第35話 生徒会長と委員長とほのぼの放課後カフェ
その日の放課後——
今日は楓の足の状態を考えて放課後の練習は中止だ。
だから家で霞とまったりしようと思い上機嫌で帰り支度をしていた。
「霞、今日生徒会の仕事は?」
支度を終えた俺は前の席に座る霞に声を掛けた。
今日の朝のあの出来事から、なんとなくクラスの俺への当たりが控えめに感じて少し話し掛けやすい気がする。
「今日は何も……」
そんな俺たちの会話に、背後から元気な声が割り込んでくる。
「鷹村ぁ!!これから暇!?」
「楓!?うおっ!?」
その声の主である楓は後ろから俺の首に腕を絡めてグッと引っ張ってくっついてくる。
……楓ちょっと!?おおおおっ、おっぱいが!おっぱい当たってる!!
体育会系のコミュニケーションってこんな感じなの?ちょっと痛いが、相手が長身美女だと顔が緩んでしまう。おっぱい密着は反則だろ…
「いててっ!?楓!?ちょっとこの腕離せって!!」
「鷹村ぁ!今日練習出来ないからカフェとか行こうよぉ!柴乃宮さんも一緒に行こ!ねっ?ねっ?」
「わかった!わかったから、一旦ストップ!!行くから!霞も行くだろ!?」
じわじわと楓の締め付けが強くなってくるとおっぱいも密着感が高まる。
なぜか楓のおっぱいは服の上からでも柔らかいのだ……これ以上は色々マズい!しかも霞の目の前で!
「あら?私なんかが行っていいのかしら?私は構わないけど……」
明らかに言葉に棘がある……チラッと霞の顔をみるとやはり俺を睨んでいた。
楓よ頼む。空気を読んでくれ……
「決まり!じゃあ早速レッツゴー!」
まあ空気なんてお構いなしの楓は、そう言ってようやく俺から離れた。
その流れで俺たち3人は教室を出ると、運悪く廊下の向こうから嫌な声が近づいてくる…
「柴乃宮さ〜ん!ちょっと!相談があるんだけど〜!?」
はぁ、また丸山か………
俺は言葉にできない苛立ちを込めて頭を抱え、その場から離れようと背を向けた。
その隣で霞が大きく息を吐いた音が耳に残る。彼女もまた同じように頭を抱えていた。
「はぁ……最悪………恭介、楓、すぐに追いつくから先に行ってて……」
そう言って身を翻す霞を俺は「気をつけてな」と一言添えて送り出した。
「じゃあ楓、先行って……って!?楓!?」
何気なく楓の方を見た俺は思わず焦った。彼女はまるで警戒心むき出しの動物のように鋭い視線を丸山に向けたり、「ベーッ」と舌を出して挑発していたから…
「ダメダメ!そういうの良くないぞ!?落ち着いて!ほらカフェ行くぞ!!」
「だって!…………むぅぅぅ………」
頬を膨らませてあからさまに悔しそうにする楓。
気持ちはわかるが、ああいうヤツはいつか報いを受ける。だからそれまでは傍観すべきだ。変に刺激する方が危ない。
俺はそんな楓の背中を押してどうにかカフェに引っ張っていくのだった——
————
学校から徒歩数分の所にあるカフェ。俺と楓はそこの注文の列に並んでいた。
先ほどから彼女もご機嫌斜めな様子で少し困る。丸山、恨むぞ。
そもそも俺は女子との会話も殆どせずにこの高校生活を送って来たわけで、ご機嫌を取るなんて事はやった事はあるわけもない。だからズルい作戦に出た。
レジ前まで来ると店員さんが笑顔で対応してくれる。
「ふたり一緒で。俺はカフェラテホットを、楓はどうする?」
「ああっ、えっとあたしは…………キャラメルラテホットで」
「かしこまりました。ではお会計は……」
俺はまとめて素早く会計を済ませると、楓に「席を取っておいてくれ」と伝えてドリンクを待った。
ほどなくして、ドリンクを受け取ると俺は店内をぐるっと見渡す。
目に飛び込んできたのは4人掛けの席から大きく手を振る楓の姿。
彼女の長身ポニテ美女っぷりは遠くからでも目立つ。
ちょっとした優越感を感じつつ俺は彼女の前に座った。
「席ありがとな、これ楓の分」
「ありがと鷹村!いくらだっけ?」
「ああ大丈夫。今日は俺のおごり………その………」
何か理由つけないと……………そうだ!
「今日の朝、俺の誤解解いてくれたろ?そのお礼」
「えっほんとにいいの!?」
「もちろん!」
「やったぁ♡鷹村からプレゼント貰っちゃった!」
まるで子供のような無邪気な笑顔を向けてくる彼女。八重歯が余計にキュート。
これ見た目とのギャップにやられる男子は多いんじゃないか?
単純な方法だが機嫌も直った彼女を見て俺も少し安心する。
そして何気ない話をしながら霞を待っていると、彼女からこんな言葉がこぼれてきた。
「そういえば……鷹村って柴乃宮さんとどんな関係なの?」
「ああ……」
やっぱそこは気になるよね。どんなって言われても霞を買ったとは言えないな……
「たまたま霞から話し掛けられて、ちょっと仲良くなったって感じ」
「へぇ〜、意外だなぁ」
彼女は飲み物に口をつけながら、不思議そうな表情を浮かべて俺を見ていた。
「どこが意外なんだ?」
「あたし2年生から柴乃宮さんと一緒で仲いいんだけど、自分から男子に話しに行く所なんて見たことないもん」
「えっ?そうなの?」
全然知らなかった、俺が見てた霞のイメージと違う……
驚きを隠せない俺を尻目に彼女は両手で頬を支え、伏し目がちに唇を小さく動かしはじめる。
「それじゃあさ……ちょっと話変わっちゃうけどさ…………」
「ん?どした?」
初めて見るような彼女の表情にほんの少しだけ興味を引かれた俺は、そっと視線を向ける。しかし目が合った瞬間、彼女はバツが悪そうにパッと目を逸らしてしまった。
「その……鷹村ってさ……今彼女って居るの?」
確かに凄い話変わったな……ボッチの俺に彼女が居るわけないだろ?新手の煽りか?
なんて思う卑屈な俺。
「俺ずっとクラスで浮いてたから彼女なんて居るわけないだろ?」
「ほんと?ほんとにいないの?」
そりゃ彼女欲しいよ?出来れば霞を彼女にしたいけれども……
それでも疑ってくる彼女に少々呆れながらももう一度答える。
「ほんとだって、むしろ彼女欲しいくらい……」
俺はつい心の声をこぼしてしまい慌てて言葉を切った。しかし出たものは引っ込まない。楓にまで失言を漏らすユルいお口に腹が立つ、これでキモいって思われたら……
「ほんと!?彼女募集中なの!?マジで!?」
「ぼっ募集中ってそれは言い過ぎだぞ!?」
急に身を乗り出して危うく飲み物をこぼしそうになる彼女。
何が彼女をそうさせるのか知らないがちょっと気まずい。
そう思ったその時、聞き慣れた声が俺の耳に入ってきた。
「お待たせ、恭介、楓……まったく災難だったわ……」
「おお霞、早かったな」
「あっ!柴乃宮さん!」
霞………助かった……
気づけば霞がしれっと俺たちのほうへ歩いてきていた。
絶妙なタイミングで現れた彼女のおかげで一度会話がリセットされたのだ。
マジで感謝。
その後は楓もその話題に触れることはなく、俺は人生はじめての美女ふたりとのハーレムカフェタイムをゆったり堪能したのだった——
次回:変な虫が付かないおまじない♡
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