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第7話 先にシャワー浴びてこいよ

テーブルの上には、ルームサービスで頼んだ食事の食べ終えた皿が並んでいる——

ふたりはすっかり満腹になっていた。


俺はテーブルを見ながら心の中でちょっと安心していた。

さっきのあの雰囲気のまま流されてたら、色々後悔した気がする。


「おいしかったわね、鷹村君」


お腹が満たされて満足そうな表情の彼女が話し掛けてくる。


「ああ、意外とラブホの飯もうまいもんだな」

「そうね……でも、こんなに頂いちゃって良いのかしら?結構なお値段しそうだけれども」

「気にするなって、全然大丈夫だよ」

「そう……なんか、悪い気がしちゃうわ」


そんな彼女の言葉に俺はふと考えてしまう。


柴乃宮って本当に普通の金銭感覚してるよな、ウリやってるやつって金銭感覚狂うって見かけたけど……


そこから生まれた疑問がどんどんと心の中で膨らんでゆき、俺のバカ緩いお口から漏れ出した。


「なぁ柴乃宮……こんなこと聞くの悪いってわかってるんだけどさ、お前なんでウリなんてしてるんだ?なんて言うか、不思議なんだよ……」


そんな俺の問いかけに彼女の表情は曇る。あたり前だ。俺だって彼女の立場ならこんな事聞かれたくないってわかってる。

でも出来れば知りたい。彼女を助ける為には一番大事な情報だから。


「そうね……それは……」


しかしそこで彼女の言葉は途切れてしまう。

俺は心が痛むが、本来の目的のためにも彼女の秘密に強引に手を突っ込む覚悟を決めた。


「柴乃宮。さっきお前、何でも従う奴隷って言ったよな?それで俺はご主人様なんだよな?」

「ええ、言ったわ。実際そうだもの」

「そうか、その言葉、二言はないな?」

「もちろんよ」


すまんっ柴乃宮……


「じゃあ……お前がウリやっている理由を俺に教えろ。これはお前のご主人様からの命令だ!!」


やっぱ口にするとくっっっっそ恥ずかしい!?どういうプレイよこれ!?俺こういう趣味無いんだけど!?


体中からへんな汗が噴き出しそうになる俺に対して、何故か彼女は頬を赤く染め、瞳ウルウルさせながら光悦の表情っぽいモノを俺に向けてくる。


「ハァハァ……はいっ、()()()()♡……」


………えっ?柴乃宮さん?それなに?


ちょっと予想外の反応に戸惑う俺に構うことなく話しだす彼女。


「私の父ね、起業に失敗して借金があるの。それで、私と母は最初はバイトをして返済に協力してたんだけど、母が過労で倒れて……それで返済が追いつかなくなって……私も自分を売るなんて凄い抵抗あるけど、やらないと家が取られちゃうみたいだから仕方なく。まあエッチな事は嫌いじゃないのが救いね……」


「そうか……その借金ってどれくらいなんだ?」

「3000万円位かしら……」


俺は彼女の話を聴きながら密かに涙していた。

ちゃんとした理由があったのだ。ただの気の迷いや私欲の為ではない、切羽詰まった理由が。


彼女の表情はみるみる暗くなり、さらに言葉を続ける。


「ほんとにバカよね、父も母も。おかげで大学も行けないわ。正直付き合ってられないのよ。だからさっさと身体で稼いで、借金返したら縁を切って家を出るつもりよ」

「縁を切るって……お前」

「このままだと、また何かありそうでもう嫌なの」

「じゃあ、借金を返し終えたらもうウリはやらないのか?」

「もちろんよ。私だって本当は好きな人以外には抱かれたりしたくないもの。食事だって嫌よ。まあ大学へ通う費用を稼ぐために普通のバイトくらいはしなきゃいけないけど」

「………」


なかなかヘビーな会話に俺も返す言葉が見つからない。

ただ、言いにくい事をわざわざ言わせてしまって申し訳ないという気持ちを込めて彼女に謝った。


「柴乃宮。ごめんな、無理矢理こんな事きいて」

「いいのよ、命令だもの。ご主人様♡」

「おいっ柴乃宮!!もうその設定は終わりな!」

「えっ、もう!?……まあ、鷹村君がそう言うなら仕方ないわね」


少しふてくされたような顔になる彼女。


なんか残念がってない!?俺の気のせい!?


「そういえば鷹村君。買われている私が言うのも申し訳ないのだけれど、できればその『柴乃宮』って呼び方、やめてもらえないかしら?その名字を聴く度に父を思い出して気分が悪いの」

「えっ?それは悪かったな……じゃあなんて呼べばいいんだ?」

「それは……名前で……かすみって呼んでほしいの」

「かっ、カスミッ!?」


少し恥ずかしそうに声のトーンを落として告げられた彼女の提案に、俺は完全な童貞ムーブで戸惑う。

名前呼びとは、慣れていないヤツにとってはものすごいハードルなのだ。


「ダメかしら?それなら無理強いはしないけど……」


少しへこんだような仕草を見せる彼女に俺は勇気を振り絞る。


「ダメってワケじゃ……ああ、わかったよ霞」

「ふふっ♡ありがとっ」


無邪気に笑う彼女。

そんなふとした瞬間に見せる彼女の……いや、霞の笑顔はいつも俺を虜にする。


「なあ、霞……俺も……」

「なにかしら?俺も?」

「…………いやなんでもない」


そこまで言うと俺は言葉を飲み込んだ。俺も名前で呼んでくれなんて言えるわけない。そんなおこがましい事を…彼女を金で買った俺が。

不思議そうにこちらを見つめる彼女からつい目を逸らしてしまう。


「そう?まあいいわ。そういえば今日はちょっと汗かいちゃったわね、鷹村君が学校で走らせるから……」

「あれはっ……すまん」

「いいのよ、冗談よ。私シャワー浴びてこようかしら?鷹村君はどうする?」

「うーん、霞のあとでいいよ。こういうのは女性は大変だって聞くし、先にシャワー浴びてこいよ」

「そう?じゃあ先にシャワーいただくわね♡」


そういうと彼女はスッと立ち上がり浴室へと向かう。

そして俺はというと、その選択を深く後悔をしていた。


おい、もしかして、これ俺が先に入ってベッドで寝たふりしてれば、彼女と関係セックスを持たずとも今日を乗り切れたんじゃね!?


時既に遅し、賽は投げられた。既に室内にはシャワーの音が響き渡っていた——




次回:生徒会長との一夜


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