く、物語などの本も多く目にしてきた。
それぞれの物語の登場人物は確かに名前がついていた。
しかし、お母さんは、私の名前を呼んだことがない。
つまり、私に名前があるのかもしれないが分からない。
「もしかして、忘れたとかじゃないでしょうね…。」
呆れた顔でツインテは言った。
実は私が名前を忘れていて、もしかしたら遠い昔自分の名前を教えてくれたのかもしれない。
そう思い、昔のことを色々思い出す。
思いだしたのは、家にあったサーバー部屋にたまにいた黒い少女か…。私は幽霊といっていた。
幽霊という名前かと思っていたけど、あの子もしかして幽霊なのかな…?怖!
と、いうか名前が思い出せない!
「私の名前はユメです!」
口が意識よりも早く動き、咄嗟にでた名前がユメだった。
意識が追いついた時、あたふたしてしまった。
「よろしくね。ユメ。」
「こちらこそよろしくお願いします…。」
どうしよう。私の名前がユメになってしまった。
「私、これからこの山を越えた先の近くの村によろうと思うのだけれど、あなたはどうするの?」
「村ですか…?」
「まぁ何もないし誰も知らないような村なんだけどね。」
これってついて行っていいってこと…?
登山というものを見くびっていた。
山を越えるとは簡単には言うが、この山はそもそも人が道を通るように整備されていないし、
絶対に人が通る場所ではない所を通っている。
草が自分の身長まで伸びているし、それをかき分けた先に急な傾斜が待っている。
もちろんわたしは登山をするような、装備をしていないため急な傾斜を登らずに迂回する形での道のりとなった。
距離が長くなるため、体力もすぐつきてしまう。休憩をこまめにして、少しずつ村への距離を縮めていった。
その間、ツインテとの交流を深めた。倒れていて、記憶を断片的に失った可能性があるという設定で話をし、この世界について色々教えてもらった。
記憶を全て失ったとなると、過去の話もできなくなり、お母さんの場所に戻ることが難しいと判断したためだ。
この場所は地球であった。地球は人間が住んでいる場所であるため、人間の私にとって都合がよかった。
地球以外にもたくさんの世界がある。魔界とか天界とか色々。
そしてこの場所は地球の中でもとても小さな島で沖の島というらしい。
恐らく、彼女の言語から察するにここは日本。
少し離れた先にもここより大きな島がありそこには未確認生命体が蔓延っているようだ。
未確認生命体は、突如として現れた、謎が多き物質的で驚異的な存在。
この島にはいないらしいが、未確認生命体と対峙すると基本死ぬため、息を潜めて生活する人たちもいるらしい。
そのため、違う世界・天界に避難する措置がとられている。抽選で選ばれた人間が天界に避難することができる。
ただ、その抽選も限りなく少ない枠を勝ち取らないといけず、結局は地球にたいていの人間がとどまっている状態である。
ツインテは旅をしているらしく、少し離れた先の大きな島出身だった。
旅の目的は、天界に行けるまでにこの世界を見ておきたいとの事。
「勿論、それまでに未確認生命体に見つかれば死ぬ。でも私自身色々と思うところがあって、世界を知りたいと思ったの。」
朝と夜を繰り返し10回目の夜。ついに兆しが見えてきた。
遠くにいくつかの明かりが見えるのだ。
「それじゃあ今日はここで休みましょうか。」
山の中でも少し平らな場所を見つけ、そこに泊まることにした。
「もしかしたら、襲われる可能性があるから気を付けてね。」
「動物ですか?」
登山中にも、たまに動物に出くわすことがあった。
「以前この辺で、熊を見たという人がいたらしいから。今までの場所は熊がこなさそうな所を選んで、もし来た時用に罠魔法をしかけてたんだけど今回はそうもいかないから。」
「どうしてですか?」
「あの村あるでしょ?あの村は熊の神を崇拝している村なのよ。だから、熊を攻撃したと分かれば私たちがぶっ殺されるわよ。」
全ての世界には、神というものが存在する。
ただ、存在するだけで、いるかどうかは分からない。
所謂抽象的な存在ではあるのだが、確認されているだけでも2名の神はいるらしい。
神は何をしているのか、何のために存在しているのかもあまりよくわかっていない。ただ、いい方向へ導いてくれると信じている者が多い。
邪神という、この世界を悪い方向へ進める神も存在している。
熊の神…はよくわからないが、熊を崇拝している村なのでここら一帯は熊が多いのかもしれない。
「いい方法がありますよ。」
「いい方法ってなによ。」
「食べちゃえばいいんですよ!」
そう、体の中に入ってしまえばバレることもない。
「いや、食べれない部分はどうするのよ…特に毛皮とか。」
「その部分も食べちゃいます。」
「いや気持ち悪!」
めちゃくちゃドン引きされてしまった。
「まぁ確かに、髪の毛一本だけ食べたことがあるけど喉仏に絡まって非常に気持ち悪かったこともありました…。」
「何してんのよ。」
「でもいまがその時なんです!昔食べた”髪の毛”これを生かす時が来た!」
「来ないわよ。」
そういったツインテは私に腹パンし、私は普通に気絶して次の日を迎えましたとさ。




